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2019年1月28日(月)東京都千代田区の学術総合センターにて、高専教育シンポジウムが開催されました。
現在、IoTやAIといった新たな技術が普及し、超スマート社会へと社会構造が変化する中、高い技術力を持った高専生の活躍に期待が集まっています。
社会への技術実装を前提とした、実践的な教育を行っている国立高専では、この期待に応える高度な知識・技術を持った人材を輩出するべく、様々な教育改革に取り組んでいます。本シンポジウムでは、国立高等専門学校機構が行っている教育改革に関心のある企業や高等教育関係者など、300名を超える聴講者が集まりました。
また、講演の合間には、現在活躍している高専生2名によるプレゼンテーションが行われた他、シンポジウムの後には現場の視点からより具体的な高専教育の実例について報告される分科会も開催されました。

(掲載開始日:2019年2月25日)

シンポジウム

国立高等専門学校機構 理事長の谷口氏による講演を皮切りに、今回のシンポジウムの副題である「進化する高専教育」や、キャッチコピー「学生の『チカラ』、保証します。」に沿った、以下の講演が行われました。

国立高等専門学校機構 理事長:谷口 功氏
「高専教育の未来」


国立高等専門学校機構 理事:豊岡 宏規氏
「社会の変化と高専教育の役割」


国立高等専門学校機構 理事・函館工業高等専門学校 校長:但野 茂氏
「保証された学生の『チカラ』」


国立高等専門学校機構 理事・佐世保工業高等専門学校 校長:東田 賢二氏
「世界で活躍できる『チカラ』」


国立高等専門学校機構 理事:安藤 真氏
「地域のニーズを、地域の『チカラ』へ」


国立高等専門学校機構
理事長:谷口 功氏

全国で学生数約50,000名、教職員数約6,000名という規模を誇る国立高専。まだまだ世間一般からは高校と大学の間の教育機関、または名称の似た専門学校と同じ教育機関と誤解されることがありますが、実際は、他のどの高等教育機関とも異なる日本独自のユニークなシステムを堅持しています。
谷口氏の講演では、教育界や産業界、国際社会からの期待・評価を受ける高専教育について、現状と今後の展望が語られました。


高専教育の真髄

高専では、科学や技術は人の役に立ってこそ真価を発揮するとの理念から、社会実装を前提とした教育が行われています。カリキュラムには座学だけではなく、実験・実習や PBL(Project Based Learning)、アクティブラーニングなどがバランス良く取り入れられており、学生たちが課題を解決する方法を模索し、チームワークを育て、人の役に立つために本当に必要なものは何かを考える機会になっています。実社会の課題を発見し、それを解決していくという役割を、谷口氏は「社会における医者(ソーシャルドクター)」と表現します。
現在、社会はSociety5.0と呼ばれる構造変化の過程にありますが、ここで必要となるAIやIoTといった新規技術も、高専が得意とする領域です。試行錯誤を繰り返し、時には新技術の創造もしながら、理論で終わらず実装までを担うことのできる高専生に、社会や企業からの期待はますます高まっています。


国立高等専門学校機構
理事:豊岡 宏規氏

豊岡氏の講演では、地域社会からのニーズに応えるための方策についてより詳しく語られました。高専がどういった役割を果たしてきたのか、今後どういった役割を果たすことが期待されているのかをテーマに、各高専の特色強化、研究環境の整備の他、学校経営自体を改善する改革の重要性について指摘されました。


「教育の質保証」とは

社会や企業からの期待に応えようと、「どの国立高専を卒業しても、一定以上の質を担保した人材を輩出する必要がある」との考えの下、平成30年度から全ての国立高専に、カリキュラム構築における共通ガイドラインである「モデルコアカリキュラム(Model Core Curriculum:以下MCC)」が導入されました。


国立高等専門学校機構 理事
函館工業高等専門学校 校長:但野 茂氏

但野氏の講演では、一連の教育改革の中核として10年近くの歳月を掛けて構想されてきたMCCの詳細が解説されました。
MCCは、国立高専が育成する人材が持つべき最低限の能力水準・修得内容である「コア」と、リーダーシップやコミュニケーション能力、エンジニアリングデザインといった技術者として必要な人間力を身に付けることを目指す「モデル」で構成されています。
導入の目的は、カリキュラムの再編成に留まらず、教育内容の評価対象を「教員が何を教えたか」から「学生が何を学んだか」に180度移行し、到達度重視の教育とする点にあります。


知識・能力(コア)と人間力(モデル)を基盤に各校の特色に合わせた教育を組み合わせることで、あらゆる社会ニーズに対応する人材を輩出する教育システムが構築されています。

