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全国高等専門学校英語プレゼンテーションコンテスト(以下、高専プレコン)は、全国の国立・公立・私立の高専57校62キャンパスが参加する、英語によるプレゼンテーション力を競うコンテストです。
毎年全国規模で開催され高専生が競い合うイベントとして、ロボコン(ロボットコンテスト)やプロコン(プログラミングコンテスト)、デザコン(デザインコンペティション)と並ぶ、4大コンテストの1つに位置付けられます。
第12回を迎える今年度の全国大会は、2019年1月26日(土)と27日(日)の2日間、兵庫県神戸市の西区民センターで開催され、シングル部門16名、チーム部門10チームが出場しました。
「英語が使える高専生」を合言葉に、全国の高専生の英語を用いた表現力の向上、また英語教育に力を入れる学校間・学生間の交流を深める場として2007年度から毎年開催されている同コンテスト。今回は、コンテスト中の様子をお伝えすると共に、実行委員会事務局長の穐本(あきもと)浩美先生、並びにチーム部門で入賞された2チームにお話を伺いました。
(掲載開始日:2019年2月25日)

コンテストのルール


会場出入口のコンテストポスター

1つのテーマについて、英語でプレゼンテーションを行います。シングル部門と3人1組のチーム部門があり、それぞれの制限時間は5分、10分です。制限時間を超過した場合は減点、1分以上の超過は失格となります。プレゼンテーション終了後は、審査員との質疑応答が行われるため、英語を用いた表現力や、プレゼンテーション力以外にも、その場で質問された内容へすぐに対応するアドリブ力や機知に富んだコミュニケーション力も評価の一部となります。
テーマは自由に決めることが出来ますが、日々の研究をそのままテーマにしたものや、そこから発展させた考えを提言する等、高専生らしいテーマも数多く扱われています。

1月26日(土):シングル部門


モチベーションをテーマとしたシングル部門1位の石田 薫子(かおるこ)さん

1日目に行われたのは1人で発表するシングル部門。5分という制限時間の中、多彩なテーマでプレゼンテーションが行われました。

優勝したのは徳山工業高等専門学校情報電子工学科2年生の石田 薫子(かおるこ)さん。聴衆に向けた「あなたのモチベーションは何ですか?」という問いかけから始まるモチベーションをテーマとしたプレゼンテーションは、質疑応答を含めて堂々たる語り口とその完成度の高さで会場を惹き込んでいました。

機械工学を学ぶ「メカ女(MEKAJO)」をテーマにプレゼンテーションを行い、2位に入賞したのは群馬工業高等専門学校機械工学科5年生の嶋 彩花さん。女性ならではの視点を活かした新規技術開発力によって、日本の技術レベルを上げていきたい!との意気込みを語りました。

3位に入賞したのはサレジオ工業高等専門学校デザイン学科3年生の井上 七海さん。「Cash」をテーマにユーモアも交えた語り口や質疑応答の様子は、一方的な情報発信に留まらず会場を楽しませようとする表現レベルの高さを感じさせるものでした。

自らが生まれ育った土地や、その地域の町おこしに関わるテーマを扱う学生も複数いました。そんな中、全国高等専門学校英語教育学会による特別賞(COCET賞)を受賞したのは高知工業高等専門学校ソーシャルデザイン工学科2年生の野並 玲奈さん。高知の隠れた名産であるヤマモモを活用した製品提案をテーマに、トップバッターらしい溌剌としたプレゼンテーションを披露しました。

日本国際連合協会会長賞を受賞したのは、函館工業高等専門学校3年生の山下 将大さん。物質環境工学科で学ぶ彼がテーマとしたのは、プラスチックごみによる海洋汚染問題について。講義の一環として、地域の中学生に自らの研究に関連したテーマで授業をする機会があり、これをもとに今回のプレゼンテーションを作成しました。中学生向けの授業をベースにしているため、まとまった内容や、身振りや手振りがあることによる分かりやすさが印象的でした。

1月27日(日):チーム部門


「Think, Challenge and Act」をテーマとしたチーム部門1位の富山高専(射水キャンパス)の方々

2日目は3人1組となってプレゼンテーションを行うチーム部門のコンテストが行われました。制限時間10分の中で、シングル部門では表現出来ない演技や会話を交えた、動きのあるプレゼンテーションが印象的でした。

