企業インタビュー

株式会社三菱UFJ銀行 企業インタビュー

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日本最大級の顧客基盤を持つメガバンクとして、ビッグデータを活用したマーケティングをマルチチャネルで展開すると共に、ブロックチェーンやAI等の新技術を活用した先駆的なサービスを次々に提供する株式会社三菱UFJ銀行。
今回は、同行の執行役員でありシステム本部長とCISO(情報セキュリティ管理最高責任者)を兼務なさる亀田 浩樹氏にインタビュー。同行におけるシステム本部の役割から、金融サービスや、インフラのクラウド化を有効に組み合わせたシステム戦略、情報セキュリティ体制の強化に向けた取り組み等を中心にお話を伺いました。
また、後半ではシステム本部 システム開発運用部 戦略情報グループ 次長の大村 博昭氏と、同部の業務基盤グループ 次長の森井 克典氏による対談を掲載。自らもキャリア入行され、現在はシステム開発の現場をマネジメントするお二人に、情報系及び基盤系グループの役割と開発プロジェクトの特徴、社会的影響力の大きいシステムを担う仕事のやりがい、キャリア採用の人材に求める経験やスキル等について、率直な思いを語って頂きました。(掲載開始日:2019年1月28日)

まず初めに、貴行におけるシステム本部の役割についてご説明頂けますでしょうか。


執行役員 システム本部長 兼 CISO 亀田 浩樹氏

システム本部は、(株)三菱UFJ銀行のあらゆるサービスや業務を支えるシステムを企画・開発し、安定的に運用、また現場からの要望を踏まえて改善していく役割を担っています。部門としてのミッションは、いかに早く、安く、質の良いシステムを提供するかということに集約されます。

行内のシステムに関する全てを担当するということは、(株)三菱UFJ銀行における唯一のシステムソリューションのプロバイダーであるということです。従って業務に甘えは許されず、コストの最小化は勿論、システムのユーザーである銀行のお客さまや行員のことを常に考え、どうしたら最速でベストなソリューションを提供できるのか、我々はストイックに考えなければならないのです。

メガバンクである貴行では、メインフレームから分散系、クラウドまで、極めて多様なシステムが稼働しておられると推察致します。それら全ての開発及び運用を手掛ける上で、現在どのような課題を感じておられますか。

システム本部が設立された当初は、「自分たちの頭と手を動かしてものを作る」ことが、部門の提供価値であるという意識で仕事をしていました。
ところが銀行のシステム規模の巨大化に伴い、行内のメンバーだけでは対応し切れなくなってきました。

そこで、銀行にとって重要なシステムは引き続き行内で一貫して開発を行い、周辺のシステムは行内で基本設計までは行うものの、それ以降の工程は外部のパートナー企業に委託する方向にシフトしました。
すると、内製開発のシステムとパートナー企業に開発委託したシステムとで、稼働後に何らかの障害が発生した際の対応スピードに差が出るという問題点が浮上しました。
つまり、詳細設計やプログラミングの工程を外部のパートナー企業に委託したシステムについては、自分たちで手を動かして設計していないため、パートナー企業に障害の原因等を確認する必要があります。その分、トラブル対応に時間が掛かってしまうという訳です。
これでは「より早く、安く、質の良いシステムを提供する」というミッションが果たせないと反省し、“ものづくり” への原点回帰を図りました。

現在、システム本部では、預金や決済、ダイレクトバンキング等、社会インフラであるメガバンクとして重要なシステムはできる限り自分たちで開発する、或いはプログラミングはしなくても、少なくとも詳細設計やシステム仕様書の作成までは自分たちで実施することで、「内製」というスタンスを取り戻そうとしています。

社会ニーズの変化に合わせて、新しいサービスをスピーディーに提供することが求められる今、内製に拘ることにデメリットはありませんか。


今後の(株)三菱UFJ銀行のシステム開発は、時代の変化にフレキシブルに対応していく。
(日本銀行の公表資料 2018年「MUFGにおけるクラウドへの取組み」より引用)


