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東日本大震災を乗り越えて、仙台の技術者の転職

東日本大震災を乗り越えて、仙台の技術者の転職

No.450
  • 現職

    米系 分析・試験機器及び医薬品・試薬品メーカー  プロキュアメントマネージャー

  • 前職

    米系 半導体メーカー  プロジェクトマネージャー

君原 努 氏 39歳 / 男性

学歴:早稲田大学 理工学部 材料工学科 卒
早稲田大学 大学院 理工学研究科 資源及び材料工学専攻 卒
TOEIC 900点

転職活動に至った経緯

前回の転職は、本当に理想的であった。最初のプロジェクトが、入社した企業(外資の優良メーカー)による、仙台にあるジョイントベンチャー(半導体工場)の買収後のシステム切替プロジェクトで、買収する側、される側の軋轢のなか、バイアスがないという強みで価値を出すことができ、結局その後、10年強この工場で働くことになった。

その間、様々なプロジェクトに参画でき、半導体業界独特の構造、製造業とは何か、あるいはサプライチェーン全体を学ぶのに非常に良い経験をさせて頂いた。また、途中、社外とのネットワーク構築と経営の勉強を目的とし、自己出資であったがMBAを取得することもでき、業務をより高い視点、あるいは客観的な視点で見ることができるようになった。更には、プライベート面でも結婚をし、子供も生まれ、仙台という地方中核都市での生活を本当に充実した形で過ごせたと思う。

ところが、アメリカでサブプライムローンが話題になった頃、自分の中で、製造業という業態の中でこのまま業務(生産計画に従った形の製造)を続けていくことに疑問を感じ、自分のスキルの棚卸を行い、今まで製造業で培ってきたスキルを他の業界に活かすための準備をスタートさせた。

そんな矢先、リーマンショックが起こり、工場の生産がシリコンサイクルの最下点を遥かに下回るレベルに陥り、最終的にこれが原因で会社は戦略的にファブレス(製造をせずにデザイン等付加価値の高い業務のみを行う)の方向にシフトする案を打ち出し、仙台の工場を期限付き(2年)で閉鎖もしくは売却することを決定した。

私自身、想定はしていたので、この会社の決断について、他の同僚のように大きなショックを受けることはなかった。ただ、勿論、このことが転職を行動化するトリガーとなった。

転職活動及び(株)エリートネットワークとの出会い

【1】転職活動
工場の閉鎖までの2年間、表向きは、部下、同僚たちに対して今後2年間しっかりとモチベーションを維持し、生産をサポートすることを促した(2年後に受け取る退職金の上乗せ+転職支援といったパッケージの条件として)が、自分自身のプライオリティは、次のキャリアのことであった。そのため、精神的には、転職活動に注力できた。

また、2年間という猶予期間を与えられているということもあり、焦ることもなく、“自分は何なのか?”ということについて問い直すことから始めて、自分が本当に何ができ、何をやりたいのか、あるいはやるべきか、ということを考えてから転職活動をスタートした。

そういう前準備もあってか、応募から面接に至る率も高かった。中には、オファーを頂いた企業もあった。ところが非常に不満や不安もあった。それは面接後のエージェントからのフィードバックが貧弱だったということによるものだ。これをエージェントの問題とするのは浅はかだったかも知れないが、改めて定評のある(株)エリートネットワークに登録することにした。

【2】(株)エリートネットワークとの出会い
実は、5,6年ほど前、MBA受講中に一度(株)エリートネットワークの転職カウンセラーとお会いしていた。その時は、前職での仕事が面白くなってきたという理由で、実際の面接にも進まないままお断りしたが、対応が非常に良かったということを憶えていて、印象も良かった。

今回もお世話になり、最終的に(株)エリートネットワークの転職カウンセラー(岩川さん)を通して、転職に至ったが、その良い印象は全く変わっていない。

登録後、すぐに連絡があり、私もたまたま仕事で(仙台から)東京への出張があったので、そのついでに銀座のオフィスで直接お会いすることになり、私の今までの職歴、転職に至った経緯、今後のキャリアに対する考え(年収も含め)、今回の転職活動の状況等をすべて説明した。

その中で、私が新卒で入社した会社で可愛がってくれた先輩がたまたま転職カウンセラーの岩川さんの従兄弟だったり、転職活動でお会いしたある会社の人事部長が岩川さんの前職の後輩だったり、前職で3年程仙台に勤務しておられたりということが分かり、岩川さんに対して親近感が沸いてきた。加えて、岩川さんの、相手の価値観、志向をできるだけ引き出していくというスタイルから、私も自分の次のキャリアに関する要求を十分に伝え切れたと思う。

