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実質未就労の大学院卒、メーカーの海外営業職に。

実質未就労の大学院卒、メーカーの海外営業職に。

No.718
  • 現職

    食品包装パッケージメーカー   海外営業職

  • 前職

    教育関連のNPO法人   職員

秋田 智 氏 27歳 / 男性

学歴:千葉大学 教育学部 小学校教員養成課程 異文化コミュニケーション選修 卒
千葉大学大学院 教育学研究科 教科教育科学専攻 修了
TOEIC 900点

「なるほど。そういうご経歴なのですね〜。色んなご経験をされていますねぇ〜。」

企業の面接官は、一見口当たりの良い言葉で、応募者である私をお客様のように扱ってくれます。にこにこしながら話を熱心に聞いて下さるので、合格したかと思い気を良くして結果を待っていると 「今回はお見送りとなりました」 という連絡が転職エージェントからやってくる。就職活動を始めた当初は、そんなことの連続でした。

勢い良く会社を飛び出すことを決意したのはよいものの、このままでは仕事が決まらないかもしれない……。就職活動を開始し、数社の面接を終えた時点で、私は焦燥感を抱き始めていました。

でこぼこの経歴

もともと、私は説明するのも困難な複雑な経歴で、いわゆる一般的な会社での勤務経験がありませんでした。大学を5年かけて卒業し、その後就職する予定でいたのですが、アカデミックな世界への憧れを持ち大学5年時に大学院を受験しています。しかし、その試験で不合格となり一年間大学時代にアルバイトをしていたNPO法人で雇ってもらい、一年後大学院に入学しています。

大学院に入学して勉強に明け暮れるはずだったのですが、大学院入学後は、選挙活動に没頭し始めます。いわゆる、将来の政治家の秘書にあたる仕事をしていました。その活動を続け、衆議院選挙本番まで秘書をしていました。

選挙には結果的に落選してしまうのですが、選挙活動終了後、候補者の方が新しく会社を作ったのでそこで働き始めました。最初は順調にいっていたのですが、会社が継続的に利益をあげる体制もできていない状態が続き、徐々にこの会社にいて良いのか? という疑問が沸き上がってくるようになりました。できたばかりの会社です。誰よりも自分自身が頑張らなければならない状況でした。ですが、明るい見通しは見えてこない。次第に心が折れ始めていきました。

「逃げてるんじゃないか?」
「もっと頑張ってから考えたほうがいいんじゃないか?」

そう考える自分がいる一方で、もう一方の自分はこうも声をかけてきます。

「もう27歳。転職活動して新しい生活をスタートするなら、今じゃないのか?」
「このままで人並みの生活が送れるようになるのか? 転職活動すべきではないのか?」

もう一つ悩みの種は大学院でした。大学院入学当初は博士課程まで行き、研究者になれたらと考えておりました。しかし、実際に私は研究よりも働くばかりの生活を送っており、その夢も現実的ではなくなっておりました。学生生活がメインになると収入が不安定になりますし、逆に収入を増やそうと思えば研究の時間はとれなくなります。特段才能のない私には、どちらも両立させるのはとても不可能に思えました。

結局、私は転職活動をすることを選択しました。一年ちょっとで退職することになるのですから、志半ばもいいところです。仕事を続けられない自分に対する恥ずかしさと、無職になることの怖さがこみ上げてきました。

また、大学院を卒業したのは仕事を辞めたタイミングと同じです。いくら大学院時代に仕事をしていたとはいえ、企業側からすれば新卒のようにも見えます。言ってみれば、めちゃくちゃな経歴です。興味の赴くままに色々と手を伸ばし、気づけば27歳になっていた感じでした。しかし、当初の私はそれでもなんとかなると思い、気軽な気持ちで転職活動を始めました。

(株)エリートネットワークさんとの出会い

しかし、冒頭の通り、転職活動はうまくいきません。最も困ったのは経歴の説明でした。大学卒業後から経歴を説明するものの、うまく理解して頂けないことがほとんどでした。説明をすれば一定の理解は示して頂けますし、熱心に話も聞いて頂けます。しかし、結果は芳しくありません。普通預金残高を眺め、底知れぬ不安を感じながら、どうしたら突破口が開けるのかを考え続けていました。

