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40歳、元総合商社マン、七転び八起きの転職活動

40歳、元総合商社マン、七転び八起きの転職活動

No.513
  • 現職

    外資系 リスクマネジメントコンサルティング会社 コンサルタント

  • 前職

    一部上場 財閥系 総合商社 交通電子工業部門 海外営業担当
    外資系 投資ファンド会社 執行役員・投資部門 副本部長

杉山 宗和 氏 40歳 / 男性

学歴:筑波大学 第三学群 国際関係学類 卒
英語堪能、スペイン語・中国語ビジネスレベル

振り返れば2010年12月24日。クリスマスイブの夜に一人で銀座4丁目を歩くのは初めてだ。例年だとセレブっぽい人や恋人達が多いけれど、今年の銀座の街は人も少なく感じる。クリスマスネオンもどこか寂しげで、何か静けさの様なものも感じる銀座だ。

そんな銀座を、私は銀座風月堂ビルにある、「株式会社エリートネットワーク」に向かって歩いていた。風月堂ビルは銀座4丁目の角を京橋方面に左に曲がり、アンパンの木村屋を通り越して、150Mぐらい行ったところにある。
風月堂ビルに着き、エレベーターに乗って9階へ。エレベーターのドアが開くと目の前にはモダンな感じにデザインされた、ちょっと狭い廊下が出現。廊下の受付台にある電話を取り、受付スタッフに到着したことを告げた。間もなく女性スタッフに案内され一番奥の会議室に通された。会議室は明るく清潔だが、狭いし窓もないのでちょっと息苦しい。 「こちらで少しお待ち下さい。すぐに高橋が参ります」
笑顔が素敵な、感じの良いスタッフにちょっと安心感を覚えた。10分ほど待つと、転職カウンセラーの高橋さんが現れた。
「はじめまして。高橋と申します」
髪型はどちらかというとバブルの時に良く見た様な感じで、スーツ姿がよく似合う人だ。年の頃は40代中盤から後半か。声が大きくてはきはきしたしゃべり方。ちょっと軽そうな感じがする。よく見ると顔は結構かっこいい。身長は172cmぐらい。体鍛えてそう、メタボじゃない、という第一印象。

転職活動を開始してから3カ月が経とうとしていた。3年間勤めた投資ファンド会社が閉めることになり、転職活動を開始した。活動開始から3ヶ月間、色々なAgentに登録し、既に数社の面接を受けていた。しかし結果は連戦連敗続き。しかも、どれも皆最終面接で必ずダメになるパターンであった。
「なぜ最終面接でダメのかな。何が足りないのかなあ。。。。。?」
正直理由が分からなかった。生まれてこの方、試験に落ちても面接で落とされるという事が無く、面接には絶対の自信を持っていただけに、最終面接での失敗はかなりショックで、想像以上に傷付いた。面接の失敗は精神的にかなり落ち込む。そんな、ちょっと精神的にやつれ、気持ち的にヤケクソ気味になっていた時に、ネットで見つけたのが (株)エリートネットワークだった。同社に登録したらすぐに高橋さんから電話があり、成り行きでクリスマスイブに会うことになったという訳だ。

まずは高橋さんに自己紹介をした。他のAgentと明らかに空気が違う。
「なんだ?」
と思った。私が喋っている間、高橋さんはまるで獲物を狙っているかの様な鋭い目つきでじっと私を睨みつけていたのだ。
「俺、なんか変なこと言ってるのかな。。。。。」
ちょっと冷や汗をかきながら自己紹介を一通り終えると、高橋さんが静かな口調だけど、かなり大きな声で語り始めた。
「杉山さん、あなた態度が悪いですね。その様な話し方では誰も杉山さんを雇いませんよ」
「うっ、えッ!?」
顔が一気にひきつった。高橋さんはたたみかけるように言った。
「杉山さん、話す時に体を大きく揺らしてますよね。それから時々足踏みして話してますよ。気付いてましたか?」
「えっ、そんなことしてたのか?」
無性に自分が恥ずかしくなった。興奮して自分が見えてなかったのか。
「杉山さんの話し方や態度は元商社マンに非常に有りがちなんですよね。私は長く総合商社の担当をしていますので、商社の方は大好きですし、個人的には元気があっていいなと思うんですが。でも、残念ながら商社の常識は他社では通用しないことも多いんですよ。そこ、判ってますか?」

