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先見経済 1998年 11月第3週号

先見経済 1998年 11月第3週号

いまの時代、人材を求める企業、求められる人材とは

(株)エリートネットワーク 代表取締役 松井 隆

労働市場にも規制緩和の波

いままで労働省は、大変規制が厳しい省庁だった。その労働省も、世の中の流れと同じように、規制緩和の方向に動いている。

大蔵省は金融ビックバンという規制緩和を進めているが、大蔵省がいままで守ってきたのは預金者ではなくて、金融機関である。

厚生省は、薬を使う人とか患者の側ではなく、医者とか医療機関、製薬メーカーを守るというニュアンスの行政指導をしていた。

通産省もおそらく、一般消費者ではなくて、メーカーを守るという行政指導をしていた。

その点、労働省だけが働き手を確実に守ってくれていた。企業を自由にしておくと、極めて劣悪な条件で労働者をこき使うのではないか、安い賃金で休みもなく働かせるのではないか、という大前提で労働法規が組まれていた。

だから、週に一日は休日を設けるとか、一日に何時間以上働かせてはいけないとか、女性を夜中の10時以後働かせてはいけない、という規制があった。このように労働行政は労働者側を極めて厚く守ってくれていた。

しかし、すべての省庁が規制緩和をしている中で、労働省も規制緩和を進めている。これは働く側にとって大変な時代がくることを意味している。

私のみる限り、働く人が受難とまではいかないが、よほど何か光ったものがないと、いい職には就けなくなっていくのではないか。

ILO(世界労働機構)からは、労働行政に国があまり関与するなという勧告がきている。それを国として批准する方向で動いたので、日本の労働市場もほとんどグローバルスタンダード的な自由市場となろう。労働者の中でも能力のある人、市場価値の高い人、極めて高い付加価値を生み出してくれる人にしか高いペイは払わないという流れになりつつある。

アメリカではほとんどの職種で人材派遣がオープンになった。この結果、誰でもできるような仕事は、従来の賃金テーブルだとか高い給与で雇う必要はなくなった。

一方で、大卒のホワイトカラーでそこそこの能力のある人は、1000万円前後の給与に逆に上がっていく。一般的なオフィス・クラークという職種に関しては、わざわざ正社員でなくてもいいから派遣社員にしようということになった。

派遣社員なら年収は400万円前後以上はいらない。普通のセクレタリーでも、9時~17時で帰ってしまうお嬢さんには、高い給料を払わない。

それで、どういうことが起こったか。大卒ホワイトカラーの年収700万~800万円のカーブが崩れ、1000万円前後と300万~400万円前後の二つのこぶができた。中間層の欠落といわれるように、ホワイトカラーがだんだん少なくなったのである。

だから労働市場を緩和して自由化すると、少数の強い労働者だけが高い賃金をもらえ、誰でもができそうな職種、仕事は派遣社員に取って代わられるようになった。


女性・中高年の就職は厳しい

それと同じことが日本の労働市場でも徐々に起ころうとしている。特にいま新卒の女子は、事務職での正社員としての入社が大変難しくなりつつある。すると、新卒から即派遣会社に登録。派遣会社は賞与がない。勤務先も比較的短期間で変わっていく。

実際、リクルートが発行している女性向け就職情報誌でも、25、6歳以上の女性の正社員としての求人はほとんど載っていない。

たとえば、立派な女子大学を出て丸ノ内にある企業にOLとして入社した。3、4年勤務した後、26、7歳で辞めた。次にどこかで正社員として28歳の女性を雇ってくれる会社があるかというと、非常に少ない。

そこで派遣会社へ登録する。しかし、一度女性が会社を辞めると、もう派遣会社の派遣のお嬢さんの仕事しかない。どこの企業も、あえて高い給与で女性を雇う必要はないのが現状である。

こういう状況になったのは男女雇用機会均等法ができたからだ。男女同じ給与を払わないといけなくなった。企業の中では、従来からメインの仕事と補助的な仕事が並立してあった。しかし、業務改善もしないままに補助的な仕事を全部アシスタント的な派遣の人に任せてしまったから、こんな形になってしまっていまに至っている。

だから今後、普通のスキルしかない人が働こうとすると、大変難しい時代になりつつある。

中高年の就職が大変難しいというのは事実である。先日、リクルートの関連会社であるビル管理会社が、40歳後半から60歳を対象にビル管理をする人を募集したところ、400名の応募があった。