世の中のニーズの多様化でソリューションのあり方が日々変わっていく今の時代には、従来のやり方に固執することなくシステム本部の存在意義を見つめ直し、新たな付加価値の提供を目指していくことが重要になります。

 

例えば、アプリケーション開発では、既存のパッケージやツールを適宜組み合わせていく戦略が大切になります。一方、システム基盤については、自前で構築するだけではなく、戦略的にパブリッククラウド等を活用することで、開発時間の短縮や災害時の事業継続性の向上を図る視点が重要な意味を持ちます。

開発手法も、従来のウォーターフォール型(※1)だけではなく、アジャイル開発(※2)は勿論、開発と運用が連携したDevOps(※3)等を採り入れていく必要があるでしょう。

 

システムの重要度に応じて内製開発とパッケージ導入を使い分ける等、いかにして最適なソリューションを提供するかが、システム本部の今後の戦略の柱になると考えています。

※1:システムの開発プロセスを「要件定義」~「テスト」の各工程に区切り、当初の要求仕様に忠実に製品開発を行う方法。
※2:システム開発プロセスそのものを比較的短期間に何度も回すことにより、製品の完成度を高める手法。当初の要求仕様通りにならない可能性がある反面、開発期間中の変化には柔軟に対応が可能。
※3:開発部門(Development)と運用部門(Operations)が協力・連携することで、開発を迅速に進める仕組み。

貴行はデジタル通貨「MUFGコイン」等、新技術を用いた新規サービス創出を積極的に推進されていますが、これらの新規サービスについてもシステム本部が開発を担われるのでしょうか。

FinTechを駆使した新規サービスの創出については、当行のデジタル企画部という部署がメインに担当しています。
また、2017年10月に、行内の組織であったイノベーション・ラボをスピン・オフさせ設立されたJapan Digital Design(株)は、ブロックチェーンやAIを始めとする新技術の応用研究に取り組んでいます。システム本部では、この組織が蓄積する最新の知見も活かして、デジタル企画部とも連携し、新技術をいかに活用して新規サービスとして実現させるかを検証しています。

プロジェクトが進み、新規サービスの提供を具体的に検討するフェーズに入れば、システム安定性の担保やセキュリティ体制構築等のノウハウが強く求められます。その後は、システム本部が主導してプロジェクトをコントロールしていくことになります。

内製のシステムとクラウドを活用したシステムがハイブリッド化する環境にあって、貴行における情報セキュリティ体制の強化は非常に重要なテーマになるのではないでしょうか。

2018年9月、私はグループCISO(Chief Information Security Officer:情報セキュリティ管理最高責任者)に任命されました。今や当行の全てのサービス・システムがセキュリティ抜きでは語れなくなっている中で、職責の重大さを感じています。

 

グループCISOである私とグループのDeputy CISO(副責任者)の4名(グループのサイバーセキュリティ推進室長、三菱UFJモルガン・スタンレー証券(株)のCISO、三菱UFJ信託銀行(株)のCISO、MUFG Union Bank, N.A.(ユニオンバンク)のCISO)でMUFGグループを横断してグローバルCISOチームを編成しています。極めて早いスピードで進化するサイバー攻撃に対応すべく、情報セキュリティを強化する体制を整えています。

 

組織的には、MUFGグループのサイバーセキュリティ推進室を日本と米国の拠点に置き、グローバル合計600名体制で、世界各国で稼働中のシステムの情報セキュリティ強化に取り組んでいます。情報セキュリティの監視を担う「セキュリティ・オペレーションセンター」を日米2拠点で運用、想定される様々なサイバー攻撃に対する予防及び実際に攻撃を受けた際の対応を担う組織「サイバー・インテリジェンス・コマンド・アンド・コントロール・センター」を統合してMUFGのグループ・グローバル態勢を整備します。「MUFG・サイバー・セキュリティ・フュージョン・センター(※4)という組織で、2019年に新たに発足させる計画です。