優勝したのは富山高等専門学校(射水キャンパス)国際ビジネス学科4年生のハイトワ ムニスホンさん、上村 胡桃さん、杉森 佐和子さんのチーム。「Think, Challenge and Act」と題された彼女たちのプレゼンテーションは、高専生たちの集まるインターンシップで「高専生たちの学校生活の満足度」に対して疑問を持ったことをきっかけに作成。他校を含む複数の高専で、170名以上から集めたアンケートをもとにした各高専の満足度や高専教育、制度における課題を抽出しました。そこで、高専では数少ない、文系専攻で幅広い知識を身に付けている自分たちの強みは何かを考え、留学等様々な課外活動に挑戦してきた経験とその重要性について熱く語りました。

2位入賞、そして日本工業英語協会会長賞を受賞したのは函館工業高等専門学校社会基盤工学科3年生の飯田 吟太さん、澁谷 弥優(みゆ)さん、生産システム工学科3年生の釜石 健太郎さんのチーム。同校の学生たちは、食堂や売店への動線が悪く、限られた昼休みの中での食事や移動が難しいという悩みを抱えていました。この問題に対処しようと、企業に対する全国高専共通電子マネーの導入による効率化提案や設備配置の変更といった実際の活動が紹介され、課題解決に向けた実践的な取り組みの重要性が伝わりました。

3位に入賞したのは鹿児島工業高等専門学校情報工学科5年生の黒石 愛華さん、田渕 友佳子さん、宮薗 大雅さんのチーム。5年間の高専生活を振り返り、「高専生活を満足に過ごすためには?」をテーマとしたプレゼンテーションを披露しました。「満足している」「満足していない」「完全には満足していない」という3つの立場に分かれて論の展開が出来るのは、チーム部門ならではのメリット。また、実体験に基づいた考察や写真を多用したスライドを用いることで、説得力とわかりやすさを武器にしていました。

COCET賞を受賞したのは秋田工業高等専門学校機械工学科4年生の井畑 匠越(しょうえつ)さん、木村 滉斗(ひろと)さん、田村 夏生(なつお)さんのチーム。様々なニーズやプロモーションのために多機能な製品を作るエンジニアと、使いやすさを求めるユーザとのギャップの問題から、テレビリモコンを例に挙げ、AIを活用してニーズのすれ違いに対応することを提案しました。AIに機械の故障原因を探らせて修理時間を短縮出来るといったエンジニアならではの目線でのメリットも提示する、高専生らしいプレゼンテーションでした。

実行委員会事務局長 穐本 浩美先生へのインタビュー


実行委員会事務局長
明石工業高等専門学校 穐本(あきもと) 浩美先生

――まず、今年の高専プレコンの感想をお聞かせ頂けますでしょうか。

出場した高専生たちのプレゼンテーションのレベルは年々上がっていると感じます。コンテストであるため、どうしても順位をつけなければならず、1位、2位、3位を決めてしまいますが、4位以降の学生たちのレベルも十分に高く、入賞者たちとの力の差がどんどん縮まっている様な印象を受けました。

例年、高専英語プレゼンテーションコンテストは東京都の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催していますが、今年は改修工事の影響により、初めて兵庫県神戸市の西区民センターでの開催となりました。新しい会場でゼロから大会を組んでいくので、大変なところもありましたが、だからこその充実感もあり、結果的には良かったと思っています。


――穐本先生も英語教育者として日々教壇に立たれていらっしゃいますが、高専の英語教育について、心掛けておられることはございますか。

実践的な英語でのコミュニケーションを重視しながら、日々指導にあたっています。最近は皆どうしてもTOEICで高得点を取ることに集中する傾向があります。高専からの大学編入を目指したり、社会に出てからTOEICスコアを求められたりすることを考えると、その備えは確かに必要ですが、それだけでは外国の方とのコミュニケーションはうまく図れません。
スコアだけではない、コミュニケーションをとる上での人の心の部分、相手への気遣いといった要素も考えながら、英語の勉強をしてほしいと思います。


――実践的な教育を更に推進すべく、現在高専は英語を含めた教育改革の最中にあると思われますが、穐本先生ご自身は、学生たちにどのような人材に育って欲しいとお考えでしょうか。

高専は技術が好きな学生が集まっている分、ひとりでPCやゲーム等をして育ってきた学生が比較的多い様に思います。しかし、人はヒトと「ケンカして」「仲直りして」といった、直接のコミュニケーションをしなければ成長出来ないと思います。本を読んで得た知識だけではなく、技術にしても何にしても、コミュニケーションを通じて吸収する取り組みをしてもらいたいと考えています。更に、そこに英語が介在するのであれば、英語教育者として嬉しい限りです。