その中には、元大手高炉メーカーの工場長、つまり地元では超名士で、会社の中ではおそらく理事待遇、地元の商工会議所にも招かれるような地位の人が、退職後、グループ会社に安直に行きにくくなっているので応募にきたという。また、長期信用銀行の元取締役や、最近倒産した上場会社の元財務担当常務も応募にきていた。

いままでは、大手のメーカーでも子会社といわれる衛星企業群に行くポストが用意されていた。しかし、何歳になったらどこの子会社、専務になったらどこ、というローテーションが崩れ、行き場がなくなってしまったのである。


いま人材を欲しがっている企業とは

そういう中で、いま人材を欲しがっている会社とはどんな会社だろうか。以下に分類してみよう。

(1) バブルに浮かれなかったオーナー企業

まず1つは、バブル時代に、景気もよかったのにいっさいバブルに投資しなかったオーナー企業である。あくまでも本業だけに徹した。5代目、10代目のように、家訓が残されているのではなくて、創業者でありながら、ものすごく儲かっていたのに、バブルのときにいっさい手を出さなかった企業である。

オフィスビルのテナント誘致を専門にしている日本で一番大きな会社がある。バブルのときであれば、1日でそのビルを回転させたり、売買なら何億円もの利ざやが稼げたのに、全社員がそれを横で見ながらいっさい投資をしなかった。

同社では、いまこういう景気になったときに、よりいい人材がとれるからと、不動産鑑定士の資格を持ちながら上場企業でくすぶっている人がいれば欲しいという。大手の上場企業に入ったけれども、30歳前後ぐらいで上が詰まっていて、初めての転職の人いれば、ぜひともとりたいというような会社もある。

食品メーカーで天然調味料を一筋にやってきた会社がある。財務内容も抜群、オーナーの個人資産もあり、やはりバブル時代にいっさい投資をしていない。会社のクオリティを高めたいので、非常にいい人材があれば紹介しろという。

これらはすべてオーナー企業である。銭儲けがしたいからではなくて、本業にのめり込むことが大好きだったからこそ今日まで生きてこられた。いままで儲け話はあったが、本業以外に興味もなかったし、時間をとられたくもなかった経営者がいま募集をしている。

こうしたオーナー企業で共通するのは、経営者が財界活動、業界活動、商工会議所の顔役をいっさいしていない点だ。なんとかクラブだとか、なんとかロータリーみたいなものには、あまり参加しない。

(2) 上場・公開予備軍

次に人を欲しがっている会社は、上場、および公開の予備軍である。2年後、1年半後に公開スキームに入るという会社であり、各ディビジョンごとに責任者をきちんと置いて、体制を整備したいという会社である。特に、管理部門の有能な人と営業のマネジメントができる人を欲しいといっている。

最近、トレンドマイクロという会社が公開したら、最初の公募価格よりも2倍近くになった。同社はコンピュータウィルスの侵入を阻止するプログラムを開発しており、日本でシェア1、2を争う会社である。

こういう会社でも組織体制をきちんと整えたいと考えている。人事のマネジャーを要望しているのが、こういうタイプの会社である。

(3) 専門性の高い人を求める

いまの上場企業では人が余っている。東証の上場企業の全従業員がこの3年半で51万人減ったという。541万3000人から直近の調査では489万9900人に、3年半で51万人は減った。

こういう中でも上場会社で募集がある。どんな職種かというと、国際法務をやったことのある人である。外国企業との提携、外国企業とのライセンス供与などを弁護士とうまくすり合わせできるコントローラーを欲しがっている。

物流のプロも欲しがられている。生産ラインはほとんどコスト削減が限界まできているが、物流の責任者、ロジスティックの専門家など、いろいろな物流の改革をみて回った人である。

それからやはり、上場企業は株主総会が1つのキーワードになるので、何もダーティーなイメージではなくて、株主総会絡みのことをきちんとできる人。

財務会計であれば、有価証券報告書に関する実務をこなしたことのある人。ニューヨークの証券取引所に上場したいので、アメリカの公認会計士のCPAの資格を持った人。企業買収の実務をしたことのある人。こういうことを専門的にできる人がいれば、ぜひ欲しいという企業はある。