この組織では、情報セキュリティに関する最新の評価ツールや実効性の高いソリューションを採り入れる努力を重ねながら、MUFGグループ全体でグローバルに連携して情報を共有し、万一何らかのインシデントが発生した際には、このセンターで迅速、且つ的確に対応していく考えです。

※4:正式名称は “MUFG-CSFC(Cyber Security Fusion Center)”

MUFGの組織体制(左)、及び(株)三菱UFJ銀行のシステム本部体制(右)
(アジャイルジャパン2018のセッション資料「三菱UFJ銀行におけるアジャイルの取り組み ~これまで、今、これから~ 」より引用)


貴行の将来を見据えた情報セキュリティ戦略の方向性を教えて下さい。

幸いなことに当行では、過去に重大な情報漏洩等のインシデントは発生していません。しかし、グローバルなネットワーク上で動く多種多様なシステムのセキュリティ強化や権限管理の徹底等については、引き続き一定の予算と時間を投下しながら段階的に推進していく必要があります。

それと並行して、これから情報セキュリティ領域で優先度の高いイシューの1つは、クラウドやAPIの利用に伴う外部サービスとの接続におけるセキュリティ対策です。もう1つは、グローバルベースで見て内部からのサイバー攻撃や犯罪をどのように防いでいくのか。この2点に集約されるであろうと考えています。

こうしたセキュリティを担保するために、既に数多くのパッケージやツールが世の中にリリースされていますが、どれがMUFGグループに最も適しているかを見極めるため、様々な実証実験を重ねています。現場で一つずつPDCAを回しながら、長い目で見てどのような工程でグループ全体の情報セキュリティを強化していくのがベストであるのかを導き出し、より具体的な戦略を立案、最適かつ実効性のあるソリューションを導入していく考えです。

システム開発経験を持つ中堅メンバーにとって、貴行の情報セキュリティに携わるキャリアには、どのような魅力があるとお考えですか。


「当行で経験を積むことで、セキュリティ関連の最新技術に精通し、セキュリティマネジメントの実践的な知見を有するグローバル人材として成長していく実感を得られると思います。」

今後はあらゆるシステムや業務の中で、セキュリティ対策を強化していく必要があります。一般的な事業会社と比較しても非常に厳格なセキュリティ体制が求められるメガバンクである当行で、様々な部門の業務を深く理解しながら経験を積むことで、結果としてより高いレベルのスキルを身に付けることができると思います。

 

加えて、これから活用が広がるオープンAPI(※5)、或いはデジタル通貨「MUFGコイン」、マルチペイメントネットワーク(※6)等、外部のパートナーと共に価値を創造するビジネスの広がりも非常に大きく、更に言えば、先述の「グローバル・サイバー・セキュリティ・フュージョン・センター」で、世界でも最先端のサイバーセキュリティに関するソリューション事例に触れ、技術を学ぶことも可能になるでしょう。

※5:金融機関が非金融機関とのイノベーションを推進させるため、事業者同士の安全なデータ連携手段を提供する仕組み。
※6:多くの金融機関と企業や公共団体、官公庁との間を結ぶネットワーク。公共料金等の各種料金をPC、携帯電話、ATM等で支払える。

亀田様はシステム部門のご経験が長いと伺っていますが、貴行においてこれまでどのようなキャリアを積み重ねてこられたのでしょうか。


「Webサービスを中心とするネットワーク社会の黎明期に、米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)への留学を経験できたことは、今の自分のITの知見の土台になっています。」

1988年、新卒で旧・三菱銀行に入行し、3年目に突然の辞令で支店営業からシステム部門へ異動になり、以来28年程システム畑を歩んできました。

大学では経済学を専攻しており、特に情報系の知見はありませんでした。ですが当時、当行では理系採用は殆どしていませんでしたから、システム部門のメンバーもほぼ文系出身者で占められていました。また、ここ20年程のテクノロジーの変化は目覚ましく、次々に新しいテクノロジーを学んで使いこなす必要があったという点では、理系であれ文系であれ、求められる継続学習の度合いは同じであっただろうと感じています。

