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三和総合研究所 今月の焦点 2000年 7月号

三和総合研究所 今月の焦点 2000年 7月号
特集 就社時代の終焉

採用現場からの視点
人材紹介会社を利用するポイント

松井 隆
(株式会社エリートネットワーク 代表取締役)

近年、新規参入が相次ぐ人材紹介会社。より良い職場を求める求職者の思惑と、必要な人材を求める求人企業の意向をマッチングさせ、公共職業紹介事業にはない、新しいサービスを展開している。

人材紹介会社を利用する
日本企業は3タイプ

人材紹介業に関して、まずマーケットの現状からご説明しよう。

人材紹介会社を利用する企業の約半数が外資系企業である。欧米ではエージェントを通じて人を採用する慣行があり、その日本法人も同じ方式をとっている例が多い。現在日本には、外資系企業は数万~10万社程度と言われている。そのほとんどが人材紹介会社を通じて、中途採用を行っている。

日本企業は、大きく3つの傾向が見てとれる。

第一は、株式上場・公開企業が、社内では育成しにくい職種について、人材紹介会社を通じて採用する。たとえば国際ビジネスの経験があるといったケースである。また、化学会社がバイオテクノロジーの技術者を求めるといったように、近々新規事業を起こす予定だが、現在はまだ表に出したくないといったケースもある。

二番目は、中堅企業によく見られる例で、経営的には優良で、独自の技術や製品をもった株式非公開企業。こうした企業ではオーナー社長のリーダーシップが色濃く出るため、市場に影響を受ける株式公開を好まない傾向がある。また、知名度が低い場合が多く、優秀な人材を集めるのが難しいという状況がある。このため、必要な人材を人材紹介会社を通じて募集することになる。

第三は、株式公開予備軍ともいえる企業。ここ数年、日本でも多くのベンチャーキャピタルが設立され、コンピュータや情報関連分野でベンチャー企業の設立が活発になってきたが、こうした企業は、株式公開までは資金的に恵まれているとはいえず、人材も不足しているのが普通で、とくにマネジメント分野に人材を割く余裕がない。そのため株式公開後、主要な役員やマネジャークラスを入れ替え、経営体質を改善しようとするケースがある。中には経営陣を総入れ替えするといったドラスティックな例も散見される。また、株式公開実務の経験者は数が限られており、公開予定企業にとっては、ぜひとも必要な人材といえる。

これらの企業が採用したい人材は、20代から30代前半の若い層である。

現在活発に人を募集している企業は、伸び盛りの企業といえる。こうした企業の多くは構成年齢が低く、社長も30代後半ということが珍しくない。各部門の責任者も20代後半~30代前半となり、新規に中高年を採用した場合、上司と部下の年齢が逆転してしまう。こうした企業のマネジャーたちはきちんとしたマネジメント訓練を受けていないケースがほとんどで、部下のほうが年齢が高くなる中高年の採用を、経営陣が避けてしまうという状況がある。また、株式を公開している場合、株式市場はより平均年齢が低い企業を高く評価する傾向がある。

外資系の場合、従業員の仕事の重要度と実績に対して報酬を支払うという考え方がはっきりしているので、年齢は考慮の対象にならない。

最近では、仕事ができれば男女を問わないという企業も増えてきているため、中高年の男性にとっては、ますます受難の時代到来といえる状況になった。40歳以上の人が、現状より好条件の会社へ転職するには、知り合いのオーナー社長から声をかけてもらうか、ヘッドハンティングされるだけの能力を身につける以外に方法はないのだ。

日本でも
年収が二極分化に向かう?

今後、雇用をめぐる情勢がどのように動くかについては、アメリカの現状から見えてくる部分がある。年収別に雇用者数をみると、円換算で200万~300万円を中心にひとつのピークがあり、1500万~2000万円のところにもうひとつのピークがある。かつてはアメリカにも、日本でいう中流階級が存在したが、近年それが二極分化する傾向が強くなっている。

もともとアメリカでは、職能、役割分担、責任が明確に区分されていたが、近年ますますその傾向が強くなり、どんなに優秀でも、事務員は生涯事務員のまま終わることが当たり前になっている。逆に新卒でも、MBA(経営学修士)を取得していれば初任給が1200万円というように、年収の格差が極端に開くようになってきた。

この傾向は、労働コストを引き下げるといった単純な理由ではなく、どんな経営戦略のもとに、従業員にどんな仕事を要求するのか、といった中・長期的な人事戦略から出発している。高い利潤を追求するために、高度な仕事を担当するエリートと、比較的単純な仕事を担う労働者との間に明確な格差を設けることで、インセンティブを与えているのだ。

現在の日本の賃金体系では、年収700万~800万円のところにひとつの大きなピークがある。しかし、ビジネスがグローバル化していく中で、日本もアメリカのように、より高度な仕事を担う人材が求められてくるだろう。そのとき年収700万~800万円の従業員に「もっと頭を使って頑張れ」と言っても、それに見合うペイが保証されない限り、会社側の期待に応えてはもらえないだろう。

人材募集にあたっては、自社の今後のビジネス展開をどう考え、そのためにどういう年収の人材をどのように採用していくのか、中・長期的な戦略を明確にしておくことが、ぜひとも必要である。

