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歌舞伎役者、一般企業への転職

歌舞伎役者、一般企業への転職

No.958
  • 現職

    不動産・介護・医療のホールディングカンパニー  社長室スタッフ

  • 前職

    歌舞伎俳優 → 古美術販売会社

石黒 邦仁 氏 40歳 / 男性

学歴:国際基督教大学 教養学部 人文科学科 中退
国立劇場 歌舞伎俳優研修コース 修了

(株)エリートネットワークのドアを叩く

当時、自分は20年続けた歌舞伎俳優を辞め、希望を持って入社した古美術の会社を家族の事情で辞めることとなり、失意のどん底に沈んでいました。
「やはり一般企業で働くのは、無理かもしれない」
芝居への熱を断ち切った決意が揺らぎ、諦めの一言が口から出かかっていました。

「ここに相談してみれば?」
そう言ってエリートネットワークさんを見つけてきたのは、妻でした。後から聞いてみると、別段根拠があったわけではないようです。ただインターネットの検索で引っかかったからだと。“いかに転職市場において自分に価値がないか” という残酷な宣告を受けるべく、重い腰を上げました。

対応してくださったのは、転職カウンセラーの杉本さんという方でした。メールでのやり取りから始まって、いよいよ面談することに。柔らかな物腰でじっくりと私の話に耳を傾けてくださったお陰で、緊張に強ばっていた心も解け、少しずつ失いかけていた自信と転職にかけた想いが蘇ってきました。

弟子という仕事

歌舞伎俳優といっても、自分は梨園の出身ではありません。私は2年間の国立劇場の歌舞伎俳優養成の研修を経て、師匠に入門し弟子としてそのキャリアをスタートしました。公演中、役者として舞台に立っている時間はわずかなもの。師匠やそのご子息のために尽くしている時間がほとんどです。一日の流れは、彼らの仕事の準備、化粧や衣装の着付けの手伝い、出番の直前まで付き添い、舞台上での補助、後片付け。この合間に自分の出番、稽古があるイメージです。

ひと月のスケジュールを記します。公演の稽古期間が5日間、続いて本番が25日間、あわせて30日。これで大体1ヶ月になります。自分はほぼ毎月働いていたので、30日×12ヶ月=360日。これがざっくりとした年間スケジュールです。自分で書いていてもびっくりの休みの無さですが、こんな日々を18年間続けてきました。

休みは無くとも、自分の役者生活はやりがいに満ちた、面白い日々でした。修行は決して楽ではありませんでしたが、師匠や先輩方はそんな自分にしっかりと向き合い、舞台では文字通り命をかけた役者としての生き様を見せてくださったので、飽きる暇などありませんでした。そして、舞台を支えるスタッフの皆さんのかっこ良かったこと。狂言作者、衣装、床山、大道具、小道具、照明、音響……、これぞ職人という仕事ぶりには、感心しきりでした。

気が付くと自分の目標は、「上手くやりたい」 というよりは、彼らに 「認めてもらいたい」、どうしたら皆と良い仕事ができるか、そればかりになっていました。足りない技量や知識を得るために、必死に勉強し、わからないことがあれば質問をし、また勉強を繰り返す。そして、ベストを尽くすために、誠実にその仕事に、その人に、向き合うことを心がけました。もちろんできないことも多々ありましたが。次第に自分の尊敬する方々から、ねぎらいや感謝の言葉をいただけるようになったのが誇りでした。

転職に懸ける想い

役者としての20年間は言葉に言い尽くせない、充実したものでした。ただ、それは自由にさせてくれた家族あってのこと。40歳を迎えるにあたって、次の20年間は家族のために生きたいと考えました。そして、自分の仕事に対する取り組み方は、芝居の世界だけではなく、一般企業においても役に立つのではないかとも。正直不安ばかりでしたが、背筋を伸ばして胸を張って、歌舞伎の世界から外に踏み出すことを決意しました。

ある男の一生

転職カウセラーの杉本さんと話すうちに、自分のキャリアを振り返り、転職を志した時の初心に立ち返っている自分がいました。塞いでいた気持ちは晴れ、そこに残ったのは、ただ働きたいという気持ちのみ。
「石黒さんは特殊過ぎて、紹介するのは難しいなあ」
丁寧に話を聞いてくださった上での杉本さんの率直な言葉は、心地良いくらい痛く自分に響きました。でもその痛みを忘れる程、その二の句に驚かされることになりました。
「では、飛び道具いきましょうか?」
資料を広げるでもなく、その口からすらすらと出てきたのは、一代で従業員7000人を越える企業を作り上げた男のストーリーでした。

私は 「人間」 が好きです。まちがいなく、それが歌舞伎の世界を20年続けてこられた理由のひとつです。個性と才能にあふれた人間に出会うことは、人生の醍醐味だと考えています。そして、杉本さんが語った立志伝中の人物に強く惹かれました。仕事内容自体は突拍子もないものでしたが、仕事云々より彼に会ってみたいと思いました。

魔法の正体

後日、驚いたことに杉本さんは、いきなりそのオーナー社長との面接をセッティングしてくださったのです。私から見れば、まるで魔法。慌てる自分のために、杉本さんは練習日を設定。しっかりと面接を基本から教えてくださって、お陰で私は万全を期して本番に臨むことができました。

いざ面接当日、拍子抜けするくらいあっけなく採用が決まりました。時間にして10分くらいでしょうか。杉本さんに感謝の電話報告をすると、喜びを分かち合ってくださった後でひと言。
「波長が合うと思いました」

理由を伺うと、過去に入社した方からの情報やご自身が直接訪問し、取材した印象から、実務経験等のスペックではなくオーナー社長との相性を重視して、私を推薦してくださったそうです。それは、面接に限らず、入社後長く勤めるためにも大切なことだと。

この瞬間、私は杉本さんの魔法が、豊富な経験とたゆまぬ情報収集、そしてそこに通う温かい心の賜物だと知ったのです。

結びに

この場を借りまして、素晴らしいご縁をつなげていただいたエリートネットワークの杉本さんをはじめ従業員の皆様に、深く御礼申し上げます。転職を決断した初心と皆様への感謝の気持ちを忘れることなく、家族のために全力で働いてゆきたいと思います。

そして、「人間」 が好きな私にとって杉本さんにお会いできたこと自体が、とても興味深く、楽しい経験でした。もしかしたら、これが一番貴重なご縁かもしれません。またゆっくりお話できる機会を、楽しみにしております。

最後に、エリートネットワークとこれからそのドアを叩く転職希望者の皆様の繁栄を、心よりお祈り致しております。

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