きれいに一本背負いされ、息の根を止められた。同時に、これまでの3ヶ月間、なぜ連戦連敗続きであったのか、一瞬で理解出来た気がした。私は基本動作を怠っていた。自分を客観的に見つめることを忘れていた。物事の本質を見ていなかった。そして何より謙虚な心を失っていた。その結果、面接とは自己主張である前に人とのコミュニケーションである、自分の今までの経験を語る前に、人間としてどうなのかを見る、という当たり前の、そして一番大事な要素が完全に欠けていた。高橋さんは私に会って30分足らずでそれを見抜き、鋭く指摘したのだ。

その後、話しは約3時間ぐらい続いた。高橋さんの一撃必殺攻撃の後、私は抜け殻状態になっていたので、それを知ってか知らずか後半はほとんど高橋さんのトークライブショー状態であった。日本の経済の話しとか、高橋さんの (株) リクルート時代の話しとか。高橋さんは話しが大好きで、正直言ってちょっと長い。でも、面白いからよしとしよう。
肝心なその日の結論だが、来年から総当たり戦で可能性のある企業は全てにアタックをかけるという作戦となった。40歳からの転職活動はチャンスもポジションも若い人よりも断然少なくなる。だから、とにかく贅沢言わずにまずは書類が通った会社は全て面接を受けるという、同時爆撃、総力戦スタイルで臨む。決まるまで6カ月は覚悟する、というものだった。その戦略に納得した。

最後に高橋さんからもう一つ重要な忠告があった。来年は本厄なので、厄除けのお参りに行ったほうがよい、しかも出来ることなら三大厄除大師が良いのではないか、というものだった。私は用賀に住んでいるので、それなら川崎大師がいい!しかも行くのは正月休み中で、朝の5時から始まるその日初回のご祈祷、その位気合いを入れてお参りに行かなきゃダメだ!と。川崎大師に着いたら正門から入り、正門を入る前は一礼する等々、とにかく詳細に教えてくれた。私も結構信心深い方なので、妙に納得した。正月休み中に必ず川崎大師にお参りに行くと心に誓い、高橋さんにも宣言し、その日の面談を終えた。面談を終えて外に出るともう既にクリスマスイブは終盤を迎えていた。
「そう言えば、今日はクリスマスイブだったっけ・・・」
気持は既に来年を向いて走り出していた。

明けて2011年1月。高橋さんの教え通り、1月4日朝一番の祈祷を受けるため、朝4時に起床し川崎大師へと向かった。1月初旬寒さが体に突き刺さる。川崎大師に到着。高橋さんの教え通り正門の前で一礼し、朝一番のご祈祷を受けるべく受付をした。祈祷中はお坊さんがやたらと商売臭くて本当に意味が有るのか?などと罰あたりな疑問を持ってしまったが、とにかく絶対意味があることだと信じて、有り難く厄除けをして頂いた。

そして総力戦が始まった。高橋さんより、40歳以上の転職市況はかなり厳しく6カ月以上かかることも覚悟するようにと言われていたのでその覚悟でいたが、すぐに面接したいという企業が3社現れた。さすが、高橋さん。口ほどのことはある。 総力戦で戦う事を決めていたので、あまり細かいことは考えず、まずは面接して頂けるのだから3社共全て会うことになった。
まずは1次面接。3社共全て好感触で、2次面接に進む。そして2次面接。これまた好感触で3次面接に進む。3社共3次面接が最終面接。ここまでは去年も出来た。ここからだ、気を抜いてはいけない、と気を引き締めて最終面接に臨んだ。3社の内、2社がほぼ内定した。もう1社はタイミングが合わず、保留となった。

