企業インタビュー

芙蓉総合リース株式会社 企業インタビュー

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リース黎明期である1969年(昭和44年)5月に、富士銀行(現みずほ銀行)や丸紅といった芙蓉グループ6社が中心となり設立された芙蓉総合リース株式会社。日本の高度成長と軌を一に成長し、シャープグループの金融子会社のグループ化等により業容を拡大しています。そんな中、2017年4月からスタートした中期経営計画で『航空機リース事業』を戦略分野の一つと位置付け、集中的に経営資源を投入しています。
今回は航空機・ストラクチャードリース部門 開発営業部長の白石 昌幸氏と同部次長の河地 俊英氏にインタビュー。日本初の航空機リースを始めとする数々の象徴的なプロジェクトを手がけられた実績、機体のライフサイクル全体を踏まえて順次リースを組成できる強み、世界を舞台に航空機リース事業に携わるやりがい、若手の成長を促すOJTスタイル等についてお話し頂きました。(掲載開始日:2018年12月10日)

まず初めに、貴社の航空機リース事業の歩みについて、ビジネス上のターニングポイントとなった案件等を中心にご説明頂けますでしょうか。


航空機・ストラクチャードリース部門
開発営業部長
白石 昌幸氏

白石氏:1978年に「サムライ・リース」と呼ばれる日本の航空機リースの第一号となるシンジケーション案件が組成されましたが、弊社はこの案件に参加しました。更に1985年には、日本初の航空機レバレッジド・リース案件(JLL:Japanese Leveraged Lease)の組成にも参加しています。

航空機レバレッジド・リースとは、国内の投資家から集めた資金(約30%)と銀行からのローン借入(約70%)によってリース会社が航空機を購入し、航空会社へリースするという金融スキームです。ローンを利用することで一定の資金で巨額の航空機を購入できる「梃子(てこ)の作用=レバレッジ」としての仕組みを意味しています。投資家からすれば、少ない投資額で航空機リース事業に参画し当該事業損益を享受できる(利益繰り延べ効果等)魅力的な投資商品になります。日本の航空機リースは、1985年から10年以上に亘ってこのJLLを中心に栄えた歴史を持っています。

河地氏:ところがその後、1998年の税制改正でレバレッジド・リースの取り扱いを縮小せざるを得ない状況になりました。弊社はそれまでのレバレッジド・リースの組成で培ったノウハウを活かし、投資家の資金を活用する形で新たに航空機オペレーティングリース組成への取り組みをスタートしました。そして翌1999年から、日本の投資家に向けて航空機オペレーティングリース(JOL:Japanese Operating Lease)案件のアレンジを開始しています。

現在では、スキームやリスクの所在等も若干変化し、JOLCO(Japanese Operating Lease with Call Option)と呼ばれるタイプのプロダクトに進化しています。

白石氏:2011年からは、もう一つの航空機リースビジネスとして、投資家から資金を集めることなく弊社が機体を自社保有するオペレーティングリース事業を開始したこともビジネス上の大きなターニングポイントです。オペレーティングリースは、リース期間のみ航空機の使用権が航空会社に譲渡されるスキームですので、期間終了時に機体は弊社へ返還されます。弊社はその航空機の経済耐用年数の範囲内で機体を別の航空会社に売却したり、2次・3次リースをすることで資金を回収し、利益を確保できます。

更に2014年には航空機の機体の管理・売却の専門会社である英国Aircraft Leasing Management社(以下ALM社)を買収しました。弊社とALM社の知見を融合することで、従来の強みであるリースの組成・提案力に加えて、リース期間中の機体の資産価値の維持管理から、リース満了後のリマーケティングに至る、航空機のライフサイクルを一気通貫でマネジメントできる体制を強化しました。

現在、世界の航空会社においてオペレーティングリースを活用した機材調達の需要が拡大している理由を教えて下さい。


航空機・ストラクチャードリース部門
開発営業部 次長
河地 俊英氏

河地氏:航空会社はリース満了時に機体をリース会社へ返却できますので、景気の波、旅客需要の波に合わせて、フリート(航空会社の機体構成)を柔軟にコントロールできるメリットがあります。期間満了時に旅客需要が減退していれば機体を返してフリートを削減し、逆に旅客需要が拡大していればリース期間を延長ないし、機体を購入し、フリートに余裕を持たせるといった対応が可能です。