ここで考えておくべきことは、アウトソーシングとの兼ね合いである。日本では、アメリカのようにいきなり年収1500万~2000万円のところにピークがくるようなことにはならず、700万~800万円の人たちが担っている仕事が徐々に分化されていき、下は200万~300万円、上は800万~900万円くらいのところにピークがくるものと思われる。

このとき、下のピークの人たちをパートや派遣社員という形で自社内で維持するのか、それとも業務そのものをアウトソーシングするのかという判断が必要になるだろう。高い賃金の人たちに単純な労働をさせることは、コスト上問題であるが、だからといって、自社のコアとなる仕事や技術にかかわる部分まで、コストのみの理由で社外に出してしまうのは、一考の余地がある。

人材採用のポイントは
企業風土になじむこと

人材を採用する場合、何に注意すべきか。人材紹介会社からの紹介に限らないが、まず最初に、能力だけを見るのではなく、その人の人柄やメンタリティについてもよく検討することだ。当たり前のことと感じる方も多いだろうが、実のところ、これで失敗する例がけっこう多い。

たとえば、経理担当の責任者が急に辞めることになったので、急遽、後任を採用したいというケースを考えてみよう。大手企業で経理畑を歩き、現在は部長職という候補者がいたとする。経理の実務にも通じており、税の申告もでき、財務諸表もつくれるので、求人企業のオーナー社長は非常に気に入った。ところが採用してみると、些細なことで衝突し、社長の指示を聞きいれない、自分の方法に固執してスピーディに対応できない。結局は短期間で退職という結果になった。

これは、企業文化の違いに原因があると考えられる。大企業では権限委譲や分業が進み、各部門はマネジャーに任されていることがほとんどである。ところが、中堅・中小企業では、社長一人で全社に目を配ることも不可能ではない。今まで自分のやり方で仕事をしてきた経理部長は、現場に細かく口を出す社長の態度にへきえきしたのだ。

社長の考え方ややり方を理解し、それを受け入れてくれる柔軟な態度を持ちあわせた人かどうかを、社長自らが判断すべきである。

採用試験の面接の場で、「当社の業務はこんな内容で、将来はこういうふうにビジネスを展開していくが、あなたは当社で、どのように仕事をされていくつもりでしょうか?」と、面接を受ける人に自分をプレゼンテーションするように迫る場面を目にすることもある。こうした「圧迫面接」は、被面接者を萎縮させ、その人の本当の姿が隠れてしまいかねない。

一次、二次面接を経て、社長の最終面接も済んでいるのに、なかなか結果を出さない会社も問だ。最初の面接から採用の可否まで、少なくとも3週間以内に結果をすべきである。また、最終面接が終わった段階で「3日後に結果を連絡します」などと明確に日時を伝えなければならない。あいまいにしたままでは、優秀な人材は他社に行ってしまうだろう。

求人内容によっては、一次面接を担当者任せにせず、社長自らが見ておく必要もある。社長自身は「社風を変えてくれるような人を採りたい」と考えていても、担当者が枠からはみ出しそうな人物を当初の段階で外してしまうことが少なくないからである。

報酬面への不満に対して、「業界の中では上のほうだ」と応える会社もあったが、これは落第点の回答だ。それが事実でも、それ以上の報酬を設定できないなら、同業他社から採用する以外に、その会社に入社しようという人は一人もいないことになってしまう。

また、年齢は比較的若いが非常に優秀な人材なので、ぜひ採用したいという担当者の意見に対して、「社内のバランスが崩れる」という理由で難色を示す役員がいたとしたら、「おたくの会社は、全従業員の給料が公開されているのですか?」と聞きたくなる。

近年、ベンチャー企業の株式公開で、自社株を持っている従業員が大きな利益を手にするといった事例が度々報じられている。最近では、従業員持ち株制度をとっている企業に入社したい、ストックオプションをもらいたいので、株式公開を予定している企業を紹介してほしいという求職者からのアプローチも多くなってきた。今後、株式を公開する計画がないオーナー企業の場合、優秀な人材を集めるのが難しいといった事態が起こるかもしれない。

人材紹介会社を
どう選ぶか

人材紹介会社をうまく利用するひとつのコツがある。

重要なのは、窓口になる人材紹介会社の担当者があなたの会社をきちんと理解しているかどうかということだ。求める人材の能力だけでなく、社長と相性がよいかどうかまでをきちんと判断できる人材紹介会社と契約すべきである。

人材紹介会社の選択が難しい場合、担当者がひとりで来る会社より、複数で来る会社を選択すべきである。通常、人材紹介会社では、担当者がマークシートに求人会社の状況を記入すれば、後はそのデータに沿って動くことになる。そのとき複数の目で見たほうが、会社や社長の性格の把握が確実になるからである。人間同士の相性がよいと予測するのは難しいことだが、よくないほうは7~8割の確率で予測が可能なのである。(談)

職業紹介優良事業者認定マーク
当社は、全国に約28,000事業所ある人材紹介会社の中で、厚生労働省が審査し、 わずか40社しか選ばれない「職業紹介優良事業者」に認定されています。
※平成26年(第一回認定):全国で27社のみ、平成30年:全国で43社のみ(第二回認定)、令和2年:全国で39社のみ(第三回認定)、令和5年:全国で40社のみ(第四回認定)
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