企業インタビュー

TANAKAホールディングス株式会社 企業インタビュー

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グループ連結売上高1兆円超、グループ全体で世界の産業用貴金属ビジネスを牽引し、日本の宝飾・資産用貴金属市場では「田中貴金属」ブランドで高い知名度を誇るTANAKAホールディングス株式会社。今回は人事総務部 部長の坂本 弘之氏に130年を超える同社の歴史を振り返って頂き、産業用貴金属市場において強みを確立していく過程からご説明頂きました。更に、創業期から挑戦を重ねてきた貴金属リサイクルの取り組み、ロンドンの貴金属市場に認定される高い技術力、意欲的な若手に責任ある仕事を任せるカルチャー等についてもお話を伺いました。(掲載開始日:2022年1月27日)

まず初めに、産業用貴金属製品という分野で貴社がどのようにプレゼンスを高めてこられたのか、企業の沿革を踏まえて教えて頂けますか。


元素の周期表。中央8つの元素からなる以下の素材を取り扱う。

1885年(明治18年)に創業者の田中梅吉が両替商として開業した「江島屋田中商店」が当社のルーツになります。そして後に社長となる田中一郎が、市中から貴金属製品を回収・精製して地金をつくり、これをかんざしやネックレス等の装身具を加工する業者に販売し、地金商としての事業に進出したという記録が残っています。

この回収・精製の技術こそ、産業用貴金属製品メーカーに不可欠な要素技術でもありました。尚、当社は明治の終わり頃、東京電力(株)の前身である東京電燈(株)から廃電球の処理を請け負い、使えなくなった電球のフィラメントから白金を回収・精製し、白金ワイヤの製造に成功しています。

非鉄金属の一つである貴金属は、白金(元素記号Pt:プラチナ)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)という8つの元素からなります。中でも白金は融点が高く、硬度もあるため、加工には高度な技術力が求められます。創業期から技術的に難度が高い白金の精製と加工を手掛けたことで、社内に技術の蓄積が進みました。その後、化学実験に使用するるつぼなどの白金製品を作ることにも成功し、産業用分野への進出の足がかりとなりました。さらに1950年代、それまで手動であった電話回線の接続が自動式のクロスバー交換機に代わったとき、スイッチをオン/オフするリレー部分に使われる貴金属の接点材料の開発・製造に当社が独占的に関わったことが大きな飛躍の契機となりました。また、半導体材料であるボンディングワイヤ(人間の毛髪の5分の1ほどの極細線)の製造は、当社が電子産業へ本格的に進出するきっかけとなりました。

このように「貴金属のリサイクル」が起点となって、当社は産業用製品のシェアを順次拡大していったのです。一般に貴金属は導電性が高く、加工性もよく、錆びないといった電気的・機械的・化学的な材料特性に優れており、様々な工業製品の開発に必要不可欠な材料であると言えます。戦後の高度経済成長の中、半導体や電気・電子部品の需要の高まりと共に、当社の事業も大きく成長軌道を辿っていくことになります。

現在、貴社の技術力は貴金属業界におけるグローバルスタンダードとして、非常に高く評価されています。

当社は「貴金属を極める」をキーワードに、貴金属のプロフェッショナルとしてお客様の技術的要求に対して真摯に対応し、積極的なチャレンジを重ねてきました。

貴金属製品のユーザー企業のニーズとして、試作段階の製品では貴金属を使用しても、量産になった際には高価な貴金属の使用はできるだけ少なくしたいといった要望があります。そこで、お客様が求める品質は担保しながら、「いかに薄くするか」「いかに細くするか」「いかに少量で対応するか」といった取り組みを重ね、産業用貴金属市場において当社にしか提供できない価値を追求するという姿勢を貫いてきました。

その一例として、貴金属の回収・精製において重要な役割を果たしているのが、「分析技術」です。貴金属の加工工程で生じるプロダクションスクラップ、また回収した使用済製品に使われている合金や化合物等、色いろな素材が混ざった材料から貴金属だけを抽出して規格の純度まで高めるために、まずは貴金属の正確な分析技術を持つことが出発点となります。そして次段階の精製プロセスにも非常に高い精度と再現性が求められます。