専門性の高い人は、あまりジョブローテーションが激しくない会社で、その仕事に長い間携ってきた人が多い。振り返ってみたら、結果的にとんでもない専門性が身についていたのである。

2年ごとに仕事が替わる日本企業の仕組みにおいては、逆に外から求められるレベルまで専門性が育たない。定期的にきちんとローテーションばかりする会社の社員にとっては、これからは下手をするとなんでも屋さんにしかなれなくて、転職には厳しくなるかもしれない。

(4) 業績のよい上場企業の子会社

ソニーの子会社では、いまだに有能な人がいれば欲しいという会社が幾つもある。ソニーの子会社には、私よりも年齢の若い方が社長で着任されている会社もある。まさに実務能力にたけた方が着任されている。そういう会社ではやはり人材が欲しい。総合商社の関連会社、子会社の中でも、新たに非常にいい商材がみつかったので、全社を挙げて応援していくという戦略的な子会社がある。たとえば、三井系の総合商社にしても、物流だけを各社から全部アウトソーシングして、集めてシェアをとることによって集約化のメリットを出す会社がある。

そういう戦略的な会社においては、いまだにシステムのプロ、物流のプロを欲しがっている。

(5) 採用基準の高い会社

採用基準がめちゃくちゃ高い会社がある。1年中いつでも有能な人がいれば、喜んで面接に応じるという。マッキンゼーとかボストンコンサルティングなどは採用基準が極めて高い。

単に高いだけではなくて、そういう人が世の中にいるかいないかの出現率からみても非常にまれだなと感じる。協調性はありながらも独立指向もそれなりに強く、一人で収益管理もしながら取引先に折衝もでき、おまけに企画書もレポートもきちんと書ける。こういう能力というのは相反する側面があるので、それを両方具備するというのはなかなか難しい。

採用基準が高いという意味では、生保、銀行だとか、またコンサルタント会社では、いまアクチュアリーという職種が求められている。保険金や契約配当金などを算出する経理専門家である。弁護士、公認会計士と並ぶぐらいに難しい資格である。東大の物理を出た人でも半分も受からないという、計数のプロみたいな人である。

こういう職種はいまだに世の中で絶対数は大変不足しているので、いつでもそういう企業からは欲しいという要請がある。

(6) 日本に進出間もない外資系企業

日本へきて、「来年の1月から立ち上げたい。だからその陣容をなんとか2、3ヵ月の期間でつくりたい」という会社がある。特に外資の場合はそういう急な依頼が多い。

(7) コンピュータ関連

コンピュータ周辺の職種である。プログラマーSE、上級SE、システム監査ぐらいができる人。つまり、コンピュータのソフトハウスは需給の関係で万年人材不足にある。

ここに挙げた7つぐらいの項目が、これだけ世の中が不景気であっても、いまだに人材を欲しがっている会社である。


経営方針は採用基準に現れる

外資系のほうが日本の会社よりも、もっとカスタマーサティスファクション(顧客満足度)に対するこだわりは強い。

会社が伸びるための次の事業のネタはたくさんある。しかし、そのためには自社が求めるようなレベルの人がくるまで、あえて採用基準を下げてまで採用しない。それが結果的に事業が伸びることになる。これは、立派である。

われわれのようなエージェントから紹介する人材なら一度はフィルターを通しているのに、60人に1人しかとらない会社がある。その代わり、その会社は人事担当役員が、会議以外はほぼ朝から晩まで全部面接に当てる。そこまで人材にこだわるのは、人が足りないからではなく、自社のカスタマーサティスファクションに対するこだわりが強く、有能なまたは自社の基準を満たす人でないと結果的に困るからだ。これも採用基準に現れる経営方針であろう。

もうひとつ、50代、60代の経営者の人から、「後継者が欲しい」という依頼もいくつかある。海外の会社はもう確実に「キープヤング」が人事の戦略の大きな方針に捉えられている。

「30代の有能な人をみつけて、40代でその有能な人に、早くバトンタッチできるようにしたい。それも一人では怖いから、3名ぐらい探しておいてくれ」というのだ。

このように20年、25年を考えて、次の世代を誰にすべきかというふうに考え、社内で適材がいないと思われた場合には、1世代飛び越えた形で探してほしいという。これが明確に採用基準に現れている。