また、航空機はハイテク製品であり、5年、10年といったスパンで見ると、技術の進歩による性能向上が生じます。航空会社が自社で航空機を購入した場合、多額の設備投資資金を要しますので、その投資回収のためにはある程度長い期間、航空機を使用する必要があります。これに対して戦略的にリースを活用すれば、最新鋭機への切り替えが容易になります。最新鋭機は人気が高く集客が見込めるという側面に加えて、逐次燃費性能も向上しているので、航空会社のコストにおいて重い負担となる燃料費を削減する上でも大きなメリットがあります。

白石氏:今、世界中の航空会社で運航されている航空機の40%強がオペレーティングリースで調達された機体です。大手航空会社でも、将来のフリートの入替えに対して柔軟性を確保する目的で、一定程度をオペレーティングリースで調達しています。一方で創業間もないLCC(ローコストキャリア:Low Cost Carrier)等の中には、全機をオペレーティングリースで調達している企業もあります。航空機は1機数十億円から100億円超と非常に高額であり、新興の航空会社が自前で機材を調達するには極めて多額の資金が必要になり、キャッシュフローを圧迫しかねません。このため定額のリース料を支払えば複数の機体を直ちに調達できるオペレーティングリースを活用する企業が増えているのです。

1次リースの期間は徐々に長期化していますが、それでも10年ないし12年です。1次リースのリース料では元本を全額回収できませんので、2次リース、3次リース、或いは中古機体を売却する等の長期的な戦略の下、最適な形での収益確保を模索していきます。

河地氏:今後20年間で航空旅客数は現在の約1.8倍になると想定されています。これは全世界で約4万機の航空機が運航されることを意味しています。そのうちの半数程度がリース調達となると見込まれていますから、非常に有望なマーケットであると同時に、新規参入プレーヤーを含み、競合環境が激化していくことは避けられません。

世界のマーケットの需要に応え、貴社の航空機リース事業はどのような戦略で更なる成長を目指しておられるのでしょうか。

白石氏:会社として航空機リースにドライブをかけ、より本格的に推進しようと取り組みを始めたのが2011年です。2014年の1月には、河地君や私も参加してプロジェクトチームを発足させ、従来の航空機リース事業のガイドラインを刷新し、ビジネス機会の拡大にチャレンジしてきました。

対外的に発表している数値目標として、2022年の3月末までに自社保有機を70機まで増やそうという計画を立てています。この目標を達成するためには、オペレーティングリースの組成に弊社として取り組むことのできる航空会社やその所在国の範囲を、これまで以上に拡大していく必要があります。現時点での弊社の保有機体は30機超ですから、まさに道半ばであると言えます。

河地氏:従来私たちは、各国の航空会社のクレジットリスクを精査し、超優良な財務体質の企業に対してのみ航空機をリースする戦略を採ってきました。しかし、そもそもオペレーティングリースとは、機体というモノの将来価値に依拠した金融スキームです。万が一、リース期間中に航空会社の経営が傾くようなことがあっても、価値を有する機体を回収して再運用を図ることで、収益確保の途を拓くことができます。

このように発想を転換し、リース先の航空会社だけを見るのではなく、機体そのものの価値に目を向け、様々な国、様々な航空会社にとって汎用性があり、再販や再リースがしやすい機体を購入し、残存価値の維持に注力するという方針にシフトしているのです。

白石氏:航空旅客需要はその国のGDPの推移と密接に関わっており、航空機リース事業も景気の循環による影響から逃れることは難しいと言われています。コントロールできるもの、できないものを含めて、事業を取り巻くリスクファクターが非常に多く、それら全てを分析し、できる限りリスクを回避する、或いはリスクの影響を軽減する施策が求められます。

