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“地球環境”にこだわり、子育て中の母、波乱の転職。

“地球環境”にこだわり、子育て中の母、波乱の転職。

No.679
  • 現職

    循環型 物流・陸運会社    本社スタッフ

  • 前職

    一般社団法人 国際的な自治体への環境政策推進スタッフ 

伊東 香奈恵 氏 37歳 / 女性

学歴:日本大学 芸術学部 放送学科 卒
南オーストラリア州立 TAFE通翻訳コース 卒
TOEIC 945点
地域カーボンカウンセラー

はじめに

私は今回(株)エリートネットワークさんを通じて3回目の転職を果たし、37才で4社目になりました。

●1社目:某大手自動車メーカーにて、派遣社員で英文事務を担当。派遣期間 (1年) 満了にて退職。
●2社目:外資IT企業で英文事務及び役員秘書を約8年。この間に環境分野に興味を抱くようになり、この分野への転職を決意。
●3社目:非営利の国際環境団体。約4年在籍した後、今回転職を決意。
●4社目:(株)エリートネットワークさんにご紹介頂いた環境配慮型の物流企業の本社スタッフ。

計3回の転職をした訳ですが、年月を経て経歴やスキルはアップしているはずなのに、転職の難易度は逆に高くなりました。特に1回目は、英語力を活かした事務職で社会経験を積みたいという程度で、こだわりのない独身者だったのでオファーは複数あり、すんなり2社目が決まりました。対して、2、3回目の転職では、環境関連もしくは環境配慮型の企業・団体という絶対的なこだわりがあり、できれば正社員という希望、とどめは残業不可の子持ち。勿論、1回目のようにすんなりとはいきませんでした。

2回目の転職

環境に興味を抱き始めた2社目在籍時に、結婚・妊娠・出産を経験。自身のスキルを活かして環境団体のボランティア活動や勉強をするようになりましたが、同居の育児協力者もなく、育児とフルタイムの仕事と環境活動と勉強の4つ掛け持ちは時間的にも体力的にも厳しいものでした。睡眠不足で仕事中にパソコンのキーボードに頭を打ち付けても、結膜炎になっても、私は自分がどんなに辛くても気が付きませんでした。

でも私が夜中に勉強するために布団から抜け出すのを敏感に察知した子どもが、夜中に目を覚ましては暗い部屋の中、私のことを手探りで探すようになったのを見て、私はやっと気が付きました。 “努力” と “無理” を履き違えていました。努力の成果はあっても、無理は何の成果もありません。だったら4つばらばらではなく、仕事と環境活動と勉強を一緒にしてしまおう、と考えました。そうすれば仕事と育児だけになります。

ということで環境関連分野への転職を決意する訳ですが、ある人からは 「いまどき男の人でも好きな仕事に就くなんて難しいのに、女でしかも子持ちじゃ……」 と言われ、またある人からは 「現状、良いポジションで子育てに理解ある会社に勤められているだけでも幸せなのに」 と言われました。確かに2社目は良いポジションで、楽な仕事で、お給料も良くて、子育てに理解のある会社でした。私は恵まれていました。それでも 「楽な仕事」 に違和感を感じていたのと、仕事で何かを成したい、環境に貢献したいという思いは捨てられないからもう転職するしかなかったのです。結果、英語力と事務職経験を活かして、社団法人の国際環境団体に就職することができました。お給料は半減しました。非営利団体なので昇給・昇格もありません。でもボランティア活動や勉強をしていたとはいえ、環境業界では当時私は新人です。勉強させてもらう要素もあるからには、給与半減は元々覚悟の上でした。私の当初の目標は達成できました。

3回目の転職

今回の転職には複合的な理由がありました。きっかけはステップアップしたい気持ちが出てきたことです。志望分野の仕事だったから尚のこと、自分の意思やアイデアも出てきます。職場以外でもさまざまな活動をしているため、そういったものを取り入れて団体の活動に役立てたいと考え、自分のできる範囲内で最大限取り入れました。が、もともと給与半減のアルバイトの延長上のような立場。組織内で自分の立場の限界も感じていました。でもこれはあくまで考えるきっかけで、理由ではありませんでした。そういう状況でも、組織が良い方向に向かっていたり、社会や環境の役に立っている実感があれば、私は今回転職を決意しなかったと思います。

