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女性弁護士、特許法律事務所の知財から、一部上場企業のインハウスへ

女性弁護士、特許法律事務所の知財から、一部上場企業のインハウスへ

No.1334
  • 現職

    東証プライム上場 運輸・物流会社 ホールディングスの法務部 社内弁護士 (インハウス)

  • 前職

    日本の信託銀行 年金数理部門 総合職
    特許法律事務所 商標・知的財産・工業所有権部門 弁護士兼弁理士業務(警告、交渉、無効審判、訴訟 等)

岩田 妙子 氏 42歳 / 女性

学歴:湘南白百合学園高等学校 卒
上智大学 法学部 法律学科 卒
早稲田大学大学院 法務研究科 修了(法務博士)
弁護士(第66期司法修習)
弁理士
TOEIC 840点

① 新卒での “就活” 時の志向、会社訪問等

学生時代、国際関係法を学びたいという目的で法学部を目指したこともあり、法曹に特段の興味はなく、なんとなく周りに合わせて就職活動をしました。当時は就職氷河期真っ只中の世代(2002年卒)であり、就職活動は苦労しました。
当時流行りのIT業界を受けたり、卒業生からの連絡を受けて生命保険会社のOGと面談をしたりしながら、いくつか選考に進んだなかで信託銀行に入社することを決めました。信託銀行の業務に興味があるというよりは、とりあえず堅そうな業界で順当な仕事に就けたので良しとする、という感じで、なんとなく社会人になったような形です。

② 入社した銀行での担当業務や実務経験、体得したスキル

たくさんの数字を眺めてミスがないかチェックしたり数字の妥当性を判断したりする仕事は、集中力・注意力を要する仕事であり、几帳面な自分の性格には向いていたと思いますが、如何せん、「この仕事をしたい」という強い思い入れがないため、入社して3年も経つと自分の将来が全く見えないことに焦りを抱き始めました。
また、社内の上司や先輩の生き様を冷静に眺めてみると、男女でその違いが如実であり、女性として管理職に就きバリバリ仕事をするキャリアパスは絵空事のように思えてきました。

ちょうど法科大学院制度が発足した頃でしたので、両親の後押しもあり、銀行を辞めてロースクールに進学を決めました。一つ年下の後輩からは「なぜ敢えて茨の道を選ぶの?」と聞かれましたが、このままこの会社に居続けること自体が自分にとって茨の道になる予感がしたからです(大げさですが……)。なお、信託銀行時代にお世話になった一回り年上の先輩がいるのですが、その人は私の決断を我が事のように喜び応援してくれ、「切り開く者にのみ輝く未来は訪れる。あなたの骨は私が拾います」という言葉をくれました。

③ 弁護士取得の為の苦しい勉強期間

ロースクール時代は苦しい思い出ばかりであまり思い返したくないです。自分以外の周囲の学生が全て優秀に見えてしまい、何度も自信を失いかけました。3年生になると勉強ばかりの日々で全身の筋肉が落ち、体調不良で起き上がれず授業にも出られないこともあり、司法試験が近づくなか不安が高まっていきました。案の定一回目は不合格で、人生で初めて目の前が真っ暗になりましたが、どんなに苦しくても当たり前のように太陽は昇ってきて次の日はやってくるのだと思い知らされました。

次の日から再び勉強を開始しましたが、まだコツがつかめないまま二回目も不合格。不合格の友人同士その日のうちに集合してその翌日から答練を開始しました。後がないのでがむしゃらに勉強し、三回目の受験時には手応えというか突き抜けた感じがあり、試験当日も時間が余るほど余裕がありました。とはいえ、合格を確認し親に報告したときには涙ぐんでしまいました。

④ ノキ弁時代と特許法律事務所で

三回目合格、社会人とはいえ直接的には法曹に活かせない分野の実務経験があるのみ、年齢も微妙(さらには女性)という条件が重なり、司法修習中も就活には苦労しました。私は様々なツテを頼りに、なりふり構わず色々な知人へコンタクトすることとしました。カトリック系中高時代の授業で触れた「門を叩きなさい。そうすれば開かれる」という聖書の一句が頭にあり、門を叩いてみなければ開かれることもないのだと思ったのです。修習も終わりに近づき、ダメ元で地元の知り合いの弁護士に連絡しノキ弁という形でよいので机を置かせてもらえないかとお願いしたところ、意外にあっさりと「いいですよ、一緒に働きましょう」という返事をもらうことができ、その二週間後からその事務所で弁護士としてのキャリアを始めることになりました。

当初はノキ弁でという話でしたが、ご厚意により給与もいただくことができ、また地元の他士業の方のツテで案件を獲得したりと、次第に順調に仕事が舞い込んでくるようになりました。そんな折、司法修習中の就活時に面談させてもらった別の特許法律事務所から欠員が出たとの連絡があり、当時の勤務先のボスに率直にその旨を告げたところ「ぜひ行ったほうがよい。あなたにとって必ずプラスの経験になる」と背中を押され、現職場に転職する流れになった形です。ここでも、司法修習中に「門を叩」いていなければ開かれることはなかったなと思いました。

