企業インタビュー

住友金属鉱山株式会社 企業インタビュー

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非鉄金属の鉱山開発、世界トップクラスの製錬事業、多種多様な機能性材料の提供という3領域で事業を展開する住友金属鉱山株式会社。ユニークな事業モデルを強みとして2021年度に過去最高益を達成しています。今回は人事部 人材開発室長の八木 武人氏にインタビュー。地に足を着けて誠実に仕事に取り組む社風、キャリア入社後に経験を活かして活躍している人材の資質、同じ職掌の中で自律的にキャリアを積める環境などについてお話を伺いました。(掲載開始日:2023年12月8日)

まず初めに、貴社の創業と住友グループの関係からご説明頂けますでしょうか。


人事部 人材開発室 人材開発室長
八木 武人氏

私たちの事業のルーツは今から430年以上前、安土桃山時代の1590年まで遡ります。銅職人の蘇我理右衛門が、鉱石に含まれる銅と銀を分離する「南蛮吹き」という技術を確立。この人物が京都で住友家初代政友と出会い、大阪で銅製錬の事業拡大への道を開いたのが住友金属鉱山の原点になります。

その後1691年に現在の愛媛県新居浜市に別子銅山を開坑しています。この別子地区を拠点としてさまざまな企業が生まれて発展し、住友グループが形成されていきました。

貴社は住友グループの源流事業を受け継ぐ企業であり、地域と共に時代を超えて発展してきたと言えますね。


以下の住友の事業精神は、住友家初代政友の遺した「文殊院旨意書」を礎とし、住友グループ全社の事業経営の根本精神として受け継がれている。

第1条 わが住友の営業は信用を重んじ、確実を旨とし、もってその鞏固(きょうこ)隆盛を期すべし
(社会的な信用や信頼関係を大切にし、何事も誠意をもって確実に取り組み、事業の発展を図らなければならない)
第2条 わが住友の営業は時勢の変遷理財の得失を計り、弛張(しちょう)興廃することあるべしといえども、いやしくも浮利に趨(はし)り軽進すべからず
(社会ニーズの変化をとらえ、新事業ヘの進出や撤退を判断すべきだが、目先の利益を追って物事をよく検討せずに進めてはならない)

そもそも鉱山開発とは、数年から十数年の期間が必要となります。また、ひとたび開発を始めれば、開発が終了した後も半永久的に環境の保全に取り組まなければなりません。ここから当社らしい価値観の一つ、「地に足を着けて長期的な視点でビジネスに取り組む」という行動原則が形成されていったと考えています。

当社では、「住友の事業精神」が従業員の精神的なバックボーンとなっていますが、創業期からESG(Environment、Social、Governance)を重視し、環境や地域社会に配慮しながら健全な発展を目指す経営を積み重ねてきたと言えるでしょう。

当社では、総合職全員に「住友の事業精神」ならびに経営理念の理解・浸透を図るための研修を実施しています。住友の歴史展示施設でグループの歴史や事業精神を示す史料を見学し、その後、愛媛県の別子地区を訪問。緑豊かな山あいに位置する鉱山跡地に登って、当時の事業や生活を体感する研修コースを設けています。

長い歴史の上に展開される、貴社の事業の概要をご紹介頂けますか。


銅やニッケル、金などの非鉄金属は、インフラから産業用機械、自動車やエレクトロニクス機器まで、社会の幅広い領域で活用される重要な金属素材です。住友金属鉱山は現在、資源・製錬・材料の3領域で事業を推進しています。


同社が手掛ける最先端の素材(写真上、下)

資源事業では、商業規模で操業を継続している国内最大の金鉱山である菱刈鉱山(鹿児島県)を保有するほか、世界各地での鉱山の開発・運営に参画しています。現在、世界で新たに開発される鉱山は、地中深くの鉱床や高地の鉱床に限られ、技術的難易度の高いプロジェクトです。当社は地域社会や環境との共生を大切にする鉱山開発の技術・ノウハウを強みとして、長期的なスタンスで資源開発に取り組んでいます。