そんな時、一つの光明が見えてきました。とある企業で人事担当をしていた先輩に転職活動のことについて相談したところ、「僕にできるのは、良い転職エージェントを紹介してあげることくらいかな」 と言って、人材紹介会社を紹介してくれたのです。それが、(株)エリートネットワークの転職カウンセラーの高橋さんでした。信頼できる先輩の紹介なら安心だと思い、意気揚々と銀座の(株)エリートネットワークのオフィスに出向きました。

オフィスに出向くと現れたのは、かなり経験の長そうな、私よりずっと年上の男性 (高橋さん) でした。手元にあれば前職の名刺を持って来るようにと言われたので持っていくと、前の会社のことについて色々と質問して下さいました。第一印象は 「柔らかい方」 だとお見受けしました。私よりもずっと経験が豊富なこの方だったので、安心して転職相談ができるなと感じていました。

ところが、私が前職の経験について説明をしていると、それまで優しく笑顔だった高橋さんの顔が急変してきました。私は前職での業務内容を 「IT戦略コンサルティング」 と表記していたのですが、本当にそんな高度なことをやってきたのかと問うて来るのです。

「確かにちょっと大げさに書き過ぎたかな……??」

そう思ったのも束の間、畳み掛けられるように質問を浴びせられます。私はしどろもどろになって為す術もなくなっていきました。高橋さんは私とは初対面であるにも拘わらず、“前職はこんな状況だったのではないか” ということを、的確に指摘してきます。私は高橋様の質問に答えながら、気が付くとぼろぼろと涙を流していました。

まさか27歳になり、人前で泣くことがあるとは思ってもいませんでした。ですが、高橋様の柔和ながらも鋭い目を見て話をしていると、自分が丸裸にされているような感覚に陥りました。転職への不安、自身の経歴への自信のなさ、活き活きと働いている周囲の友人たちへの羨望、自分自身の判断力の欠如・甘え、これらが全て見透かされているようでした。悔しさとも何とも言えない感情が湧き上がり、堪え切れなくなったのだと思います。しばらく高橋さんを前にして泣き続けました。

泣き止むと高橋さんは 「すっきりしましたか?」 とお声かけ下さいました。そして、私を企業に売り込む上で、履歴書と職務経歴書を全面的に書き直すよう指示されました。通常、履歴書と職務経歴書は別に用意しますが、私の場合、学歴と職歴で年月が重なっている部分があるのでこれらが別々だと分かりにくい。それを一つにまとめて書こう。これが高橋さんのご提案でした。更に、「綺麗に書こうとしなくてもいい。 嘘偽り一切なく、全てをありのままに書くように」 ともおっしゃいました。

それまで、如何に自分を大きく見せるかを考えていたので、眼から鱗の話です。実は、このことが後に絶大な威力を発揮するのですが、その時はこのアイディアが役に立つのかは、自分では確信が持ててはいませんでした。しかし、これまでは自分を着飾って失敗しているのも事実です。まずは素直にやってみないことには始まらない。そう思い、土日の時間を使ってじっくりと自分を振り返りながら、履歴書 兼 職務経歴書を作成していきました。

脱、(株)エリートネットワーク

完成した職務経歴書を持参し、高橋さんのご紹介下さった会社へ面接に行きましたが、残念ながら不合格となりました。高橋さんから連絡を頂き、「たまたま面接官と波長が会わなかっただけです。がんがんやっていきましょう!」 とのお言葉を頂き、次の連絡を待つこととしました。

ところが、なかなか高橋さんから連絡が来ません。人材紹介会社もビジネスです。企業に売り込むことが難しいと判断した人物を積極的に面倒は見ないだろうと、不安な私は悶々と考えていました。