――最後に、現役高専生や高専を卒業された社会人の方々へのメッセージをお願いいたします。

最近ではアクティブラーニングやグローバルでの活躍を目指す動きが活発で、「問題解決能力」「協調性」「リーダーシップ」等を持ったエンジニアの育成が重視されています。しかし、これらの能力はその環境に放り込まれないと身に付かない能力であり、かつ、必ずしも全員が身に付ける必要もないと思います。このようなキーワードにガチガチに縛られるのではなく、それぞれの個性を大切にしながら、伸び伸びと学び・働いてほしいと思います。

――本日はお忙しい中、ご協力頂き、ありがとうございました。

チーム部門優勝:富山高等専門学校(射水キャンパス)へのインタビュー


富山高等専門学校(射水キャンパス)
国際ビジネス学科4年生 ハイトワ ムニスホンさん:左
国際ビジネス学科4年生 上村 胡桃さん:中央
国際ビジネス学科4年生 杉森 佐和子さん:右

――優勝おめでとうございます。今の気持ちをお聞かせ下さい。

ハイトワさん:半年間、特に大会直前は毎日先生にも付き合ってもらいながら、時間をかけて練習をしてきた成果が形となったので、とても嬉しいです。

杉森さん:やってきた分だけ、結果が出たかなと思います。緊張はしましたが、楽しかったし、全く不安にはなりませんでした。発表順が最後だったので、見ている方にとって気持ちのいい締めくくりにしたいと思いながら挑みました。


――半年間の準備について詳しく教えて下さい。

上村さん:私たちは国際ビジネス学科という、全国にある高専のなかでも3校にしか設置されていない、所謂文系学科で学んでいます。私たちのプレゼンテーションは、他の工業系で学んでいる出場者の方々が作る、自分の専門に関連するものをテーマとしたプレゼンテーションと比較すると、エモーショナルで気持ちに訴えかけるものだったので、論理的な構成を練るのが難しく、何回もスクリプトを作り直しました。

ハイトワさん:最初に作った構成では満足が出来なかったり、意見がまとまらなかったりして、チームで繰り返し話し合いました。最初の2カ月は文章を書くだけ、そもそもプランを作るだけで2週間くらいかかりました。1つの段落を書くために、3日間毎日3時間以上電話で話したこともあります。

杉森さん:大会以外の場で何度か発表する機会があったのですが、その度に、スクリプトとスライドを大幅に修正しました。


――皆さんが学んでいる国際ビジネス学科では、どのような勉強をしているのでしょうか。

ハイトワさん:大きく国際関連とビジネス関連の2つに分かれます。国際関連では、英語や第二外国語(中国語・韓国語・ロシア語のいずれか)といった言語や歴史等を学びます。ビジネス関連では、法学・物流・経済・会計等について広く学びます。

杉森さん:珍しいからこそなかなか存在を知られていない、そんな自分たちの学科の環境を変えたいという気持ちも今回参加した動機のひとつでした。全国大会に進出が決定した時、ほとんどの高専生は理系であるため、文系である私たちの主張は、数が少ないからこそ共感が得られるのではないか、と感じました。そこで、この強みを踏まえて内容を更に練り上げていくことにしました。


――大会に出場しようと思った理由は、そのような想いの他、元々そうした学科で学びたいと考える様な海外への興味を持っていたことも一因なのでしょうか。

ハイトワさん:はい、それもあります。国際的な事柄へ興味を持つ私たちの学科からは、この英語プレゼンテーションコンテストに参加される先輩方が多くおり、その姿を1年生の頃から見てきたので、憧れがありました。また、昨年度の大会で、先輩方が2位を受賞されましたが、先輩方の分も1位を取りたい、という気持ちもありました。実際にやってみると楽しかったので、参加して良かったと思っています。


――将来の夢や、やってみたい仕事はありますか。

ハイトワさん:海外を回るような仕事がしたいです。選択肢は沢山ありますが、どんな仕事にせよ外国の方々と関わり、大事な役割を果たして、色々なことを学べる環境に行きたいと思っています。

上村さん:高専の特色上、工場やメカニック系企業の見学に参加する機会が多くあります。正直、はじめは興味がなかったのですが、見学を重ねるうちに、私の知らないところにも日本を含めた世界の最先端の技術を支えている方々がいることがわかりました。私も具体的な進路は定まっていませんが、直接技術的に関われなくても、同じように世界を支えることの出来る人になりたいと思っています。