システム部門に移ってからの約5年間は、自分の手を動かして様々なシステムの開発や企画業務に取り組みました。当時はまだInternet Explorerは世に出ていませんでしたが、電子メールの活用は進んでいましたので、いわば現代のテクノロジーの基礎が形成されていた時代でした。
ITが銀行業の未来を大きく左右するという当時の経営陣の判断により、システム部門では、1980年代後半から米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)への留学制度を設けました。私は7代目の留学生として、1995年から2年間に亘ってテクノロジーマネジメントを学ぶ機会を得ました。情報系の教育に強い米国大学への留学制度は現在も継続していて、毎年2名が米国のカーネギーメロン大学(CMU)で学んでいます。

その後、亀田様のキャリア上の転機となられた出来事や、現在の仕事に活きているとお感じになるご経験があれば教えて下さい。


三菱UFJ銀行本店(東京都 千代田区 丸の内)

大きな転機は、やはり統合を経験したことですね。

※旧・三菱銀行と旧・東京銀行が1つになって旧・東京三菱銀行になり、更に旧・UFJ銀行と合併して旧・三菱東京UFJ銀行(2018年4月に(株)三菱UFJ銀行に商号変更)が誕生した。

これらの合併に伴う大規模なシステム統合を経験したことは、システム担当として学ぶことが非常に多く、貴重な経験になりました。

直近では、2013年にタイのアユタヤ銀行をグループに迎えているのですが、タイには、国内で同じ企業グループの金融機関が別々のブランドでビジネスを展開してはいけない “One Bank Policy” というルールがあります。そのため、当時の旧・三菱東京UFJ銀行のバンコク支店をアユタヤ銀行の一支店にするためのシステム統合を進める必要がありました。

異なる国の、異なる企業文化の中で発展してきた2つの銀行のシステム統合には、大変苦戦しました。開発プロジェクトの進め方は勿論、用語1つにしてもサービスに対する考え方にしても、両者間の意識に大きなギャップがあったためです。
このような困難な局面も、過去のシステム統合の経験を通じて得た様々な知見を応用することで乗り切り、旧・三菱東京UFJ銀行のバンコク支店は、2015年1月からアユタヤ銀行の一支店として営業を始めました。

現在のCISOとしての職務につきましては、繰り返しになりますが、重責であることを痛感しています。過去にシステム企画に携わっていた頃、情報セキュリティ上のインシデント対応を責任者として任されていた経験はありますが、ここ数年、サイバーセキュリティ領域の変化は著しく、新しい状況を常に把握しなければならない難しさを感じながら日々業務に取り組んでいます。

最後に、貴行を志望する方や、潜在的な候補者へメッセージをお願い致します。

システムの仕事には、固有の面白さが2つあると思っています。

1つは、多くの方々と “ものづくり” をすること。システム開発は決して1人では成し得ません。行内各部門のユーザーや開発チームのメンバー、外部のパートナー企業の技術者たちと苦楽を共にして作り上げたシステムが稼働し続ける喜びは、やはり大きなものです。

もう1つの面白さは、絶えず新しい分野・技術にチャレンジできる仕事であるということ。例えばFinTechを駆使した新規サービスに携わるのであれば、今まで存在しなかったサービスが自分の目の前で形作られていきます。挑戦することで、新たな技術を自らの知見として吸収し、システム担当としてステップアップしている実感を得ることができます。

システム本部という組織全体を見る立場の人間としては、必ずしもメンバー全員にプロジェクトマネジメントに習熟してほしいと思っている訳ではありません。特定分野のシステムについて誰よりも精通しているような尖った方や、市場系のシステムでどのような数理モデルが使われているかまで知り尽くしている方、セキュリティ領域のプロダクツなら右に出る者はいない方等、多様な人材が活躍できる場があります。

勿論、そのような方々をトータルにマネジメントできる人材に育成することは重要ですので、「ITアカデミー」を創設し、システム本部独自で研修も行っています。 多様性に富む人材が集まり競い合ってこそ、システム本部が志向する「内製化」や「ソリューションプロバイダー」といった視点で、より強い競争力を有する組織に成長することができると考えています。