もともと私が環境分野に興味を持ったのも、未来世代のためにより良い環境や社会を残す手伝いがしたい、そうすることでこの世に生を受けた意味を実感したい、自分や周りの人たちを幸せにしたい、と思ったからです。私の立場は限られていても、組織が良い方向に向かっていて、そこに私が属することでサポートすることができればそれで良かったのですが、正直、残念ながらそういう土壌はなく、将来も見えず、職員には閉塞感が漂っていました。会員も職員も協力者も離れていきました。財政状況もどんどん厳しくなっていきました。私にはその悪循環がなるべくしてなっている、いわば当然の流れのように見えていました。時代の流れも理由の一つにあったと思います。

一方、プライベートでは主人と別居して2年が経過しており、そろそろ子どもと2人で生活していく決意を固める時のような気もしていました。「転職」 という選択肢が私の中で日に日に大きくなっていきました。

1回目の転職は派遣期間満了。2回目の転職は志望分野への新たなる挑戦。シンプル且つ明確な動機で聞こえも良いですが、今回は違いました。この複合的な理由を履歴書や面接の場でどうやって説明したものか。私にしてみれば転職への決意はある種自然な流れだったのですが、言葉や理屈で説明しようとすると少なからずネガティブな事由が含まれるため、ほとほと困りました。なるべくポジティブに説明しようと努力はしましたが、(株)エリートネットワークの転職カウンセラーの岩川さんにも、今回内定を頂いた企業さんにもうまく説明できていなかったと思います。正直なんと説明したかもあまりよく覚えていません。

覚えているのは、岩川さんとの最初の電話での会話で、「現状の職場は子育ての理解もあり、希望の職種にも就けている。転職しないほうが良いと思います。」 とアドバイスがあったことです。当然のアドバイスなのですが、もう長い間考えて決めたことだったので、概して非営利団体はいつつぶれてもおかしくないような財政状態であること、対して自分は今後離婚して子どもを扶養する立場になることを追加説明し、納得してもらいました。嘘ではないし、このほうが世間的に納得してもらい易いのは分かっていました。ただ、それは理由の一部でしかない、という思いも残りました。今思うと、ネガティブなことは言うべきではない、という転職の常識に囚われ過ぎていた気がします。

転職の壁

再度、子持ち&残業不可の壁が、立ちはだかりました。それだけで応募できる口は激減、それだけで門前払い、経歴や人物を見てもらえるに至りません。某人材紹介会社からは 「このご時世、子持ちで残業できないのに、人気の環境分野でしかも正社員を希望するなんて、ずうずうしい。現実を判っていない」 という旨のお叱りも受けました。会社の仕事に専念できる男性と私のような兼業お母さんが同じスキルを持っていたら、企業は前者を採るのが現実です。現実を判ってない私は複数の転職サイトに履歴書や希望を登録しました。毎日のように求人情報を閲覧していました。しょっちゅう見かける 「残業あり」 「長期出張あり」 の文字にため息をついていました。たまに見かける 「転職許容回数:2回まで」 という文字に心中悪態をついていました。

でもそれより何より私を悩ませたのは、今回の転職はデータマッチングができない、ということでした。ほんとに今不況なの? と思わせるくらい毎日のように送られてくるデータベース・マッチングによる求人情報はどれもこれも、この職種なら私も力になれるかもしれない? というものばかりでそれ以上でもそれ以下でもありませんでした。ここなら応募したい! という情熱がほとんど湧きませんでした。

人材紹介会社が不特定多数に向けるウェブ上の求人で、企業名を伏せるのはビジネスの視点から当然でしょう。でも私の場合は職種だけでなく、求人元の企業が何を考え、何を目指して、何を行っているか、ということが判らないとどうしても応募の情熱が湧きませんでした。当然ながら、気になった求人に1つ1つ照会依頼する必要があり、照会依頼したところで私が応募できる案件とは限らず、今後もし良い案件があれば、と登録したところでやはり私の条件・志望と求人内容がマッチするチャンスはそう多くないのが現実です。そうなると自身の条件緩和が必要になってくる訳ですが、まずは就業形態。正社員を希望したのはここで働きたい! と心から思える会社に入って長期的に働きたい思いがありました。この点が単純にスキルや経験値のアップを目指した1、2回目の転職と決定的に違うところでした。

私は国際畑を歩んできたので、複数回の転職を好意的に見る価値観を共有してはいますが、今の日本社会がそうではないことも理解しています。そういった社会で転職を繰り返すのは消耗するし、私自身も転職定年と言われる35才を過ぎており、次は腰を落ち着けたい気持ちもありました。そうなると必然的に、一時雇用のイメージがつきまとう派遣社員よりは、正社員志望になります。