⑤ 今回転職に踏み切った理由

今回転職するに至った理由は色々ありますが、最も大きな理由はワークライフバランス面です。平日の昼間は打ち合わせと電話対応に追われ、ゆっくり起案できるのは夜遅くか土日という毎日は、如実に体力と精神が削られていきます。仕事がある程度できるようになってくると期待されるのは嬉しい反面、休みが全くとれないことに不満が募っていきました。しかし、忙しいのが当たり前、忙しいのが勲章だというような風土が事務所内にあるため、現職場に勤めながら働き方を緩やかにするという選択肢は皆無と考え、転職するしかないと考えました。

その他には、上司と私とのペアで仕事をすることがほとんどのため、上司の私への依存度が高く、私の一挙一動がコントロールされ息の詰まりそうな状況に陥っており、上司が近づいてくると動悸がし、朝起きても「会社に行きたくない」とすら思うほどに思い詰めてしまっている自分に気付き、このままでは自分が壊れてしまうと思ったことも理由の一つです。

⑥ 転職に際しこだわった点、こだわりを捨てた点

上記のとおりワークライフバランス面で転職を決断したため、年収が現在より多少下がったとしてもリラックスして休日を過ごせる日々を優先したいと考え、もともと転職先は企業の法務部を想定していました。また、エリートネットワーク様を紹介してくれた友人(法律事務所勤務からインハウスへ転職)がインハウスとして充実したキャリアを築いていることも後押しになりました。業務面からも、現職の専門性の高い限られた法分野のみでなく、幅広い法務分野を経験したいと思い、企業法務プロパーで転職できればと考えました。

こだわった点は、「自分のやりたいこと」ができるかどうかという点です。上記のとおり私は企業法務プロパーでの採用を望んでいましたので、その点はかなりこだわりました。(エリートネットワーク様からは「自分の強みとして知財分野も積極的にアピールしたほうがよいのでは?」というアドバイスもいただきましたが)前職と同じ分野しか扱わない知財・特許部門には後ろ向きでした。他方、業種については、自分で選ぼうとするとどうしても偏りが出てしまうと思いましたのでこだわらず、エリートネットワーク様からのご推薦に委ねる形で偏見を持たずトライしようと決めました。

⑦ 転職活動を通して学んだ点、気づいた事

気付いた点としては、時節柄、最初の面談はウェブ会議で行う会社が多かったですが、ウェブ会議が繋がった瞬間に「あ、この会社いいな」と思った会社は間違いなく二次面接に進んだことが印象に残っています。よく、「面接官は面接室に入った時点で9割方合否を決めている」というような話を聞いたりしますが、ウェブ会議であっても、また逆の立場であっても同様のことが言えると思いました。そのような面接では自然と会話も弾み笑顔も多くなり、「早くこの方たちと一緒に仕事をしたい」という気持ちで面接を終えるような形になりました。

年齢面、弁護士としてのキャリア年数については、ぎりぎり丁度良かったのではないかと思います。もう少しキャリアを積んでからの転職ですと、より高いポジションしか選択肢がなく、厳しい状況での転職にならざるをえないように感じました。なお、企業の法務部には自分が思っていたよりも数多くの女性の弁護士が勤務しており(半数以上)、法律事務所の男女構成比と全く異なるのも印象的でした。

⑧ 転職活動を振り返って

転職活動は本当に大変なことです。仕事から帰宅し眠い目をこすりながら適性試験を受け、面接の事前準備をし、面接の出来が悪ければ落ち込み、出来が良いと思ったのに次に進めなければ更に落ち込み、落ち込みつつも次の面接の日程を調整し、次の事前準備をしなければなりません。しかし、ある程度の数の面接を経たことにより、内定をいただけた先とそうでない先とは何が違ったのかを考察することができ、最終的に自分の下した決断が納得のいくものになったのだと自分なりに思います。
大変ではありましたが、日程調整等は秘書の方にお任せできますし、悩みや迷いがあれば松井様の親身なアドバイスや励ましの言葉をいただき、明るい気持ちで次の面接に臨めることができました。本当に感謝しかありません。

⑨ 次の職場に賭ける意気込み

転職先での意気込みとしては、自分で決意し自分でつかんだ「自分のやりたいこと」の企業での法務職を全うしようと思っています(現職場は急な欠員の穴に転がり込む形での転職であったこともあり、チャンスを活かすことはできたものの果たして本当に「自分のやりたいこと」であったか?と言われると疑問が残ります)。
また、一企業に勤めるとはいえ、弁護士として自分自身が社会に貢献できることは何か?を常に自問し、社会を少しでも良くしていきたいと考えています。

以 上

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