リース料をきちんとお支払い頂くために航空会社のクレジットリスクの見極めは重要ですし、機体というモノの価値が時間の経過とともに変動してしまうアセットリスクもあります。また、リース先は全世界の航空会社ですから国際取引に伴う法的リスクにも注意が必要です。航空会社に万一のことがあっても、その国の法律がしっかりしていれば、国際条約に基づいて機体を取り返すことが可能になるからです。更に、イベントリスク(紛争や戦争、伝染病の流行等)と呼ばれる不測の事態等、こちらがコントロールできないリスクもあります。

河地氏:私は航空機リース部門に異動して16年になりますが、アンコントローラブルなリスクを何度も経験しました。異動の前年には9.11のテロがあり、次にSARSの流行、イラク戦争、リーマンショック、欧州危機と、航空旅客需要にダイレクトに影響する事象ばかりを経験した印象です。特に初めの5年間は経験値も不足していましたから、とにかく「やるしかない!」と(笑)。目の前にある課題、それも当時の自分が理解できるレベルより少し上にある課題を、120%、150%の力を出して一つひとつ越えていくのは大変でしたが、振り返ればチャレンジングで有意義な経験をさせて頂いたと感じています。

航空機オペレーティングリースの標準的な提案プロセスについて教えて下さい。

河地氏:大手、中堅、LCCを含む、世界の全ての航空会社が取引対象となります。勿論、それぞれの航空会社のクレジットリスクを精査した上で、弊社として取り組めると判断したリース先を選択することになります。

航空機の購入・リースの方法は主に3つのパターンがあります。一つは、航空会社が導入する機体をリース会社が一旦購入しすぐに航空会社へリースする方法(“セール・アンド・リースバック取引”)、また既に他のリース会社が航空会社へリースしている機体をリース付きで購入する方法(“リース付機体購入”)、もう一つは、リース会社がメーカーに直接発注し機体の受領までにリース先である航空会社を探す方法(“リース会社発注購入”)があります。セール・アンド・リースバック取引の出発点では、航空会社がどのような機材を導入したいと考えているかが重要になります。そして、オペレーティングリースで一定期間後に機体を返還する形を選ばれるか、それとも自社で長期所有されるのか、まずは航空会社の機材調達計画の中である程度の方向性が決定されます。そこでオペレーティングリースが選択されれば、多くの場合は入札となり、弊社にも入札依頼が来ます。

リース付機体購入は、当該機体を保有・リースしている他リース会社が、ポートフォリオの入れ替え等の理由により機体を売却するニーズが生じた場合に案件として顕在化します。こちらも入札となるケースが多いですが、営業活動による売主とのリレーションシップ等によっては相対で引合を獲得し交渉が可能となる場合もあります。

入札依頼が来た場合には、私たちは機体を評価してリース料を算出し、将来価格を算定して経済性を算出し、入札に参加します。このプロセスでは、グループ会社の英国ALM社が蓄積するノウハウが非常に役に立っています。機体の将来価値の見方、その航空会社特有の航空機仕様が2次、3次リースする際に汎用性があるかどうかを判断し、セール・アンド・リースバックでは具体的なリース料やリース期間満了時の機体の返還条件等を提示し、リース付き機体購入では機体価格を提示します。そして折衝、交渉を重ねて合意が形成できれば、受注に至ります。

その後はドキュメンテーションと呼ばれる具体的契約内容の交渉および契約書の作成作業を経て、合意に至れば正式に契約締結、機体のデリバリー(リース開始)となります。

リース会社直接発注購入は、リース先が決まっていない中で機体を発注するため、機体受領時にリース先が見つからないという上記2つの方法とは異なるリスクも生じる一方で、メーカーにまとまった機数を直接発注することで、機体を有利な条件で購入できる可能性もあります。この方法は、現在弊社での検討分野の一つとなっています。

貴社では、航空機という資産の将来価値をどのように見極め、維持管理しておられるのでしょうか。

白石氏:全ての航空会社は旅客の安全な運航に責任があり、機体メーカーや国の定める細かい基準への適合が厳密に求められています。このため各航空会社は機体の安全性に関して、非常にしっかりとした整備を実施しています。

これに対して航空機を所有する私たちリース会社は、航空会社が実施する点検作業が適正かどうかを検証します。すなわち、実際に機体の定期視察と航空会社の点検記録のチェックを両方実施しています。