次に環境関連もしくは環境配慮型の企業・団体という志望ですが、これも譲ってしまってはそもそも転職する意味がありません。いわば恋愛の片思いにも似た気持ちが湧かないような企業なら、岩川さんのおっしゃるとおり 「転職しないほうが良い」 のです。そして最後の条件 「残業不可」 ですが、私の子どもはもう赤ちゃんではないので私が夕飯を用意しておけば一人で食べて、一人で寝ることはできます。コンビニで夕飯を買うこともできます。でも私自身それをしたいか、というと絶対に嫌でした。私の中で 「子どもと夕飯を一緒に食べること」 は絶対的王者のように君臨しており、これができないならどんなに素敵な企業がどんなに素敵なオファーをくれても、逆にこちらが門前払いするくらいの力を持った王者でした。という訳で 「残業不可」 も譲れない。これらの譲れない条件の中で、親類が都内に住んでいるため、繁忙期のみの残業や短期出張は可能であることのアピールは忘れませんでした。年数相応の報酬を求めることもしませんでした。半減した非営利団体での収入を下回ることがなければ生活は維持できる、という気持ちでいました。

(株)エリートネットワークさんとの出会い

(株)エリートネットワークさんに登録したのは、たまたま見かけた良さそうな求人案件の掲載元に問い合わせた事がきっかけでした。ただその時は毎日の閲覧に疲れ果てており、正直あまり期待もしておらず、転職活動による有休が重なっていたので、できれば電話面接でお願いしたい旨も伝えました。電話面接の後、3社の求人案件をご紹介頂きました。3社とも正に私が片思いできる会社・団体でした。これが他の人材紹介会社とは決定的に違ったところです。他社さんでは案件をご紹介頂いても、私のスキルや経験が企業さんの求人にマッチしたという 「データベース・マッチング」 案件で、私が片思いできるかどうか、という要素に欠けました。それでも内容を伺って環境に少しでも関わりのある職種・企業なら、応募してみたりもしましたが、いずれも内定には至りませんでした。

岩川さんにご紹介頂いた3案件の中でも、第1希望の会社は、環境配慮や持続可能な社会づくりを広報やCSRにとどまる経費ではなく、それを本業に据えてリターンある投資にすることができている物流企業でした。それを知識として知って意図的にそうしているのか、もしくは環境の本質を捉えることで自然にできているのかは判りませんが、いずれにせよ、それまでCSR止まりの環境配慮型企業に対しても、どこかで自分を無理やり納得させて応募していた私にとっては、片思いして余りある企業でした。

結局その会社の書類選考、3回の面接を経て、内定を頂くことができました。選考には作文もあり、自分の正直な思いを伝えました。文章力で飾ることもできたのですが、それで入社しても意味がないような気がしていました。「面接で好印象を与えるコツ」 や 「面接でのNG発言」 といった類のものは参考程度に読んではいましたが、あまり意識していませんでした。「受験じゃないから準備しても仕方ない、飾る必要はない、丸裸になってその姿を拒否されたら、もうそれはそれで仕方ない」 という思いでいました。だから、すごく楽でした。

内定を頂ける確信は何一つなかったにも拘わらず、なぜかこの会社の一次面接を受けてからは、他の転職活動を一切しなくなりました。毎日閲覧していた求人情報にも、一切興味が湧かなくなりました。他社の選考時にはこういうことはありませんでした。書類選考から内定までは一カ月以上かかるのが通常ですから、普通に考えれば、転職活動の同時進行は当然です。勿論、 「だめだったら、また一からやり直せばいいや。」 と考えてはいましたが、自分でもなぜあのような、おこがましくも既に内定をもらったかのような行動をとっていたのか、今でも不思議です。

岩川さんは、私の思いを汲み取って確固たる思いでこの会社を勧めて下さった、と言うよりは、自宅から近いしなんとなく良いかも、という感じだったのではないかと思います。明確な求人依頼が出ていた訳ではなく、「誰か良い人がいたら推薦して下さい。」 という、特に条件や求人時期を定めない紹介案件だっただけに、岩川さんのなんとなく感も増したことでしょう。企業さんにしても私のような人材が欲しかったというよりは、なんとなくこういう人がいても良いかな、と思ってもらえた気がしています。私が(株)エリートネットワークさんに登録したのも先述のようになんとなくで、恥ずかしながら、(株)エリートネットワークさんの人材紹介に対するポリシーや思いを登録後に知りました。こんなに 「ドンピシャ」 の会社を紹介してくれる人材会社ってどんな会社なんだろう? という思いでウェブサイトを閲覧すると、それこそ私の思いに 「ドンピシャ」 なることが書かれていました。データベース・マッチングできない、人が介在することでしか実現できない人材紹介を目指す、といった内容に 「そう、それなんです!」 と、一人パソコンの前で、(株)エリートネットワークさんと硬い握手を交わしていました。