亀田様、ありがとうございました。

続いて、システム本部 システム開発運用部 戦略情報グループ次長の大村 博昭様と業務基盤グループ次長の森井 克典様にお話を伺います。
初めに、貴行におけるシステム開発運用部の役割について、お2人がそれぞれのグループで担当なさっている業務の視点からご説明頂けますか。


システム本部 システム開発運用部
戦略情報グループ 次長 大村 博昭氏

大村氏:システム本部には、部門の企画・管理やシステムへの投資計画の立案等を担うシステム企画部と、実際に一つひとつのシステムの開発と運用、改善に関わるシステム開発運用部があり、それぞれ300名程の陣容となっています。私は、銀行の中で「情報系」と言われる業務システムの開発を担当する戦略情報グループに所属しています。

森井氏:大村さんのグループが開発する業務アプリケーションのインフラ部分、サーバやネットワークを構築してアプリケーションを動かす環境を整える、いわゆる「基盤系(インフラ)」が私の担当です。
インフラ担当は、行内システムの形態によってホスト基盤、分散基盤、業務基盤を担当するグループに分かれ、その中で私は業務基盤グループに所属しています。

大村氏:情報系のシステムは非常に幅広く、CRM(顧客管理)やマーケティング等、行内のバンカーがお客さまとの接点で活用するシステムから、各種の計数管理等のバックオフィス業務を支援するシステムまで、様々な銀行業務のアプリケーションを開発します。

例えば、過去には「タブレット端末を有効活用した営業活動の展開」という方針に沿って、それぞれの部門の業務に即したアプリケーションを開発しました。
具体的には、新しい生命保険の提案から約定までのプロセスに使うツール、新しい投資信託の提案・約定を支援するツール等、注力商品ごとに開発プロジェクトを進めました。

森井氏:業務基盤を担当する私たちは、情報系のシステムだけではなく、トレーディングや決済等を扱う市場系のシステム、ダイレクトバンキング等のチャネル系のシステム、海外拠点のシステム等、多岐にわたるシステムの基盤を構築・運用しています。

インフラ担当の基本的なミッションは全てのシステムを高品質で安定的に稼働させることですので、それぞれのシステムがどのくらい使われているかをしっかり見極め、トラフィックが集中してもシステムが止まらない処理能力を確保しています。また、万一ハードウェアが故障した際にもデータが守られる仕組みを担保しつつ、大規模災害の発生時にも問題なくサービスを継続できる環境を整えています。

メガバンクの情報系システムの開発プロジェクトとして、代表的な事例にはどのようなものがありますか。


システム本部 システム開発運用部
業務基盤グループ 次長 森井 克典氏

大村氏:膨大な顧客基盤を持つメガバンクならではの業務システムの1つに、ビッグデータを活用したマーケティングツールがあります。それは、お客さまの一人ひとりの過去の行動分析から、成約に至る可能性の高い商品をピックアップして紹介するレコメンドシステムです。

 

このシステムの優れている点は、蓄積するデータの多様性です。年齢はシニアから小学生までと幅広く、職業や取引履歴等、極めて多様な属性かつ膨大な数の母集団から時系列のデータを豊富に蓄積しています。

店頭のテラーやコールセンターのオペレータとの会話、DMに対する返信の有無、ダイレクトバンキングのWebサイト上での行動履歴等、蓄積されるビッグデータの解析をベースに、様々なパターンで商品の提案シナリオを作成しているのです。

 

元々当行には、「ビッグデータ」という言葉が一般化する以前から、膨大な顧客データを蓄積・解析してマーケティングに活かす試みを繰り返してきた歴史があります。高精度に作り込まれた提案シナリオに基づく営業支援ツールは、まさにメガバンクならではの特別な資産だと思っています。

 