河地氏:更には、リース満了後の機体の2次リースや売却等を想定し、資産価値を保全するという観点でのインスペクション(調査・検査)も重要です。リース契約では、リース期間中の運航に関する条件や、リース終了後の機体の返還条件を定めています。インスペクションでは、当該機体の運航や整備が法令順守しているか、契約書の条件と照らして違反がないか、機体価値を損なうような装備や改修が行われていないか等をチェックしています。

つまり、オペレーティングリースには、「契約が済めばリース料さえ支払って頂ければOK」といったファイナンスの貸し手的なスタンスは全くありません。リースしている機体は万一に備えた担保としての資産であり、リース満了後には再運用する資産でもあります。経済耐用年数を通して常にきめ細かく目を配り、面倒を見ていくことが、息長く長期間継続する航空機リース事業の特色であると思います。

白石氏:英国ALM社には、こうした機体の将来価値を維持管理するノウハウを持った専門家がマーケティング部門と技術部門にそれぞれ在籍しています。2014年にALM社がグループに加わって以降、人材交流も積極的に推進しており、駐在社員とは別に、既に延べ5名の若手社員をトレイニーとして派遣しており、専門ノウハウの共有化を図っています。

航空機の資産価値を正しく算定するスキルや、将来に亘って資産価値を維持管理するノウハウを身に付けることは、貴社でキャリアを積む上で重要になりますか。


「航空機の中古市場において、現行タイプの機体と新しいタイプの機体の需要がどのタイミングで入れ替わり、現行タイプの価格がいつ下落するのか、といった見通しを経験則から把握することも、将来価値の算定スキルの精度を高める一つになります。」

河地氏:企業の競争力の根幹に繋がるスキルの一つだと思います。機体の資産価値評価は、著名な評価会社が出している評価書が教科書になりますが、こちらはあくまで基本であり出発点です。やはり経験値が重要で、その航空会社の機体固有の仕様がどのように市場価格に影響するのか、或いはその座席数の機体が歴史的にどのような価格の変遷を辿ってきたのか等を知る必要があります。

社内のノウハウを活用することは勿論、ALM社とも連携してじっくり分析し、自信を持って適正と言える将来価値を算出することが重要です。拠り所となる価格があれば、競合他社との入札になった際に、よりギリギリの線を狙った価格提示で冒険することもできるし、逆に安全策を採ることもできます。適正価格を基準として、状況に応じて多様なシナリオを選択することが可能になるのです。

ただし、航空機マーケットの需要も絶えず変動していますから、常に知識のアップデート、絶えざる研鑽が必要だと私自身感じています。未経験の中途入社の方の場合、一定の自信を持って算定できるようになるには、実際のトランザクションの経験が3年から5年は必要なのではないかと思われます。

白石氏:この数年間の修行期間を「大変だなぁ」と感じずに、むしろ面白いと思える人がこの仕事に向いています。航空機リースでは、1つとして同じトランザクションはありません。弊社は80年代以降、既に300機を超える航空機リースの組成を手がけていますが、以前に手がけた案件の繰り返し、と感じるような案件が1つもないのは不思議です。

中でも関係者とネゴシエーションしながら契約内容を詰めていくプロセスでは、決まって想定外の問題が浮上し、まるで次から次へと難しいパズルを解いていくような感覚になります。定型的な業務に飽き足らない人、一つ一つ最適なソリューションを創り上げていく仕事にモチベーションが高まる人には、経験を積むに従って面白さが増していく深みのある仕事だと思います。

貴社の航空機リース部門で働く人材は、業務にどのような魅力を感じ、やりがいを見出されておりますか。

河地氏:お客様は世界中の航空会社であり、航空機という商材を扱うため取引規模の大きな案件をコントロールすることになります。ダイナミックなグローバルビジネスを通じて、各国の法務・税務・会計、航空事業に関する制度等、幅広い専門知識が求められます。経験を蓄積していくことで自分自身の知見が向上し、キャリアアップを実感することができます。それは同時にやりがいに繋がるのではないかと思っています。

白石氏:より端的に言うと、「飽きない」ことだと思います(笑)。案件に入ると、必ず次から次へと新しい課題や問題と向き合うことになりますから。広範な専門知識が溜まっていき、プロフェッショナルとして成長できるという部分は勿論モチベーションになります。