去年までの結果とはまるで違う、一体今までの私がどれだけひどかったのかと思うほど、すんなりと内定してしまった。やはり、己を知ること、反省すること、改善することが如何に大切なことか。しかし、こうなると今度は別の悩みが出来てしまう。どちらの企業を選んで良いか分からなくなってしまった。名前はA社並びにB社としておこう。両社共に私の経験を高く評価してもらっている。違いは、A社は日本の一部上場企業、B社は米国外資系でその業界では世界でもトップの企業、しかし日本では全く知名度無し。業務、ポジション、どちらをとっても甲乙つけ難い状況だ。時間は迫る。気持は焦る。企業側も返事はいつまでにもらえるのかとプレッシャーをかけてくる。この状況は内定をもらっていない人から見れば、全く贅沢な悩みだと思われるのだろう。その通りである。しかし、本当に訳が分からなくなる。頭の整理をつけるんだけど、また同じ質問を繰り返してしまう。しまいには、人の意見に頼るようになってしまう。これがまたいけない。3月1日の入社にすると決めていたので、どんなに遅くても2月中旬までに決めなければいけなかった。ぎりぎりまで悩んだ挙げ句、日本企業のA社を選んだ。

入社おめでとう! めでたし、めでたし! ありがとう高橋さん、ありがとう(株)エリートネットワーク、と普通ならなるところだが、私の場合は違う。高橋さんにも入社祝いの昼食を御馳走になり、3月1日にA社の海外戦略部の部長代理として着任したというのに・・・・・

その後、7月末に退職届を提出した。なんで!?と思うでしょう。なんか、私が人間的に問題があるんじゃないか?とか精神病じゃないか?とか思うでしょう。はい、それも無理ないことです。実際、私も自分でそうじゃないかと思い真剣に悩みました。しかし、結果としてそうなってしまったのです。理由はここでは詳しく説明しません (興味のある方は高橋さんに聞いて下さい)。ただ、言えることは、転職って本当に難しいということです。実際働いてみないと分からない事がたくさん!どんなに入る前に悩んでも、それはあまり意味がないというか。仕事ってやってみなきゃ本当に分からない。調査不足?そう言われればそうかもしれません。でも、事前の調査にも限界があるのも事実です。

じゃあ、また転職活動しないと。どうしようか。躊躇なく高橋さんに相談した。
「杉山さん、ちょっと冷静に話しましょうよ。一度銀座に来て下さい。」
高橋さんから言われ、その日の内に銀座の会議室に飛び込んだ。私もとにかく気が動転していたというか、冷静になれなかった。そりゃそうだ。色々あって、色々な人にお世話にもなって、せっかく入社した会社なのにすぐに辞めたいと思うなんて想像の範囲外だ。冷静でいられるはずもない。高橋さんと話して、じゃあ、とにかくもう一回転職活動を始めようという事になった。高橋さんにとっても稀なケースなので、どうなるかよく分からないが、とにかくやってみようと言ってくれた。高橋さん、ありがとう! 本当にすみません。。。。。
「杉山さんは本当に人騒がせな人ですねえ・・・」
高橋さんの苦笑い、そして疲れた顔、でも私を放棄しませんという顔、一生忘れません。有り難う御座います、高橋さん・・・・・

そして、転職活動の第二ラウンドが開始した。

普通に考えれば6ヶ月で辞める人間など企業側が信用するはずもない。私のキャリアにとっても非常に大きな汚点になることだろう。そんな事は百も承知。しかし、自分の納得いかない仕事を、履歴書を守るために数年間続けるなど出来ない。仮に3年我慢して43歳。その歳になってどんな仕事があるのか?
まあいい。もう辞めると決めたのだから、次の戦略を考えることにした。
高橋さんと相談して戦略を立てた。まずは、内定をもらっていたB社及びタイミングが合わずに保留となっていたもう一社 (C社とする) にだめでもともと、再度当ってみることにした。高橋さんも、あまり気が進まない感じではあったが、とにかく壁に激突してみましょう、と言ってくれた。本当に図々しい話だが、勇気もいる。条件交渉的にも不利であろう。しかし、短期に転職するためにはこの手しかなかった。これから新しく企業を探してもそんな簡単に面接させてくれるはずがない。だから、ここはひとつ面の皮を厚くして立ち向かうしかなかった。私だけでなく、高橋さんにも面の皮を普段より3枚くらい厚くして頂いた。

