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総合化学メーカーから証券会社へ、異色の転職に秘められた物語

総合化学メーカーから証券会社へ、異色の転職に秘められた物語

No.1055
  • 現職

    東証一部上場 大手証券会社 成長企業向け 知的財産コンサルタント

  • 前職

    東証一部上場 大手総合化学メーカー 知的財産部→技術研究所

板橋 芳明 氏 41歳 / 男性

学歴:上智大学 理工学部 化学科 卒
上智大学大学院 理工学研究科 応用化学専攻 修了
中国 北京語言大学 北京語速成強化班 卒
TOEIC 750点
中国語検定 HSK6級
特定化学物質 作業主任者
有機溶剤 作業主任者
甲種危険物取扱者

初めに:今回私は、総合化学メーカーの技術職から証券会社の知的財産コンサルタントに転職することができました。
一見すると、異色の転職かもしれません。しかし、そこには一個人のストーリーがあると思っています。この話が、転職を考える皆様の何かの参考になればと思って『転職体験記』を記載します。

私は理工系の大学院を修了後、総合化学メーカーに就職しました。当時は、何かに専念して取り組みたいという思いは特になく、与えて頂いた仕事に精一杯取り組み、色々な知見を幅広く身に付けたいと思っていました。

 新卒で配属されたバルクケミカルプラントの設備技術グループでは、シミュレーションと現場検証から、設備の合理化提案を推進するテーマに取り組みました。そんな中、設備に関する特許出願を通じて、初めて知財に出会いました。
 出願の権利化とは、技術を文章の解釈を通じて権利へと具現化することであると知り、得も言われぬ高揚感を覚えたことを今でも思い出します。読書や作文、語学が好きだったこともあり、日に日に知財の世界に飛び込みたいという思いが強くなり、そんな折、社内の異動制度を利用して入社4年目で知的財産部に異動できました。

 知的財産部では、一からご指導頂き、明細書作成、中間処理、知財啓蒙教育活動、他社権利調査、権利クリアランスなど、知財のイロハを一つずつ身に付けていきました。
知財ライセンス交渉案件や訴訟事件を担当した経験、社内留学制度で中国に派遣頂いた経験を通じて、ワールドワイドな事業戦略に貢献でき、事業全体を踏まえて技術を俯瞰できる知財という仕事(ポジション)に益々魅力を感じるようになりました。専門性を磨くのは、どの分野でも厳しいことではありますが、知財を通じて事業のグローバル化に貢献したいという夢を描くようになっていました。

 ところが一方で、自分には研究開発のスキルが大変不足していることを痛感するようにもなっていました。特許は「明細書に始まり明細書に終わる」ということは折に触れて言われることで、その明細書の根幹を成すのは実施例であり、技術そのものです。特に化学の分野では、実施例がないと話になりません。本気で何かを目指した研究開発に取り組んだことがなかった私にとって、心のどこかに埋めることのできない穴が開いたような気持ちで知財に取り組むようになっていました。
今振り返ってみれば、当時の知財リエゾン活動では、明細書の作成に深く入り込んでいくことができていなかったのだと思います。

 幸いにも、入社14年目にして技術研究所へ異動することができ、研究開発のイロハから学ぶことができました。研究開発テーマを何個か担当する中で、自身の発明を、今度は発明者の立場から明細書作成を行い、出願する経験をしました。また、技術開発の方針をデザインしながら、研究開発を進めていくことも身に付けていきました。
このまま、研究開発のゼネラリストとしての将来を描くこともできたのでしょうが、知財を通じて事業のグローバル化に貢献したいという夢を叶えたい思いは、心の中に眠ったままでした。

(これは余談ですが、知財のような、いわゆる都会に拠点を構える専門職とは違って、研究開発の現場(特に地方の?)は、ある程度の年齢になってくると、真の研究開発には到底専念できず、とがった個性や個別のスキルを有するメンバーのマネジメントをはじめ、研究開発のデザイン(目標設定)、安全管理(安全などコンプライアンスは利益よりも優先される時代)、新旧設備更新検討、QMS(品質マネジメントシステム)、EMS(電子機器の受託製造サービス)、新しい建屋のデザインからレクリエーション活動(運動会や駅伝大会、歩こう会、芋煮会、ボウリング大会、歓送迎会など)、そして当然知財も(契約交渉含む)と、挙げればきりがないほど色々な業務があり、それらに優先順位を付けて仕事を進める必要があります。もちろん専門職は専門職で、その領域の仕事に忙殺されることもあるのですが・・・・・。)

 その眠りから覚めたのが、今回の転職活動でした。求人案件をご紹介頂いた際は、証券会社での知財コンサルタントがどのような仕事をするのか分からず、不安もありました。しかし、エリートネットワークの転職カウンセラー高橋さんのお話を伺いながら、知財の面から中小企業のバリューアップ支援を行う業務は、これまで培ってきた実務経験を活かしながら、新たな経験を積んでいくことができる、これぞ私が挑戦したい仕事だと切に思いました。

研究開発現場で働いて2年半の月日が経過し、研究開発からの視点も身に付けた今、改めて知財に本気で取り組みたいという思いが沸いてきたのです。
 その後、計4回の面接を通じて、面接官の方々の熱意を強く感じながら、転職の意思を固めつつ、無事に内定を頂くことができました。

一見すると、総合化学メーカーから証券会社への転職は異色の転職かもしれません。しかし、私の中では、一貫性のある人生のストーリーの一部なのです。これからのストーリーの続きを、新しい世界でどのように描いていけるか、楽しみな気持ちで一杯です。

最後に:私は、この転職活動を通じて、退職を受理されることは、内定を頂くのと同様に難しいことだと悟りました。転職を考える読者の皆様も、それぞれがストーリーの主人公であり、一度きりの人生を真剣に生きておられると思います。そして、多かれ少なかれ、今の皆様の職場には、皆様のことを考えてくれる、それぞれストーリーを持った人達、仲間達が居るはずです。もちろん、各個人のベクトルは様々ですし、転職はご自身の自由であって、誰にも止める権利はありません。ただ、転職活動が成功した暁には、それまでお世話になり、育ててくれた人達への感謝を胸に刻んで生きていかなくてはいけないと思います。

結局は個人の生き方になってくると思いますが、自身の正直な気持ち(感謝や期待、後悔)を整理しながら、誰にどこまで、どうやって伝えるかなど、色々悩みながら生きて、人生を深め、皆様のストーリーを紡いで欲しいということを、最後のメッセージとさせて頂きます。

以上

この転職者を担当したカウンセラーに
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