この営業支援ツールは今から7年程前に運用をスタートし、現場でPDCAを回しながら改善を重ねています。新しい商品が出る度に、「どのような方に」「どのようなチャネルを通じて」「どのようにお勧めすると成約率が高くなる」といったシナリオ設計に基づく営業支援ツールとして進化し、全国で活用されています。

 

森井氏:インフラ構築の観点から言うと、これまではビッグデータを処理するためのデータ分析機能等を持ったデータベース管理システムを従来のオンプレミス(※7)で管理していました。

 

今後は、クラウドの活用を視野に入れ、システム基盤の構築に掛かるコストと時間を削減する目的で、AWS(Amazon Web Services)に移行する方針を打ち出しています。

米国ではクラウド環境自体も新しいサービスが次々に出ていますので、最新情報を集めながら、いかに効率よくクラウドを使っていくのか、戦略的に考えなければならないと感じています。

 

また、インフラ構築と密接に関わる当行のシステム戦略として、AIやブロックチェーン技術を使った新規サービスの創出に向けた取り組みが同時並行で進んでいます。私たちインフラグループでも、これら新技術を使った事業が本格的なサービス提供フェーズに入る段階に備え、新たな知識を習得しながらシステム基盤の構築戦略を練っているところです。

※7:サーバやネットワーク等の設備を自社内で管理すること。

SI企業等でシステム開発に携わっている人材にとって、貴行のシステム開発運用部での業務にはどのような魅力があるとお考えですか。

大村氏:私自身が当行に転職する際に最も重視したのが、「自分の会社のシステムを作りたい」という思いでした。前職の金融機関のシステム子会社では、受領した要件定義から、設計書の作成、コーディング、テスト、リリースまでシステム開発の全工程を1人で担当していました。

銀行では、全国の営業店でお客さまに接したり、靴底をすり減らしてお客さまを訪問するバンカーの仕事こそが本業です。銀行のシステム部門には、本業である様々な金融ビジネスを支えるために、妥協なくシステムを作り込める環境があります。

それに対して、「クライアントのシステムを作る」ことを本業とするSI企業では、コスト等を考えて、自社が利益を出せるようにプロジェクトを回す必要があります。システムを使うユーザーが本当に必要としている機能、現場のニーズにぴったり合ったものを作り込めるかというと、ある程度はどうしても妥協せざるを得ません。

自分たちの仕事によって、会社の仲間に日々の業務の中で利便性を感じてもらえて、役に立てること。この部分がシステム開発一筋でキャリアを積んできた人間としては、何よりも大きな魅力ですね。

森井氏:私の場合、前職では生命保険会社のシステムを7年程担当し、それなりに自信もついてきたので、日本を代表する金融機関で自分の力を試してみたいと思い、当行に転職しました。ベンダー側ではなく、自社のシステムを自分たちの手で作りたいという思いは、大村さんと通じるものがありました。

メガバンクの総合職ならではの視野の広がりや、仕事の醍醐味について教えて下さい。

森井氏:今当行では、クラウドやブロックチェーン、AI等、新技術を使ったサービスの事業化への取り組みに積極的で、システム環境は大きく変わっていく変革期にあります。そのため、自分が新たに取り組んでいることが新規サービスの創出に貢献しているという実感を得られるのではないかと思います。
一方で堅固に作り上げてきた銀行ならではのシステムのレガシーから学ぶこともあります。

大村氏:一方で、責任も感じています。今、私たちの社会を支える重要なシステムは、各業界にありますが、銀行のシステムはその代表格です。
私たちは、現場のニーズに対してスピード感を持って高品質なシステムを提供し、トラブルなく安定的に稼働させていかなければならない重大な責任を担っているのです。

森井氏:ずっとシステムの基盤を担当していますので、私の場合はシステムをしっかり支えて安定的に稼働させるところに、縁の下の力持ち的なやりがいと喜び、そして誇りを感じています。インフラグループには、「自分たちがこのグローバルな金融機関のシステムを支えるんだ」といったプロ意識を持ったメンバーが多いと思います。