河地氏:規模の大きな世界の同業他社では、同じ航空機リースに携わる場合でも、リーガル部門、会計部門、マーケティング部門、ドキュメンテーション部門と担当業務が細分化されているケースが多いです。弊社ではこれら全ての業務に横串を刺し、まずは自分で全工程の課題等を考え抜き、その後にプロの社外ブレーンと連携します。全てを理解し、管理していかなければならない大変さと、全てを自分の手で完結できるやりがいがあると感じています。

また、基本的に自社で機体を購入してリースする、という実物に即したビジネスを展開していますので、目に見えない金融スキームのみを扱うビジネスとは異なる、弊社ならではの面白みがあるとも感じています。

航空機リース業界で働くことを検討されている読者の参考のためにお聞きします。白石様と河地様にとって、貴社におけるこれまでのキャリアで大きな転機となった出来事についてお話し下さい。

白石氏:入社5年目に香港の現地法人に1年間トレイニーとして赴任した経験が、それまで国内営業しか知らなかった身には、想像を超えるカルチャーショックとなりました。当時の香港現地法人はまだリース事業を展開しておらず、いわば業務立ち上げを任されたような形でした。退勤後も週末も英語と国際金融や海外業務に関する勉強を続けながら、身を削るような思いで中国の広東省の工場を営業して回り、何とか結果を出すことができました。

もう一つの大きな転機に、香港から帰って配属された航空機リース部門で遭遇しました。それは90年代後半に取り組んだレバレッジド・リース案件のことで、今でも忘れられません。
ジャンボ機やワイドボディ機を20数機セットで導入するという超大型案件で、同業のリース会社5社と大手銀行3行とでシンジケート団を組んで引き受けました。当時30歳になる前でしたが、協働した他社の人たちが驚くほど優秀で、しかもその優秀な人材が毎日夜遅くまで集中して仕事をするのです。「とても太刀打ちできない」と完全に自信を喪失しました。

その後一旦ニューヨークの現地法人に赴任し、4年半ほど航空機リースから離れたのですが、もう一度チャレンジしたいという気持ちが日に日に強くなり、今の部門を希望しました。かつて自信を無くした挫折感をバネにして、起死回生を目指してがむしゃらに取り組んでみようと腹を括ったのです。

河地氏:私は入社して5年間は国内支店でリース営業に携わり、法人営業としては相当頑張ってそれなりの成績を上げました。それで次のキャリアを志向し、希望を出して航空機リース部門に異動したのです。ところが当時の私は英語が話せず、航空機リースというスキームについても実はよく分かっていませんでした。世界の航空会社に提案しようという部門に、このような人材の存在価値はありません。これではダメだと悟り、必死で努力を重ねました。

私自身も、全てが順調に運んだ成功体験より、自分では分かっていたつもりだったのに実は本質的なことを理解していないと気付かされたり、うまく行かない状況から何とか逆転勝利したり、深刻なトラブルを解決した案件のほうが、自分の中で大きな学びになっていると感じます。

仕事を進める上でプラスに作用するような、貴社ならではの社風やカルチャー等をお感じになることはありますか。


「弊社では大型案件でも若いメンバーに裁量権を与え、自分で考えさせ、チャレンジしてもらう指導を基本としています。もちろん、一緒に案件を担当する先輩は若いメンバーを全力でバックアップしますし、そうすることで知見を積みながら成長することができるのです。」

白石氏:弊社の社員は基本的に真面目で、契約書は勿論のこと、法務や税務、会計等、社外の専門家の助言を求める領域の資料についても、全て自分で目を通し、突き詰めて理解しようとする傾向があるように思います。

マネジメントに関しては、事細かく逐一指示を出すマイクロマネージャーはいません。ただし、情報共有は徹底しており、「報連相」等を頻度高く実施することで、手遅れになる前に軌道修正を計っています。