現在、当社は高度な技術力により、貴金属の国際的な認定機関であるロンドン貴金属市場協会(LBMA:London Bullion Market Association)から、アジアで唯一の公認審査会社に任命されています。LBMAは世界各国の貴金属会社自体を審査し、インゴッド(貴金属を精製して塊状にしたもの、いわゆる「金の延べ棒」等)に刻印を押すことのできる資格として公認溶解業者(グッド・デリバリー)を認定しています。当社はこのグッド・デリバリーであるだけでなく、各国の公認溶解業者を定期的に審査する公認審査会社(グッド・デリバリー・レフリー)として認定されています。

グッド・デリバリー・レフリーは世界に5社しかなく、アジアでは当社だけです。このレフリーとしての実績評価も踏まえて、当社はLBMAの正会員としても認定され、現在はアジアの貴金属市場をリードしていく立場にあると言えます。

貴社グループでは、貴金属原料の調達から回収・精製、製品開発、販売、リサイクルに至る世界規模のバリューチェーンを構築されています。

田中貴金属グループの活動基盤は、半導体や電子部品等の産業用が約70%、「純金積立」等の金融商品や地金・コインといった資産用貴金属が約15%、ジュエリー等の宝飾品が約15%となっています。

地金調達につきましては、当社は鉱山を所有していないため、世界の鉱山会社、商社や銀行との関係を強化しながら、貴金属を調達しています。貴金属取引は現金決済が原則で支払サイトも短期であり、資金力と長年にわたって築いてきた取引先との信頼関係が非常に重要になります。

このような事業の性格を踏まえ、メーカーとしてQCD(クオリティ、コスト、デリバリー)を徹底的に追及してお客様と信頼関係を築き、循環型社会に貢献できるサービスを通じてwin-winでビジネスを継続することを最も重視しています。貴金属は高価であるが故に、資金調達の効率性を考えて製品製造のリードタイムを早く回すことも重要です。なるべくムダなく、少ない貴金属で高品質の製品を作り、スピード感を持って出荷していく、という考え方が根底にあります。

回収・精製の技術蓄積につきましては先ほどお話しした通りですが、製品化については、開発段階から幅広い業界のお客様と一体となったアプローチを展開しているのが特徴です。半導体、電気・電子機器、医療機器等、それぞれの分野で製品の成熟度に伴って貴金属に求められる要求も絶えず変化しますから、多様なニーズにきめ細かくお応えしていく姿勢が求められます。

例えば、当社の顧客である日本内外のメーカーはアジア地域に多くの生産拠点を持っています。そこで当社も1978年にシンガポールに生産拠点を設けて対応したことを端緒として、マレーシア、台湾、中国の杭州・成都・寧波等各都市に生産拠点を拡大してきました。また、2016年には同じく貴金属のグッド・デリバリー・レフリーであるスイスのMetalor Technologies International SA(メタロー社)がグループに加わり、同社の生産・販売ネットワークを基盤として欧米市場へのビジネス拡大を推進しています。

また、希少な貴金属資源を循環利用するリサイクル加工技術の確立も極めて重要です。貴金属の加工工程で生じるスクラップは再利用しますし、一旦販売した産業用製品からの貴金属の回収・精製や、廃棄される家電や電子機器等に含まれる貴金属、いわゆる「都市鉱山」を再利用する等、「リサイクルの輪」を強化しています。2020年度、当社グループにおける貴金属の最終処分(廃棄)量はゼロとなっています。

循環型社会への貢献という視点で、貴社はどのような製品開発を手掛けておられますか。


エントランスには同社が手掛ける素材からなる製品が展示されている。

エネルギー・環境分野では、自動車の排ガス浄化触媒に長らく貴金属が使われてきました。ガソリンエンジンの燃焼過程で発生する一酸化炭素や炭化水素、窒素酸化物を、白金/パラジウム/ロジウムを組み合わせた触媒による酸化・還元反応で、人体に無害な物質に変換しています。

また近年は、ハイブリッド車や電気自動車等環境対応車の普及に伴い、クリーンなエネルギー源である燃料電池への注目も高まっています。当社は燃料電池の触媒開発に30年以上も取り組んできており、長年の研究の成果が今ようやく結実し、プラチナを用いた燃料電池触媒で日本国内外の顧客から高い評価を受けています。また、燃料電池車等の次世代エネルギーとして期待の高まる水素ガスの精製にもパラジウムの合金膜が使われています。