システム開発運用部では、キャリア採用の人材にどのような経験やスキルを求めておられますか。


「インフラグループには、幅広い業界の出身者が多数キャリア入行しています。」

大村氏:金融システムや大規模プロジェクトの経験は問いませんので、システム開発の全工程を一気通貫で手掛けたことのある方が、当行の業務アプリケーションエンジニアとしてフィットすると思います。

森井氏:インフラ系の技術は、市場系、情報系、チャネル系等、どの領域のシステムであってもベースとなるスキルはある程度共通です。特に、外部のパートナー企業に開発委託する部分について、表面的なプロジェクト管理ではなく、開発の中身を深く理解して業務に携わった経験があるかどうかが重要になります。
キャリア採用の場合は、これまでに何らかのシステム基盤を開発・運用した経験者を想定していますから、一定のスキルが身に付いている人材であれば、金融機関未経験であっても、当行の幅広いシステム基盤を担当される中で、これまでの経験を活かし、活躍して頂けると思います。

開発・運用経験5年未満の人材については、できるだけ自分で手を動かす機会と、旬のテーマごとに座学で学ぶ機会を提供しています。例えば、「サーバ構築」といった個別のテーマを与え、自主的に課題に取り組んでもらっています。
また、部門のメンバーが講師として主導する勉強会も開催しています。勉強会に生徒として参加した方に、1~2年後の勉強会では講師を務めてもらう等、役割をステップアップさせ、組織全体の技術力の底上げを図っています。

大村氏:戦略情報グループが特に重視するのは、まず見積ができるということ。具体的には、外部パートナー企業に開発委託した見積を見て、実際の作業内容に踏み込んで意見を言えるかどうか。「ここはこのように工夫すれば、もう少し安くできるのではないか」といった改善に繋がる指摘ができる方が望ましいです。

次に、自分でしっかり基本設計をしたことのある方。開発プロジェクトは基本設計の段階で品質を担保することが重要です。基本設計書の内容に対して、「この部分はこの粒度では問題が発生しますよ」といった具体的な改善指示ができなければいけません。その後のテスト段階になって初めて、システムの弱い部分が分かるようでは遅すぎるのです。
自分自身で見積、基本設計、詳細設計、コーディング、テストまで一貫して担当した経験がある方は、システムの品質を高める上で、早いタイミングで実効性のある意見を出せると思います。

森井氏:スキルに加えて、エンジニアとしてのコミュニケーション力も重要ですね。当行のプロジェクトは大規模なものが多く、システム本部のメンバーは勿論、行内各部門のユーザー、外部のパートナー企業等、情報交換や調整を行う関係者が大変多いです。
最適なシステムを構築していくためには、自分がやろうとしていることを、立場や技術の理解度が異なる相手に対して、きちんと伝わるように説明する必要があります。

大村氏:ユーザーの要件定義が曖昧だと、人によって解釈が異なり、自分なりに行間を読んだ解釈でシステムを作ってしまい、後になって「そういう意図ではなかった」という問題が起こりがちです。その点、“ものづくり” に拘る方は、業務内容1つにも細部まで気を配ります。コミュニケーションの中で「ここはどういう意味なのか」と、重ね重ね確認することが、社会インフラであるメガバンクのシステムに関わる私たちには求められていると思います。

大村様と森井様はキャリア採用でのご入行と伺いました。これまでどのようなキャリアステップを経て、現在の職位に昇進されたのでしょうか。


「システム開発部門における次長の仕事は、プロジェクト推進、人材育成を含むグループの運営、面接や評定等の人事業務の大きく3つです。つまり、ものづくりの現場に深く関わりながら、マネジメントとして組織づくりにも取り組めるやりがいと面白さがあります。」