河地氏:確かにそうですね。8年ほど前に世界最大のA380型旅客機のJOLCO案件を担当した時も、世界的なフルサービスキャリアがリース先でしたが、全てを私の裁量でコントロールさせてもらえました。非常に金額が大きいタックスプロダクトでしたので、どのように投資家から資金を集めるのか、いざという時のリスクの最適化をどうするかといった課題がありました。分からないことや迷いのある局面ではその都度上司に相談しましたが、いつも黙って私の話を聞いた上で的確な選択肢を3つほど示し、「どれを選ぶかはフロントの河地が決めろ」と最終的な判断を私に委ねて下さいました。

白石氏:8年前なら河地君はすでに中堅ですが、私が2015年に入社3年目の社員と組んだ欧州キャリアのJOLCO案件でも「若手に大部分の業務を任せるスタイル」のOJTを心がけました。この案件は前例の無い新スキームの案件で、各国の法務・税務・会計といった専門知識が求められ、着手してからクロージングするまでに1年近くかかっています。その若手は案件を通じてこの仕事に必要になる広範な専門知識に気付いて自ら主体的に深く学んでいき、最終的に1人で弁護士や税理士、公認会計士といった外部ブレーンとの折衝をこなすまでに成長しました。 なお、この案件では、後日、国際的な航空機ファイナンス専門誌から表彰を受け、マイアミでの授賞式に参加してきました。

河地氏:航空機リースの世界では、自分1人で全ての業務を完結できるということはあり得ません。法務や税務等の基礎知識をベースにその道の専門家を上手くネットワークして、彼らのアドバイスを消化して実務に落とし込んでいくことが私たちのミッションになります。長年やっていると経験則が積み上がり、「この部分は気を付けなきゃいけない」といったリスクヘッジ的な発想もできるようになります。

白石氏:「ここは調べておいたほうがいい」と気付くのは案件を動かしている私たちなのです。指摘を待つ姿勢でいるのではなく、先にこちらで気付いて、「このルートであの人に確認しよう」と専門家に確認を取ることが重要。それができるかできないかが、航空機リースのプロとしての決定的な力量の差になります。

航空機リース部門では、中途採用者にどのような基本的スキルを求めておりますか。

白石氏:全世界がビジネスフィールドとなる航空機リースでは、共通言語は英語です。従ってコミュニケーションツールとしての英語力は、基礎スキルとして必要とされます。
誤解しないで頂きたいのは、いくら流暢に英語が話せても、商談の場で多様な国のカウンターパートと意味のある対話ができなければ、次から相手は会ってくれません。そのため、航空機リースのプロとして英語で交渉・提案できるスキルが重要なのです。

河地氏:とは言えリース関連のテクニカルタームを最初から理解できる能力までは求めていません。英文の契約書の内容理解も含めて、数年かけて実際の業務を通して学んで頂くことになります。単に英文を読める、書けるといった意味ではなく、文章の背景にある航空機事業やリース事業に関する知識を理解できることが重要な意味を持ちます。

白石氏:航空機リースはストラクチャード・ファイナンスとしての側面もありますから、金融・会計・税務・キャッシュフローの基礎知識が必要で、簿記3級レベル程度の知識がスタート地点になると考えています。また、それら金融的発想を計算に落とし込むためのエクセル等による表計算の基本スキルは必要になってきます。膨大な計算と契約書の作成を確実に正確に実施できる粘り強さも必要です。

河地氏:この仕事は、航空機を中心として登場人物が非常に多いのが特徴です。機体の貸出先である航空会社、売主である機体メーカー、資金調達先となる銀行や投資家、外部ブレーンとしての法律事務所、会計事務所、税理士事務所等々。これら多くの関係者との折衝・協働を円滑に行えるコミュニケーション能力や調整力も重視しています。

貴社では実際にどのようなバックグラウンドを持った人材が中途入社し、活躍されていますか。

河地氏:航空会社の整備部門で働いた経験を持つ人が入社し、英国ALM社でトレイニーとして研修を積んでいます。この方は金融や会計、税務の基礎知識は不足していましたが、当然ながら航空機に関する知識は豊富に持っていました。私たちプロパーの社員とは全く異なる業務経験で培われた新鮮な視点や発想に期待し、現在は航空機リースの仕事に必要な技術面の知識を体系的に学び、金融的な視点で機体の将来価値がどうなるかといった航空機オペレーティングリースの鍵となる知見を身に付けている段階です。