もうひとつ、外資系で採用基準に明確に現れているのは、スタッフ管理部門(経理、総務、人事)のマネジャーである。いわゆる日本でいう課長がすごく優秀でないと困るという。本社の中枢部の総務、経理、財務、人事はホワイトカラー中のホワイトカラーでないと困るというぐらいにこだわりは強い。

さらに外資系で明確なのは、各ラインの事業部門で折衝できる、コミュニケーション能力の高い人を求めていることだ。各ラインに、来年度の予算は1割5分カットするけれども、それを納得してもらって、こういう形の予算でスタートしてくださいということをコンセンサスをつくり上げるような、有能なコミュニケーションの高い経理マンを欲しいという。

そこには、やはり企業の全体を見渡して、全社をいい方向へもっていくということが極めて大事だという認識がある。


儲かる会社には儲かる体質がある

日本はバブルのころから働きすぎだという論調が、特に新聞、マスコミをにぎわした。ところが、外資のホワイトカラー、つまり本社の総務、経理、人事、財務の課長以上はめちゃくちゃ長い時間、それも集中して働いている。日本の会社の比ではない。

儲かる会社では評価とペイがはっきりしている。また、自分が有能だと思っていても、給与と評価が上がらなければ去っていく。これが明確である。

評価とペイがきっちりしているので、風土としては「2年間、松井君はこういう評価だね。ずっと君は550万だね」といわれると、「あっ、俺はひょっとしたら、もうそろそろこの会社では、あれなのかな」と自分で感じられる体質がある。

外資の場合は出やすくしておかないと上が滞るし、またはあまり働かない人をやめさせられないと、結果的に生産性が落ちることを、明確に資本主義のロジックで貫いてくる。アップ・オア・アウトがいい意味で辞めやすい風土となっている。

もうひとつは、日本に出てきている欧米の現地法人の親会社がどこかの会社にM&Aされ、株主が替わった瞬間、日本の現地法人の社長、常務、専務、平取含めて全員が自主退職する風土が社内に脈々とある。儲かる会社には、いい意味で新しさ、または刷新ができやすいということが感じられる。


外資系企業の求める人材

管理職の場合は部下に任せてお神輿に乗るのではなく、自分でプレーヤーができる人が外資系企業で求められている。日本の上場企業で課長クラスなら、コーディネート役をやっているというが、外資では、その概念は最低でも取締役、または大きな部門の事業部門長以上でないと、通用しない。

だから外資系の求める人材とは、プレーヤーができること。つまり、営業部長であっても課長以下、平社員に得意先を回ってこいというのではなくて、営業部長がたまたま単独で動いても、クロージング、契約締結まででき、ネゴまできちんとできること。そこまでできる人というのが、外資の求める人材の大きなポイントである。

外資系企業の求める人材で一番うれしがられるのは、2つのスキルを持っている人材だ。その2つとは、専門性プラス英語である。英語ができて経理がわかる人、英語ができて財務のできる人、英語ができて金融がわかる人、英語ができてコンピュータプログラムがわかる人、つまり英語ができるシステムエンジニアである。

いま日本で一番足りないのは、英語ができる不動産屋である。これはめちゃくちゃ引っ張りだこである。つまり、不動産という土着性の強いドメスティックな仕事では、英語は滅多にいらない。だから、外資が日本へ入ってきて、日本の不動産を買うには、どうしても英語の話せる不動産屋が大変重宝がられている。

日本の国内で企業間異動をする場合、37、8歳から40歳を超えると、非常に難しい。ところが、外資においては、40歳でも50歳でも、そのポジションでの採用だから、年齢は関係なくて、そういうスペックを満たしていれば動ける。

これから一生食いっぱぐれがないようにするためには、英語が必要だ。どのビジネスマンでもすべての職種において、英語が堪能であれば外資系の求める人材という面ではなんとかなる。

(講演要旨)

職業紹介優良事業者認定マーク
当社は、全国に約28,000事業所ある人材紹介会社の中で、厚生労働省が審査し、 わずか40社しか選ばれない「職業紹介優良事業者」に認定されています。
※平成26年(第一回認定):全国で27社のみ、平成30年:全国で43社のみ(第二回認定)、令和2年:全国で39社のみ(第三回認定)、令和5年:全国で40社のみ(第四回認定)
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