大村氏:1998年に、旧・東京三菱銀行初のキャリア採用者として入行後、一貫して情報系の業務アプリケーション開発に携わってきました。

幸運だったのは、入行してすぐに、全行の業務を横断した「リスク管理システム開発」という大規模なプロジェクトに参加する機会を得たことです。このビッグプロジェクトの過程で、市場系のトレーディングシステムや営業店の顧客管理システム、勘定系のレガシーなシステムまで、ありとあらゆる行内のシステムからデータを集める必要があり、当行システムのほぼ全てのラインアップを知ることができました。
加えて、それぞれのシステムのユーザーである各部門の担当者と一気に知り合うことで、転職後程なくして行内の人的ネットワークを形成できたことも、大きなプラスになりました。

また、銀行業務と紐付く形でシステムの今日的な課題がよく分かることは、システム開発運用部だからこそ得られる視野の広がりであると思います。
リテール部門、法人部門等の各部門は、何をやろうとしているのか、どんな課題を抱えているのか、或いは他行含め金融業界全体でどのようなことに取り組んでいるのか。単にシステム開発だけではなく、広い視野を持って業界全体のトレンドを理解しようとするスタンスが身に付いたと思っています。

森井氏:私は2001年にキャリア入行し、基盤系一筋でキャリアを積み重ねてきました。最初の5年間はWindowsを中心としたOA環境(メールやスケジュール管理等)の行内グループウェアの基盤を担当しました。

その後、旧・東京三菱銀行と旧・UFJ銀行の合併に伴い、基盤系の大掛かりなシステム統合「Day1」の全体推進を任されました。
このシステム統合では、単体のシステムではなく、行内コミュニケーションに関わるOA系システム全体の統合推進経験を通じて、スキルアップすることができたと感じています。

システム統合を無事完了させた後は、市場系システムの基盤構築や、大村さんのグループと連携して情報系の業務アプリケーションのシステム基盤構築等を担当しました。
現在は、次長として幅広く業務系のシステム基盤全体を見ています。

最後に、貴行を志望する方や、潜在的な候補者へメッセージをお願い致します。


システム本部の拠点があるJPタワー16階受付前にて(‎東京都 千代田区 丸の内:同行本店の北側に隣接)


大村氏:当行に来て最初に驚いたことは、システムの要件を詰めていく段階で接する各部門の担当者が、皆一流の業務知識を持っていることでした。そのようなメンバーと日々接しながら情報交換できる環境は当行ならではだと思いますし、業務アプリケーションを開発するエンジニアとしても、ビジネスパーソンとしても、学ぶ点が多いと思っています。

森井氏:確かに、前職で「こんなに優秀な方がいるのか」と思って付き合っていた現場の方と同じレベルの人材が当行にはたくさんいました(笑)。とにかく優秀な人材が豊富だなぁというのが、転職後の第一印象でしたね。

複数の銀行が経営統合された歴史の中で、キャリア採用もプロパーもない環境になったと強く感じています。出身銀行の異なる人材同士で組織が構成されていますから、歴史ある金融機関でありながらキャリア入行の方に対して特別視するようなことは全くありません。
異業界出身の方々は、メガバンクとはどんな職場なのかと緊張されるかもしれませんが、人材を迎える側としては出身業界を全く気にしていません。本人にその意思があれば、すぐに組織に溶け込み、経験を活かして仕事に取り組んで頂ける環境だと思っています。

本日はお忙しい中、長時間に亘りご協力頂き、ありがとうございました。

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株式会社三菱UFJ銀行
設立日
1919年(大正8年) 8月 15日
資本金
1兆 7,119億円
従業員数
33,524名(単体)
本店所在地
東京都 千代田区 丸の内 二丁目 7番 1号
取締役頭取執行役員
三毛 兼承
事業内容
金融業及びその他付帯業務
※この記事の内容は取材当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、役職名等は現在と異なる場合があります。
職業紹介優良事業者認定マーク
当社は、全国に約28,000事業所ある人材紹介会社の中で、厚生労働省が審査し、 わずか40社しか選ばれない「職業紹介優良事業者」に認定されています。
※平成26年(第一回認定):全国で27社のみ、平成30年:全国で43社のみ(第二回認定)、令和2年:全国で39社のみ(第三回認定)、令和5年:全国で40社のみ(第四回認定)
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