「がんがんやろうと言いつつ、私は売り物にならないと判断されたのかな……」

誠に勝手にそう思い込み、私は別の人材紹介会社に登録をし、そこで転職活動を進めていきました。3週間ほど経ち、一社から内定を頂きました。ところが、提示された年収は私が希望していた金額とは大きくかけ離れた低い金額でした。エージェントに交渉もしてもらいましたが、金額は変わりません。また、私自身大規模な会社での勤務経験がないのである程度大きな組織での勤務を希望していましたが、数十名の小さな会社でもあり不安もありました。

しかし、このまま転職活動を続けていけば貯金が減っていくだけです。「もっと良い会社があるかもしれない」 と思いつつも、いつまでも 「青い鳥」 を探している訳にもいきません。一刻も早く働きたいとの気持ちもあり、私は内定を頂いた会社へ入社することを決意しました。

内定辞退、(株)エリートネットワークさんで就職活動再開

ところが、内定を頂いた会社への入社を決意した日の夕方、高橋さんからの着信がありました。すごくお世話になったので、内定を頂いたご報告をしなければと思いすぐに折り返しお電話しました。

電話の内容は、転職活動の進め方の摺り合わせでした。転職活動市場が活性化してきたので具体的な進め方についてお電話を下さったようです。私が内定を頂いたことをお伝えすると、私の話をじっくりと聞いた上で、高橋さんは業界事情についてとうとうと話し始めました。奇しくも、内定を頂いていたのは人材系の企業。高橋様が隅々まで熟知されている業界だったのです。

業界事情、転職市場の状況、私自身の転職への姿勢、それらを踏まえ、高橋さんから再度転職活動をしたほうが良いとのご提案を受けました。この問いに対して、私は答えに窮してしまいました。高橋さんの話を聞いて、心が揺らいで来たのです。しかし、内定を頂きその会社への入社も決めている。その時点では決断は保留し、翌日電話をすることにしました。

翌日、私はまだ迷っていました。しかし、高橋さんと電話をしていると、今の状況に自分が満足していないことを実感しました。ただ、転職活動を続ければそれだけ貯金が減っていきます。悩ましい問題でしたが、自分の気持にも嘘はつけません。高橋さんとも相談をし、期間を区切って活動を続けることとしました。内定を辞退し、転職活動が再スタートしました。

再度就職活動をする際、高橋さんはたっぷりと時間をとり、具体的なアドバイスを下さいました。明るく元気にハキハキと面接に臨むこと、面接前の準備を怠らないこと、これからの活動の結果に一喜一憂しないこと。本当に沢山のお言葉を頂戴しました。何より有難かったのは、過去の経験の中で自分にとって為にならない経験は一つもないという言葉でした。回り道しかしていない私は、この言葉にすごく励まされました。不安がっている私が前向きに活動に取り組んでいけるよう、最大限のご配慮を頂きました。

その後、高橋さんからご紹介を受けたのは食品包装パッケージメーカーの海外営業職でした。将来的に海外で仕事をしてみたいと考えていた私はお引き合わせをお願いし、結果、無事に内定を頂き、入社を決めることとなりました。27歳。遅過ぎるスタートですが、ようやく、ビジネスキャリアが始まろうとしています。

最期に

当初、私はこの 『転職体験記』 を私はやや訝しげに眺めていました。転職した人たちが、エージェントに対してこんな長文の記事を書くだろうかと思ったのです。しかし、その私がこうして長々と体験記を書くほどに、転職活動はドラマに溢れたものでした。振り返れば本当に些細なことでも、心が浮いたり沈んだりしていました。しかし、そういう自分を見つめること、再認識すること、向き合うこと。それこそが、この期間に求められていたことなのかなと思います。

それを気付かせてくれたのが、高橋さんでした。私にとっては、エージェントというより人生の先輩というような存在です。時に厳しく、時に温かく、とても暑苦しく転職のサポートをして頂きました。高橋さんとの話では、転職のことだけに留まらず、転職後の仕事への向き合い方、生き方などについても考えさせられました。この御恩は仕事で活躍してお返しするしかないのですが、感謝してもし切れません。本当に、ありがとうございました。

最期に、この文章を読んで転職される一人でも多くの方が、良きエージェント、良き職場に出会えることを心より祈願して、筆を置かせて頂きます。

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