製錬事業は、鉱山で採掘した鉱石の非鉄金属の純度をさらに高め、金属素材を製造する事業です。当社は創業以来、鉱石を粉砕して高温で溶解する乾式製錬と、液体の中で化学変化させる湿式製錬の2系統の製錬プロセス技術を蓄積してきました。そしてお客様である商社や金属加工事業者の需要に応じて、高品質な金属素材を安定的に提供しています。

材料事業は、金属素材に付加価値を与え、多様な用途の機能性材料を製造するビジネス。EV(電気自動車)向けのリチウムイオン電池の正極材料から、小型エレクトロニクス機器の抵抗体・絶縁体などの粉体材料、スマートフォンの雑音・混信を防ぐフィルターなどの結晶材料まで、さまざまな機能性材料を社会へ提供しています。

資源・製錬・材料の3事業が連携するビジネスモデルの優位性について教えて下さい。


世界各地の鉱山でプロジェクトを推進する同社。日本最大級である菱刈鉱山は、累計264.5トンの産金量を誇る(2023年3月時点)。

資源開発から製錬、機能性材料の提供に至るサプライチェーン全体を自前で完結できることは、大きな強みです。3事業連携は世界的に見てもユニークなビジネスモデルであり、品質や安定供給の面での優位性に繋がっています。例えば、自分たちが採掘した高品位のニッケルを自社工場で製錬し、ニッケル含有量の安定したリチウムイオン電池の正極材を高い品質で量産できるからです。

さらに、3領域の技術バックグラウンドを持つ人材の知見を柔軟に融合できます。その結果、需要が高まる材料事業におけるお客様のニーズに応じた新製品開発など、イノベーションが促進されます。また、近年は限りある資源の有効活用が求められていますので、製錬プロセスで発生した副産物を新たな材料開発に活かすなど、領域を横断した取り組みも進展しています。

このほか、資源を探査・採鉱する技術、鉱石から不純物を取り除く技術、製錬プロセス技術、材料事業における結晶育成・加工技術、中間材料の粒径を揃えて塗布する粉体合成や表面処理技術などを各領域の研究所と共に高度化しています。これらの技術資産を融合することで、将来的な市場ニーズの変化への対応力が強化されています。

サステナビリティを重視して事業成長を目指す貴社の考え方について、改めてご説明頂けますか。

有限な資源を扱う私たちの事業では、あらゆる活動の前提として持続可能な発展を目指さなければなりません。事業を行う上で温室効果ガス排出を削減しながら、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに取り組んでいます。

また、天然資源の採掘から金属製錬、機能性材料の生産までを行う当社は、その過程で扱う金属素材も多岐に亘ります。技術的課題などで今まで利用できなかった資源の活用やリサイクル技術の開発などを通じて、有限な金属資源を無駄なく、より有効に活用することは当社グループの責務であると考えています。

冒頭で触れましたように、当社は創業期から地域社会や環境との共生を重視して事業を推進してきました。そのため、事業イコール持続可能性に責任を持ち続けることであり、社員の意識の中に当たり前の行動基準としてサステナビリティが根付き、そこに矜持を持っているように感じています。

こうした持続可能性を前提に、当社では今「世界の非鉄リーダー」を目指すという長期ビジョンを掲げています。グローバルな資源メジャーと肩を並べ、資源権益や非鉄金属の生産量で世界トップ5に入る存在感を示すことです。長期ビジョンのターゲットとして、金属別の年間生産量、新規鉱山運営への参画、利益創出などにおいて数値目標を定めています。

近年、貴社がキャリア採用に注力している背景をご教示下さい。


八木氏のデスクにて。
「私自身もキャリア入社ですが、長い歴史を持ちながら変革に前向きな企業姿勢が大きな魅力でした。前職での人事経験を活かし、住友金属鉱山を変えていくような人材が活躍できる環境を作ることができればと考えています。」

当社がここ10年ほどキャリア採用に注力している理由は、事業成長のスピードが加速していることが背景にあります。

自動車のEVシフトで需要が大きく伸びている車載用電池材料では、パートナーであるお客様と密接に連携しながら新しい電池材料を開発、提供しています。2021年には月間生産能力2,000トンクラスの電池工場を新設することが決定し、今まさに工場を建設中です。ビジネスが継続的に拡大する中で「自動車×電池材料」の知見を有する人材や、工場の設備設計、電気・計装、建築を担う人材のニーズが増加しています。