白石氏:港湾物流関係の会社から転職してきた者もいます。この人物はOJTを通じて知見を積み上げ、現在では海外拠点長を務めています。

弊社には中途入社であることが社員個人の業務内容や評価に影響することは全くなく、本人の実力次第で責任あるポストで活躍して頂くことが可能です。また今後は、総合リース業以外の金融機関出身者で、例えば法人営業や海外営業を経験されてきた人材等と面接でお話ししてみたいと考えています。

河地氏:今後の可能性として、例えば海運業界でフリート管理や用船等の業務を担当していたような方も、アセットビジネスへの親和性は高いのではないでしょうか。また、中堅商社等で自ら売上処理や経費処理、課金管理といったマルチタスクをこなしておられるような人材にも、全ての業務を自分でコントロールする弊社の航空機リース事業になじみやすいのではと思っています。

最後に、貴社を志望する方や、潜在的な候補者へメッセージをお願い致します。


「グローバルかつダイナミックな航空機リースの世界に飛び込み、切磋琢磨していける新しい仲間を待っています。」(本社受付にて)

白石氏:先程お話しした数値目標(2022年3月までに所有機を70機まで増やすこと)を実現できれば、航空機リース業界で大手と言われる世界企業と対等に競い合っていく土台となり、弊社は新たなスタートラインに立つことができると考えています。

世界の航空機リースの需要は引き続き活況であり、そこにはビジネスチャンスと厳しい競争が共存しています。前例のない成功を目指して、新しいスキーム、新しい機種、新しい航空会社の開拓に向けた取り組みを重ねる中で、弊社には様々なバックグラウンドをお持ちの人材がチャレンジできるフィールドが広がっています。

河地氏:そうした弊社の新しいチャレンジも全てチームで推進しますが、その場合、上司と中堅、そして中途採用の方の3人体制といった少数精鋭が基本となります。チームの力を上げるためには、個人に成長して頂かなければなりません。個人が成長するための手段としてチームがあると言ってもいいでしょう。全ての航空機リース案件には、相手がいて、チームの仲間がいて、困難な課題があり、課題に正面からぶつかりながら切磋琢磨していきます。その相手とは常に「世界」のプレーヤーなのです。

白石氏:グローバルビジネスも、やはり最後は「人対人」です。最終的に案件を獲得できるか、契約が成就するか否かを決めるのは、営業的な要素であり、「人間力」による部分が大きくなります。細部にとらわれ過ぎていてもいけないし、勿論おおざっぱ過ぎてもいけない。こだわって突き詰めていく部分と、「自分はこれを実現したい」という強い思いを大切にする部分、両者のバランスが重要だと感じています。
バランス感覚が重要という点と関わりがあるかもしれませんが、航空機リースは国内外で女性の活躍が目立っているビジネスであることも付け加えておきます。

知見と経験を積み重ね、多くのトランザクションに対して楽しんで取り組んでいける方とお会いできるのを楽しみにしています。

本日はお忙しい中、長時間に亘りご協力頂き、ありがとうございました。

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芙蓉総合リース株式会社
設立
1969年 5月 1日
資本金
105億3200万円
    
従業員
【連結】1,715名、【単体】689名
本社
東京都 千代田区 神田三崎町 三丁目3番23号
代表取締役社長
辻田 泰徳
事業内容
●情報関連機器、事務用機器、産業機械、工作機械、商業用店舗設備、医療機器、船舶/航空機/車両並びに輸送用機器、建築土木機械、等のリースおよび割賦販売業務
●金銭の貸付、その他各種金融業務
●不動産リース
●各種コンサルティング業務 その他
※この記事の内容は取材当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、役職名等は現在と異なる場合があります。
職業紹介優良事業者認定マーク
当社は、全国に約20,000事業所ある人材紹介会社の中で、厚生労働省が審査し、 わずか39社しか選ばれない「職業紹介優良事業者」に認定されています。
※平成26年(第一回認定):全国で27社のみ、平成30年:全国で43社のみ(第二回認定)、令和2年:全国で39社のみ(第三回認定)
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