まずはタイミングの合わなかったC社。これは某日系総合商社である。もともと、経験とニーズが合っていたし、前回面接の際も好印象ではあったし、高橋さんがC社に訪問した際にも話は聞いてくれた。
「う〜ん、ではとりあえず、なぜ現在の会社を辞める決心に至ったのか、簡単に報告書を書いてもらえませんか。その上で検討します」
予想できる回答だった。でも完全にノーではない。早速、報告書を書いて提出した。
そしてB社 (外資系)。B社はC社と違って既に内定をもらっていたので、ちょっと状況が違う。一度内定をもらっているという点でC社より有利な面もあるが、逆に今更なんと言って面接して欲しいとお願いするのか、不利な面もある。でも、そこは高橋さん、流石に百戦錬磨。あの手この手の説明で、どうにか面接するところまで漕ぎ着けてくれた。すごい。

C社は社内で検討結果、やはりこの様に短期で辞めた人物を雇用するのは無理との返答だった。能力的な問題とか素養の問題とかではなく、企業のポリシーとして出来ないという回答だった。まあ、当然の結果である。そう言われるのが日本では普通、常識の範囲内。極めてまともな会社であると思った。そしてC社とは縁が無かったと思った。

そしてB社。前回面接にて会った社長及び取締役と改めて面接して頂けることになった。
「いや。。。。。さすがにどんな顔をすれば良いのやら。もう開き直るしかないな、こりゃ」
商社マン時代に鍛えた土壇場での開き直り。こういう時には本当に役に立つ。面接ではとにかく堂々と謝罪した。前回はどうもすみませんでした、と。でも、やっぱり色々と考え直して御社に是非入りたい、と。もう、とにかく必死で弁明した。開き直って。面接が始まって30分後ぐらいに、相手側も前向きに話を進めましょうと言ってくれた。
「奇跡だな、こりゃ。。。」
そう思った。そう、これが縁と言うものか。正直言って自分が相手の立場ならネガティブな見方をしてもおかしくはない。これには色々な要因があるのだろう。まず、既に内定をもらっていたこと、また外資系の会社であること、私の頑張り。。。。。でも、やっぱり一番の勝因は高橋さんのお力、そしてその高橋さんを100%信頼した私とのチームワークであろう。私はB社に転職することを決めた。

「杉山さん、良かったですね。でも、前にも言ったとおり外資系の会社は、日本の会社と違って恐らくまた転職することになります。その時は言って下さい。私が責任を持って杉山さんの面倒を見ます。」

(やれやれ、やっと決まったか。後始末が大変だな)という高橋さんの声が聞こえてきたような気がしたが、でも本気で最後まで面倒を見てくれると言ってくれた。エージェントとの出会いも縁だと思う。高橋さんと会わなければ自分は全く軌道修正が出来ないまま、未だに転職活動していたかもしれない。しかし、転職をしたからと言って必ずしも満足するとも限らない。どんなに考えて選んでも、どうしてもズレが出てくることもある。私のケースは極端だとは思うが、そういうことは誰にでもあると思う。
転職で大事なことは、まずは自分で考えることだ。転職をするのは自分だ。最後は自分が選ぶしかない。エージェントは飽くまでその手助けをしてくれる存在だ。しかし、その「手助け」にも色々あるということを私の体験記から少しでもイメージして頂ければいいなと思う。

私は今後も (株)エリートネットワークの転職カウンセラーの高橋さんに転職の手助けをお願いしたい。
(高橋さんが嫌気が差してなければだが。。。。。そう願う。 お願いします!高橋さん!)

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