また、そもそも社会のデジタル化を背景に、銅などのベースメタルから金や銀などの貴金属、ニッケルやコバルトに代表されるレアメタルまで、非鉄金属の需要は世界的に高まっています。それに伴い、非鉄金属業界や、電池材料に関わった経験に限定せず、他業界からも幅広くキャリア採用の門戸を開いています。

3つの事業領域ごとに、現在どのような人材の採用ニーズがありますでしょうか。

資源事業では、これまで長期的な視野で新卒の人材を育成してきましたが、各国の鉱山開発プロジェクトへの参画に伴い、キャリア採用も強化しています。商業ベースで操業を続ける菱刈鉱山を始め、チリの銅鉱山やカナダの金鉱山を開発中です。米国、ペルー、チリ、オーストラリアの銅鉱山の開発にも出資しています。鉱山での業務用車両の自動運転や坑内のリモート掘削など資源開発のDX化も進む中、操業に携わりながら鉱山技術者としてキャリアを積むチャンスが広がっています。

製錬事業では、強みである製錬プロセス技術のさらなる革新やリサイクル技術を含め、生産ラインの最適化や研究部門での応用研究ニーズがあります。ベースメタルから貴金属、レアメタルまで、幅広い金属素材を扱いますが、キャリア採用においては必ずしも非鉄金属業界出身である必要はなく、鉄鋼業界や化学業界、エネルギー業界などでの実務経験も役立てて頂けます。

材料事業では、電池材料、粉体材料、基板や配線板などのパッケージ材料、磁性材料、各種触媒、軽量気泡コンクリート建材まで、多種多様な高機能材料を製造・販売しています。生産ラインの管理、研究部門では材料の評価・分析、および企画営業を担う人材の採用ニーズがあります。

また、当社は、各事業部門の工場、生産プラントなどにおけるEPC(設計・調達・建設)や保守・保全・メンテナンス業務を、社内の設備系部門が担当しており、機械・電気・計装・土木・建築といったプラントエンジニアリング職種のニーズもあります。エンジニアリング業界や建設業界ご出身の方でもご活躍頂くことが可能です。

そのほか、3事業のDX推進を見据え、本社の情報システム部門やDX推進を担う部門においてもIT人材の採用ニーズがあります。

貴社でモチベーション高く活躍している社員に共通する行動特性や資質はございますか。

技術スペックについては事業領域によって異なりますが、部門を問わず共通して求められる資質として、「誠実に仕事に取り組む姿勢」と「チームプレーができること」が重要だと思っています。

資源・製錬事業と材料事業では、プロジェクトの時間軸の長さ、成果を挙げるまでのスピード感が大きく異なりますが、企業文化としての「地に足を着けて誠実に取り組む姿勢」は共通しています。また、非鉄金属のサプライチェーン全体をカバーする当社では、資源・製錬・材料の各事業部門を横断して、現場を巻き込んだ柔軟な協働が求められます。立場の異なるメンバーの意見を調整したり、合意点を見出す丁寧かつロジカルなコミュニケーションが重要になります。

新しいことを提案する際には、「こんな風にやってみたらいいんじゃない?」「自分もよく分からないから一緒にやってみよう」など、相手に寄り添ったコミュニケーションが取れる人が成果を挙げている印象があります。

事業特性に応じて、人材にはどのようなキャリア支援を配慮されていますか。


人材開発室 採用担当主任 塩川 健奨(けんしょう)氏(写真右)
「事務系の職種にも職掌があり、「人事」職掌であれば、人事領域に特化して本社および国内各拠点の人事部門で経験が積めます。人事経験を3年間積んだ後に営業部門へ配属、といったキャリアパスはありません。」

人材開発室 採用担当 亀山 詩織氏(写真左)
「部長など上位管理職とも気軽に会話できますし、若手であっても自分のやりたいことを上司や同僚に相談しやすい組織風土です。仕事の中で “理不尽に我慢をする” ことが殆どありません。」