非上場企業のプラスの側面として、短期的な成果だけ求められることなく、長期的な視野でじっくり腰を据えて開発に取り組める環境があると言えるでしょう。

今後に向けた更なる成長戦略の方向性を教えて下さい。

田中貴金属グループでは、事業領域別のカンパニー制を導入しています。具体的には、金・銀、白金族といった素材別の製品、半導体関連製品、回収・精製、表面処理技術等を活用した製品、地金調達及び資産・宝飾品事業を担うカンパニーがあります。それぞれ中長期の事業計画を立案し、カンパニーごとにスピード感を持った開発・製造・販売活動を展開しています。

中でもエネルギー関連の触媒や医療分野の検査薬・診断薬といった製品開発は特に注力している領域です。また、最近は医療機器分野にも進出を図り、先端部分に人体に無害な貴金属を用いたカテーテルや、がん治療に用いる腫瘍マーカー等にも貴金属が使われています。

各カンパニーでは、既存の製品を扱いながらその延長線上で新製品開発を展開すると同時に、カンパニーを横断してこれまで手掛けてこなかった事業開発を統括する部門もあります。これらの取り組みを戦略的に融合し、グループ全体で事業を発展させていく考えです。

貴社では現在、どのような部門・職種にキャリア採用ニーズがありますか。また、どのような資質やスタンスの人材を求めておられるのかについてもご教示下さい。

グループの通年採用は私たちTANAKAホールディングスの人事総務部が一括して実施し、各社に人材を配置しています。技術職から営業職、間接部門まで非常に幅広い職種・ポジションにキャリア採用のニーズがあり、各カンパニーが求める人材要件にきめ細かく応えていく形です。産業用貴金属の分野では相応の知名度はありますが、間接部門の潜在的な候補者については、「田中貴金属」を第一に想起して下さる方は多くないという課題もあります。

求める人物像として、産業用貴金属、資産用商品、宝飾用事業、各生産拠点を含み、技術職、営業職、間接部門に関わらず、貴金属を扱う上で「誠実さ」という資質を重視しています。社風としても仕事と誠実に向き合う真面目な社員が多い会社だと思います。その一方で、時代の要請に応じて技術的なチャレンジを繰り返してきた企業であり、現状に甘んじることなく改善に取り組み、困難な課題にも自ら率先して挑戦できる積極的なスタンスは欠かせないと考えています。

実際に貴社にキャリア入社され、活躍なさっている人材は、貴社で仕事をすることの魅力についてどのように語っておられますか。


キャリア入社の人材が共通して話しているのが、100年超の歴史ある企業でありながら学閥や組織のしがらみがなく、組織がフラットかつ程よくコンパクトで、上層部に対しても率直に意見を言えるオープンな雰囲気があるということです。

技術系職種については、同じカンパニーの中でも複数の生産拠点があり、多岐にわたる領域を担当しますので、経験年数と共に新しい分野の開発等に取り組める可能性があります。
また、新卒・中途入社を問わず、本人の実力とパフォーマンス次第で責任あるポジションを任せています。キャリア入社の人材が、当社が新たに開発したインフルエンザ等の体外診断キットの製品化を支え、今では部門の責任者を務めている例、あるいは生産システム部門で社内の多様なシステム構築と運用に尽力し、部長を務めている、といった例もあります。

更には開発職を長年にわたって経験後、営業部門に転じて技術営業的なポジションでお客様とのコミュニケーションに専門性を活かしている人材も多いです。技術的な知見を活かしてマーケティング等の企画部門で活躍する人材もいます。今後はカンパニーの枠を超えてより柔軟な異動を可能とし、これまで以上に個が実力を発揮するチャンスを広げられるキャリアパスの可能性を検討していきたいと考えています。

間接部門では、四大会計事務所出身の人材が事業戦略部門でM&A推進において専門性を発揮し、その後、グループ化したヨーロッパの同業企業に出向し、3年程かけて統合後のマネジメント推進を担う等の例もあります。また、キャリア入社後に数年間にわたって国内の財務経理部で経験を積み、その後、海外支店や現地法人で財務部門の管理職を任せることで、スペシャリストとして経験の幅を広げ、知見を深めて行く等の例があります。