――本日はお忙しい中、ご協力頂き、ありがとうございました。

チーム部門3位:鹿児島工業高等専門学校へのインタビュー


鹿児島工業高等専門学校
情報工学科5年生 田渕 友佳子さん:左
情報工学科5年生 黒石 愛華さん:中央
情報工学科5年生 宮薗 大雅さん:右

――入賞おめでとうございます。今の気持ちをお聞かせ下さい。

宮薗さん:5年生である私たちは、卒業研究等で忙しく、練習時間も少ない中での参加となりました。そういった状況にも関わらず、レベルの高い今大会で3位に入賞出来たのは、非常に驚きつつも本当に嬉しい気持ちで一杯です。

黒石さん:ギリギリで色々な準備を進めてきて、あまり練習時間もなかったので、入賞出来たことは本当に嬉しいです。チームのみんなと、指導して下さった先生のお陰だと強く感じました。

田渕さん:正直、賞をもらえるとは思っていませんでした。本当にレベルが高い大会でしたが、今まで頑張ってきてよかったです。


――プレゼンテーションを作る中で、特に意識した点はありますか。

田渕さん:私たちは、3人それぞれが異なる立場に立って話を展開する、ディベート形式をとりました。それぞれの主張が明確な根拠を持つ様に意識しながら、構成を進めていきました。

宮薗さん:田渕さんが中心となってスライドを作成してくれました。彼女が、見やすく、オリジナリティがあり、説得力もあるものを作成してくれたので、スライドそのものが私たちの魅力になったと思います。


――限られた時間の中、どの様に練習をされましたか。

宮薗さん:基本的には個人で練習しながら、3人で集まれた時は、スクリプトの読み合わせをして、発音の違い等細かな箇所をお互いに指摘し合いました。発表の質問対策については、先生方との実践的な練習を中心に進めていきました。

田渕さん:全国大会出場が決まった12月は月に3回ほど、1月は週に3回ほど、大会前最終週は毎日集まって練習を行いました。


――忙しい中で大会に参加しようと思ったきっかけは何でしょうか。

黒石さん:田渕さんと私は、昨年度の大会にも先輩と参加しており、その時はCOCET賞を頂きました。ただ、この結果には満足出来ず、リベンジしたいという話をしていました。そんな中、宮薗さんが大会に出たいと思っているという話を聞いたので、彼を誘って出場しました。

宮薗さん:英語の勉強をずっと続けていたのですが、使う機会・活かす場面が欲しいなと感じていました。そんな時に2人に声をかけてもらったので、参加することにしました。


――最後に、将来の夢や目標を教えて下さい。

黒石さん:クラウドサービスを提供する企業に、Webデザイン・開発職として就職する予定です。配属部署には外国人の同僚がいるということなので、英語を活かしつつ、コミュニケーションをしていけたらいいなと思っています。

田渕さん:私は世界各地に支社を持つ半導体部品メーカーに就職する予定なのですが、海外出張の機会等もあると思うので、そういった場面で英語を活用したいと思います。

宮薗さん:私は大学へ編入し、情報工学の専門性を更に高めていきます。近い将来、この専門性をもとに企業へ就職するつもりですが、ゆくゆくは起業したいと考えています。高専での勉強はその専門性の高さから内容が難しく、期間が長いこともあり、モチベーションをなかなか維持出来ないという課題があります。専門の勉強や進学・就職をサポート出来る予備校のようなものがあれば、楽しく勉強が続けられるのではないかと考えています。そういった、高専生の学びをサポートする仕事が出来ればいいなと思います。

――本日はお忙しい中、ご協力頂き、ありがとうございました。

あとがき

今回の高専英語プレゼンテーションコンテストでは、単に発音良く淀みなく話す、というレベルを超え、声のトーンや大きさ、スピード、間合い、といったコミュニケーションに必要なあらゆる要素にまで気の配られた、非常にハイレベルなプレゼンテーションが繰り広げられました。
高専生はこれまで、技術力には長けているが英語力には乏しい、というイメージを持たれることも多くありました。しかし現在では、このイメージを払拭しようと様々な教育改革が行われており、その結果、留学する学生数の増大や、TOEICの点数の向上など、学生の意識や英語力は確実に変化しています。
出場した学生からは、この大会を目標に励んでいるという声も聞こえ、実験・実習・コンテストを重んじる高専教育において、毎年のプレゼンテーションコンテストは学生たちの日々の英語学習のモチベーションとなっていることがわかりました。

第12回全国高等専門学校英語プレゼンテーションコンテスト:公式サイト