住友金属鉱山は、人事制度の面でも、これまで数十年に亘って年功型の制度を基本としていましたが、今年度から職務・職責に応じた制度へ移行しました。
この制度改革には、キャリア採用の人材がこれまで以上に活躍できる環境を整えたいとの意図もあります。

また当社では、事業と専門性ごとに資源、金属、設備、研究開発などの「職掌」を定めています。人材はこの職掌の中でプロフェッショナルとしてキャリアを積み重ねていくことができます。基本的に職掌をまたぐ無理な異動はありません。

「資源」職掌であれば、鹿児島県の菱刈鉱山で数年間学び、次のステップとして海外のいずれかの鉱山プロジェクトでスキルアップを目指します。鉱山開発のマネジメントを目指すのであれば本社で経験を積むキャリアパスになります。
「金属」職掌であれば、愛媛県の工場でいくつかのポジションを経験後、フィリピンのグループ会社でキャリアの幅を広げて頂くことになります。従って、資源・金属職掌のキャリア採用では、英語を使って仕事をすることに抵抗のない方が望ましい場合があります。

いずれの職掌も中長期的には地域間異動を伴うのが前提ですが、ライフステージの変化に応じて各人にキャリアプランの変更が生じれば、その都度相談に応じながら柔軟性のある制度運用を行うよう配慮しています。また、福利厚生も充実させ、便利なロケーションの社宅を少ない自己負担で利用できるなど、全国の拠点で社員が安心して働ける環境を整えています。

最後に、これから貴社を志望する方や、潜在的な候補者へメッセージをお願い致します。


「社名ロゴマークに新しい書体を採用し、新たなシンボルマークを制定する企業ブランディングにも取り組んでいます。時代に合わせた企業変革に向けて、社員の意識を変えようとしています。」

当社は430年を超える歴史を持ちながら、2021年度に過去最高益を更新しています。このことは、非鉄金属業界がいかに成長している産業であるかを物語っています。非鉄金属の価格は世界の景気動向に大きく左右されますから、当社の業績も自社の努力だけで達成したとは言えない側面がありますので、この部分は謙虚に受け止めています。しかし、さまざまな変革を着実に推進してきた結果が成長に繋がっているものと考えています。

長い歴史の中で資源・製錬・材料の3事業がそれぞれ強みを確立していながら、社内には事業領域を横断した新しいチャレンジも歓迎する雰囲気があります。それは担当者だけでなく経営幹部レベルでも同様です。人事部門をマネジメントする私には、経営幹部や各事業部門の執行役員同士が打ち解けた雰囲気の勉強会を自発的に開き、企業としての新しい試みに対して率直に意見を交わす姿が印象的でした。柔軟な協働スタンスは、歴史の古い大企業にありがちな組織硬直化とは無縁です。

その意味で当社には、フレキシブルに新しいチャレンジを積み重ねられる可能性を感じています。それでいて各個人に短期間で成果を求める組織ではありません。地に足を着けて長期的な視野で事業を見つめ、未来に向けて住友金属鉱山を変革できるポテンシャルを持った人材に当社を発見して頂ければと思っています。

本日はお忙しい中、長時間に亘りご協力頂き、ありがとうございました。

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住友金属鉱山株式会社
創業
1590年(天正18年)
設立
1950年(昭和25年)
資本金
932億円
所在地
東京都 港区 新橋 5丁目 11番 3号(新橋住友ビル)
従業員数
連結 7,330名(2023年 3月 31日時点)
代表取締役社長
野崎 明
主な事業内容
資源開発、非鉄金属製錬、電池材料・機能性材料の製造、その他
※この記事の内容は取材当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、役職名等は現在と異なる場合があります。
職業紹介優良事業者認定マーク
当社は、全国に約28,000事業所ある人材紹介会社の中で、厚生労働省が審査し、 わずか40社しか選ばれない「職業紹介優良事業者」に認定されています。
※平成26年(第一回認定):全国で27社のみ、平成30年:全国で43社のみ(第二回認定)、令和2年:全国で39社のみ(第三回認定)、令和5年:全国で40社のみ(第四回認定)
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