坂本様ご自身はこれまでのキャリアを通じて、貴社の魅力をどのように捉えておられますか。

私は大学が教育学部出身ということもあり、もともと人事部を希望して入社しましたが、配属は営業部門でした。関東・関西地区を中心に合計14年間、営業として経験を重ねました。当時はカンパニー制を導入する前でしたので、オールラウンドに幅広い製品を担当し、中でも半導体等電子部品メーカーに納める製品群を扱う比重が大きかったと思います。

そんな中で感じた当社ならではの営業の魅力は、やはり回収・精製技術の蓄積があることから、循環型のサービスが提供できる点にありました。「売ったらおしまい」ではなく、お客様に販売した製品のプロダクションスクラップを回収し、そこから精製した貴金属を再び製品に加工して納品できます。当社の製品には多様なバリエーションがありますから、お客様のニーズに対応して幅広くサービスが提供できるという面白さがあるのです。また、お客様に循環型のビジネスモデルの価値に気付いて頂き、当社の事業スタンスを評価して頂けるという喜びもありました。

その後営業部門を離れ、本社の経営企画部で5年、次に財務経理部で5年余りの経験を経て、2015年に人事総務部の配属となって現在に至ります。経営企画、財務経理を通して一貫して注力してきたのが、実効性のある中期経営計画の策定でした。全社的な経営計画を社員一人ひとりの目標管理にリンクさせ、会社の進む方向性と社員の業務を連携させる大切さを学び、これらを踏まえて人材の採用・育成に取り組みたいという自らの希望が叶ったキャリアパスになります。

財務経理部で会計を一から学び直したように、人事総務部でもキャリアコンサルティング技能士の国家資格に挑戦することから始めました。今後も継続して、部門の垣根を越えて優秀な人材が活躍できる場をいかに構築するか、事業のグローバル展開が急速に進む中で、日本人・外国人を問わず、真のグローバル人材をいかに育てていくかといった課題に取り組んでいきたいと考えています。また、非鉄金属メーカーの中では比較的女性社員が多い当社では、ライフステージの変化に応じた女性のキャリアマネジメントをより深く考える必要も生まれています。

最後に、貴社を志望する方や、潜在的な候補者へメッセージをお願い致します。


「田中商店」から「田中貴金属工業株式会社」に社名変更した1943年当時に使用していた同社看板と共に。

貴金属という素材には無限の可能性があり、電気接点、電子材料、触媒、温度制御、接合材料、医療用、装飾用等、極めて幅広い領域の製品になくてはならない存在となっています。広い視野で貴金属の新しい役割を掘り起こしていけることは、当社ならではの仕事の醍醐味です。サステナブルで材料特性に優れ、自分の仕事を通じて社会に貢献する手応えも得られると思います。

また、配属部門に関わりなく積極性のある若手にはどんどん仕事を任せるカルチャーがあるので、本人のやる気次第で自分の可能性を広げられる職場環境があります。組織が巨大過ぎないこともあって上司や経営陣との距離が近く、大家族的な温かい人間関係を大切にする独特の風土があります。例えば、社員のお子さんが就学年齢を迎えると、会社からランドセルを贈っています。また、全ての社員に勤続25年、35年、定年を記念して金杯を贈る等、福利厚生面の制度運用にも貴金属を扱う企業ならではの慣行があります。

当社に関心を持って下さった方々と面接でお会いするのを楽しみにしています。

本日はお忙しい中、長時間にわたりご協力頂き、ありがとうございました。

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TANAKAホールディングス株式会社
創業
1885年
設立
2010年
資本金
5億円
売上高
1兆4,256億円(グループ連結)
所在地
 東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビルディング
    
従業員数
5,193名(グループ連結)
代表取締役社長執行役員
田中 浩一朗
主な事業内容
田中貴金属グループの中心となる持株会社として、グループの戦略的かつ効率的な運営とグループ各社への経営指導
※この記事の内容は取材当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、役職名等は現在と異なる場合があります。
職業紹介優良事業者認定マーク
当社は、全国に約20,000事業所ある人材紹介会社の中で、厚生労働省が審査し、 わずか39社しか選ばれない「職業紹介優良事業者」に認定されています。
※平成26年(第一回認定):全国で27社のみ、平成30年:全国で43社のみ(第二回認定)、令和2年:全国で39社のみ(第三回認定)
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