内定後、転職活動が一段落して、銀座の事務所に今回の紹介のお礼に伺いました。転職カウンセラーの岩川さんの 「経営効率は良くないかもしれないけど、うちは今でも “人” が介在するアナログ手法でやってます」 という言葉を聞いて、私がこういうアナログ手法を求めたからそういう人材紹介会社に出会ったんだろうな、という気がしました。(株)エリートネットワークさんは紹介企業に必ず訪問・取材するそうです。紹介する求職者には必ず会うそうです。企業訪問と紹介者面談を分業せずに、双方のデータ以外のアナログ情報をも収集してから、紹介に臨むそうです。私の電話面接のみで紹介というのは例外中の例外らしく、その理由を伺うと、電話で 「この人なら大丈夫」 と思ってもらえた、とのこと。なぜそう思ってもらえたのかは、今だ謎です! (笑)。

転職活動を終えて

今回の転職活動は、ため息が止まらない期間もありましたが、私が望む人材紹介会社や企業に出会えたことを始めとして、小さなこと、ささいなことすべてが自然の流れだったように思います。自然の流れに身を任せると、それがどんな結果になっても、たとえそれが世間からしたら失敗だったり、愚かな選択だったりしても、あまり自分にそういう自覚はなく、失敗どころか必ず得るものがあり、後悔はなく、逆に感謝が残ります。今回もすべてのステークホルダーに対する感謝の思いでいっぱいです。全てのご縁にありがとう、と言いたいです。

また同時に、社会で価値があるとされている履歴書上の情報は、本当に価値あるものの一部でしかないことを痛感しました。私の中では絶対的な価値がある母親業が履歴書上では白紙です。それがどんなに自分を成長させてくれた活動でも、資本主義社会でお金に換算できないものは参考程度の情報です。そして書類選考はその履歴書のみで行われます。これは人事担当者にとっても難しい問題だろうな、と思います。でも男女問わず、従来どおりの価値判断では頭打ちであることに気が付き、価値基準をシフトさせつつある人事担当者や会社は確実にいる・あるし、今後、確実に増えていくと思います。今回の転職活動やその他の経験からもそれを実感しています。

もし私が今後転職活動をされる方にアドバイスができるとしたら、自分が持っていないものではなく、持っているものに目を向けて欲しいということです。人は自分が持っていないものに目が行き易いと思います。お金がないとか、地位がないとか、学歴がないとか、スキルがないとか。私は長いこと、労働市場では子どもがいることが決定的なマイナス要素だと思っていました。そこにばかり目が行っている自分がいました。でも今回、「お子さんがいらっしゃることは、さほど問題になりませんよ。」 とさらっと言って下さる人事部の方にも巡り合えました。マイナスがゼロになりました。最終的に内定を下さった企業さんは、私が子育てをしながら働いてきたことを評価してくれました。ゼロがプラスになりました。初めて子育てを社会的に認めてもらった気がしました。

人は自分のマイナス要素に目が行きがちですが、傍から見たらさほどのマイナスではなかったり、それ以外に持ってるものがたくさんあったりします。今回そのことが自分の中で腑に落ちた気がしました。周りの常識や情報にあまり振り回されることなく、ありのままの自分を見つめ、その上で、自分が絶対に譲れないことと譲っても良いことを区別すると良いと思います。私の場合は、自分が片思いできる会社に巡り合えたら、そこから先は、私が子どもとの時間を確保することさえ受け入れてくれるなら、あとは力になれるならなんでも良い、という気持ちが自然と芽生えました。

これから二カ月の試用期間です。これだけ長文にわたる 『転職体験記』 を書いておきながら試用期間でお断りされてしまったら、これは転職失敗談になります。そうならないことを祈りつつ、でももしそうなったらご縁が無かったということで、また就職活動をするだけです。私はこれからも自然な流れに身を任せていきたいと思います。

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