面接

岩川さんから紹介された数社に応募し、そのうち1社(私が転職することになった会社)の方が、私と会うためにわざわざ仙台まで来て頂くことになった。恥ずかしながら、その会社のことは全く知らなかったが、その方にお会いして、この人のためなら必死で頑張ることができるというような人間力というものを感じた。

その後、その会社が、分析器から医薬、試薬まで扱っているコングロマリットで、日本での認知度は、それほどでもないが、本国(アメリカ)では、トップのビジネススクール卒業生を含め、優秀な人材が集まるような優良企業で、M&Aを繰り返して、事業規模を拡大し、また、それに成功しているアグレッシブな企業であることが分かった。更に必要とされている人材は、製造業等で、サプライチェーン全般で様々改善活動を行い、成功実績がある人材であるということも分かった。

これは、正に自分が探し続けていた理想のキャリアであると感じ、岩川さんには、この会社以外の面接依頼をお断りし、この会社の面接に注力したいという純粋な気持ちをお伝えした。

面接のプロセスは非常に長く、回数も非常に多く、アメリカ人社長からのタフな質問(“お前は本当にこの会社で価値を出していけるのか?”等)もされたが、自分の意志が揺らぐということはなかった。この長いプロセスの中で意志が揺らぐことがなかった一つの要因として、岩川さんとの定期的なコミュニケーションがある。

こういった粘り、誠意、長い選考期間(約4ヶ月)で学んだこと等々を評価されたのか、幸運にもオファーを頂くことができた。

入社までに起きた出来事

オファーを頂いてから、入社までの期間が1ヶ月強あったが、その間に新居探し、前職での引き継ぎ等を行う必要があり、新居(横浜)を決め、引越しの日取りも決め、引継ぎも完了し、その夜に前職での送別会を予定していた日のことである。

1000年に一度という大震災が起きた。これにより、沿岸部にあった妻の実家は流され、義父が犠牲になった。ライフラインが断絶され、メディアからシャットアウトされていたということもあるが、現実と向き合うのに時間がかかった。

現実と向き合った時、まず考えたのが、このまま仙台で何もせずに自分だけ横浜に行くべきか?ということであった。
このことについて、岩川さんとまず相談した。私も精神的に不安定な状態にあり、自分がどうすべきかということが正直判らず、伝え切れなかったが、そういう私の状況・気持ちを汲み取り、入社を1ヶ月引き延ばして頂いたことに本当に感謝している。

このため、勿論悲痛な気持ちに変わりはないが、親族の間で悲しみの分かち合いや、支援を行うこともでき、義父の火葬も引越し前に行うことができた。
10年強慣れ親しんだ仙台をこういう時期に離れることに複雑な気持ちもあったが、お世話になった様々な業者やインフラの復旧の早さに将来の光を見たのと同時に、自分自身、横浜という新天地で活躍することが、仙台に対する貢献にも繋がるというマインドを持ちながら、生き延びることができたことに感謝し、家族と共に仙台を後にした。

入社後

正式入社の前に2週間ほど研修の期間を設けて頂き、そのなかでトレーニングを受けながら組織のことを知ることができたが、前職とは異なる大きな文化の違いがあった。それは、前職では、トップダウンのアプローチが有効に機能していたが、現職ではそれが全く通用しない、それもそのはず、M&Aを繰り返してきた会社なので、異なる文化の融合を行う上で、ハードなトップダウンなどで上手くいくはずがない。所謂、誰が言ったかよりも、何を言ったかが重視される文化である。

勿論、大きなチャレンジであるが、それは自分にとって好ましいチャレンジであると信じている。
新しい業界で、色々と苦労することもあるが、こういうことを念頭に置きながら、前向きに改善をリードしていき、それを結果につなげていこうと思う。この会社との出会いもそうですが、紹介して以降入社まで色々なサポートをして頂いた岩川さんとの出会いも運命的なものを感じているので、今後も繋がりを大切にしたいと思っている。

最後に

今回の転職は、本当に色々なことが起き、プロセスもまた大変時間を要したが、その価値は十分にあると信じている。

業態は全く異なるものの、経験、自分のやりたいこと(学びたいこと)と企業の求めていることが非常によくマッチしていた。
運命的な出会いというのも要素としてあるが、自己分析を徹底的に行ったということも非常に大きい。

転職において、自己分析が如何に重要かということが思い知らされた。それがなければ、たとえ良い会社を紹介されても、それが本当に自分にマッチしている会社かどうか分からない。逆にミスマッチを起こすリスクもある。

更に、転職エージェントの付加価値について、正直これまで疑問に思っていたが、今回の転職を通して、非常に良く分かった。

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