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修士卒の電気設備エンジニア、高炉メーカーから素材メーカーへ

修士卒の電気設備エンジニア、高炉メーカーから素材メーカーへ

No.1306
  • 現職

    一部上場 大手化学系素材メーカー  電気設備系技術者

  • 前職

    一部上場 大手鉄鋼メーカー 電気設備系技術者

高尾 浩輔 氏 35歳 / 男性

学歴:茨城県立土浦第一高校 卒
北海道大学大学院 卒
電気主任技術者
エネルギー管理士(電気)

1.前職へ入社した理由

 大学で生物多様性に関する研究に携わっていく中で、近年の産業発達による環境破壊、気候変動が生物多様性に大きな影響を与えていることを実感しました。今後世界的にはますます人口の増加が予想される中で、社会の発展と環境負荷軽減を図っていくため、「環境負荷の高い大型プラントの設備技術者」として働き、その中でプラントの省エネ、環境負荷軽減を図っていきたいと考えました。

 上記の思いを軸に就職活動を進め、プラントエンジニアリング業界、石油業界、鉄鋼業界で内定を頂き、その中で現状最も環境負荷やエネルギー消費量が多く、設備効率化、省エネ設備建設をした際の貢献度が一番大きいと考えた鉄鋼会社に入社しました。

2.前職での業務、得られた経験

 前職では、製鉄所の電気設備系技術者として、工場で使用する電気の供給に関わる設備の建設、非効率設備・運用の改善、設備保全高度化に向けた技術開発、エネルギーマネジメント等の業務に携わりました。大学時代の専攻は生物・情報系であったため入社後しばらくは電気工学の知識習得に苦労しましたが、関連する電気系の資格も取得しながら勉強を進め、徐々に会社に貢献できるようになりました。

 だんだんと仕事の裁量も増え、入社時の思い (省エネ、環境負荷軽減) に対し自ら働きかけ改善を進め、それによる社会貢献も感じられる等、やりがいを感じながら充実した社会人生活を送ることが出来ていました。

3.転職活動のきっかけ

 2年程前から上記の状況が一変しました。原因は鉄鋼業界の全体的な構造不況による業績悪化に加え、世界的なカーボンニュートラルの流れを受けた脱炭素圧力により会社の事業戦略が大きく変わってしまったためです。それらにより、エネルギー部門の大型設備投資案件がほぼなくなり、生産拠点の集約検討、既存設備の維持管理等の仕事がメインになりました。また、本来カーボンニュートラルは設備投資のチャンスでもあるはずなのですが自部門にその話はなく、自部門の仕事に対する社内の優先順位の低さ、閉塞感も覚えました。

この状況は短期的な話ではなく中長期的に継続する見込みであり、当初から思い描いていた「大型設備の建設、改善を通した省エネ、環境負荷軽減」という働き方と乖離が出たこと、また海外含め活躍するフィールドを広げたい(環境負荷改善を日本だけでなく世界単位で行いたい。それに対し、日本の鉄鋼業は海外展開は出資、JVがメインで技術者の海外派遣は少ない)という思いから、転職を検討するようになりました。

4.転職活動(内定を得るまで)

 転職活動では、以下の4項目を軸に応募を進めました。

 ①電気系の専門知識をベースにエネルギー関連設備の建設、改善に携われること。
 ②社内で電気・エネルギー部門が軽視されず、今後カーボンニュートラルに向け積極的に投資が進められること。またその中で自身がある程度の裁量を持ってそれらに取組めること。
 ③海外含め働くフィールドを広げられること。
 ④1つの工場の局所最適的な改善ではなく、将来的には海外拠点含む会社全体の電気エネルギー設備、運用の企画にも携わり、省エネや環境負荷軽減等、大きな規模で貢献できる可能性があること。

 逆に、エネルギー設備や大型プラント設備のオーナー側エンジニアの仕事は好きだったため、職種や立場(メーカー側やエンジ会社の技術者に転身する等)は無理に変える必要はないと考えました。ただしこれらの働き方に関する情報は、求人票等の表面的な表記のみで把握することは困難であり、面接の場で直接確認するしかないものもありました。

 中途採用の倍率の高さも考慮し、少し多め(10社程度)に応募しました。応募した業界は、大手メーカー(自社工場で大規模設備保有)、プラントエンジニアリング会社、再エネ専門会社、インフラ (エネルギー関連) 会社等です。年齢的に30代中盤であったこと、これまで自身の市場価値を把握する経験がなかったため不安でしたが、自分の予想以上に高い評価を得て、応募企業全てから内定を頂きました。各社カーボンニュートラルに向けた対策を検討している段階であり、「中堅のエネルギー電気技術者」の需要が高かったのかもしれません。

5.転職先の選定理由及び今後の意気込み

 私の転職活動の中で一番苦しかったのは、内定を頂いた企業から1社を選定する過程でした。上記①~④の転職の軸に対し各社ともに複数以上の項目を満たしており、また面接をしている中でこれまで経験してきた「メーカー設備技術者」以外の視点、働き方で魅力的と感じるお話もあり、決定的な決め手がなく大変悩みました。

 通常、内定の連絡後の1~2週間以内に内定受諾の返事をする必要があるため、時間が限られる中でエージェント様を通し色々と質問させて頂き、可能な限り働くイメージを具体的に描けるようにしました。内定の連絡を頂いた後の追加質問もあり、後から振り返ると失礼な内容も含まれていたかもしれませんが、時間が限られる中で様々な相談に乗って頂き、親身に対応してくださったエージェント様、各社採用担当の方には大変感謝しております。

 最終的には、働き方(裁量、キャリアの広がり)、自身に対する期待感の面を重視し、大手素材メーカー様にお世話になることに決めました。入社後は期待外れと思われないよう、前職での経験も活かしつつ、現職に対し受け身にならず自ら働きかけ、効率的な設備の新設、既存設備の効率化等で力を発揮していきたいと考えています。

6.転職活動を通しての気づき

 最後になりますが、私が今回の転職活動で得た気づきや、この『転職体験記』を読んで下さっている方にご参考にして頂きたい内容を記載します。

 1)転職活動は、自身の市場価値、過去のキャリアや今後の方向性の整理という観点から大変有意義だと感じました。
転職活動の結果、前職に残ることになっても、自身のキャリアを客観視できている分、より良い働き方が出来るようになると思います。また、自身の専門分野や年齢、市場動向によって市場価値は変わるので、迷ったら職務経歴書を整理した上でエージェント様に相談することをお勧めします。私は今後も自身の職務経歴書のアップデート、市場価値の確認は定期的に行いたいと考えています。

 2)転職の際に、可能な限り事前にエージェント様から情報を仕入れ、応募する企業数は絞った方がいいと思いました。
私は応募した上で面接の場で色々と質問する方法をとりましたが、企業に直接聞く前に得られる情報がもっとあったのでは、と反省しています。多くの企業に応募するとその分多くの情報を得られますが、内定後にお断りしなければいけない企業の数も増えます。現在働いている職場に閉塞感を感じている中で、「是非来て欲しい」と仰っている企業へお断りの連絡をするのは、当初想像していたよりもずっとつらい作業でした。一般的には、「興味がある企業にはどんどん応募した方が良い」と言われることの方が多いと思いますが、上記の様な面があることもご認識頂ければと思います。

以上

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