しかし、基盤教育を統一しただけでは似た様な人材ばかりが輩出され、様々な社会ニーズに対応できる人材は育ちません。
高専は元来、高度経済成長期に各地域の産業において必要とされる技術の教育を担うべく設立されたという背景を持ちます。今回の改革の中でもその役割は重視されており、各校の全カリキュラムの60~70%が、MCCを元とした、一技術者が備えるべき「基礎的能力」「専門的能力」「分野横断能力」に関する科目、残りの30~40%が各高専の個性や特徴を活かしたカリキュラムで編成され、独自の角度からも課題にアプローチできる能力を身に付ける方針をとっています。


「KOSEN」のグローバル展開

日本における他の教育機関との差別化、また漢字文化圏では専門学校との区別がつきにくいといった観点から、高専は「KOSEN」と銘打たれ、この独自の高等教育システムを世界にも広めようと積極的な活動が行われています。


国立高等専門学校機構 理事
佐世保工業高等専門学校 校長:東田 賢二氏

東田氏の講演では、高専教育の国際標準化推進の現状が紹介されました。活動の中心になっているアジア圏の中でも、タイ、ベトナム、モンゴルは重点3カ国と位置付けられており、特に最も導入が進んだ国であるモンゴルは、高専第一期生の卒業を目前に控え、高専を出た人材が今後どの様な活躍を見せるのか、期待が高まっている段階です。
また、国内の高専における海外留学プロジェクトへの参加人数拡大や留学生の積極的な受け入れにより、学生自身の意識改革も行われています。一例として、八戸工業高等専門学校の海外との共同研究や、留学経験者数の増加、学生のTOEIC取得点数のめざましい伸長等の実績が紹介され、国外のみならず国内の学生による国際的な取り組みも活性化しているという状況も伝えられました。


国立高等専門学校機構
理事:安藤 真氏

こうして「KOSEN」が国際的な教育機関として存在感を増すと同時に、SDGs(国連により採択された、持続可能な開発目標)の達成に向けた活動が他の国際機関同様に求められる等、高専の可能性は地域社会から世界へと広がっています。
安藤氏の講演では、複数の産業分野において“データを組み合わせる”ことで、これまでに想像も付かなかった様々な新規技術が生まれていることを例にとり、グローバル社会からの要請に応えていくためには、各校が持つ特色を組み合わせ、各地の国立高専で地域横断的な課題解決ができる環境を目指す必要があると指摘されました。

活躍する高専生によるプレゼンテーション

国立高専ならではの教育成果として、在学中から実社会の様々な場所で活躍している高専生たち。
今回は、座学以外の実践的な教育のひとつとして注力されているコンテストに数多く挑戦する学生、そして留学をきっかけにグローバルな観点を身に付けた学生、計2名によるプレゼンテーションも行われました。

豊田工業高等専門学校 情報工学科 3年:坂口 孝志さん
「七転び八起き ~私の高専生活と高専プロコン~」


第29回全国高等専門学校プログラミングコンテストの課題部門にて特別賞を受賞した坂口さん。彼は高専プロコンの他、ヤフー株式会社と教育機関が共同開催するHack U(ハック・ユー)や、総務省及び国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が開催する起業家甲子園といった、数多くのイベントやコンテストに参加しています。
今回のプレゼンテーションでは、イベントやコンテストに参加することで、企業の方との意見交換や、期間内に課題を解決するといった実践的なスキルを得てきた坂口さんの経験が紹介されました。
その他、高専に入学する15歳の時に、20歳を超える先輩方と日常的に接することができる点、また、学科ごとに異なる特色により多様な専門性に触れることができる点等、坂口さんが高専生活の中で感じてきた、高専で学ぶメリットについても語られました。

呉工業高等専門学校 専攻科 1年:大室 ひなさん
「高専で学んだグローバル・グローカル」


文部科学省、日本ユネスコ国内委員会、公益財団法人 五井平和財団が主催するESD日本ユース・コンファレンスに、高専生として初めて日本代表に選出された大室さん。本科2年次の留学で、「英語を話すことができる」だけではなく「英語で何が語れるか」の重要性を痛感したことを起点に、日中韓大学生交流事業への参加や、西日本豪雨での交通情報発信ボランティア等、様々な経験を積んできました。
留学と高専で学んだグローバルな視点を生かして地域、ローカルでの課題解決に取り組む彼女が感じる、地域貢献の意識が身に付く教育や、国際感覚を自然と身に付けることができた環境等、高専の様々な魅力が語られました。

分科会

シンポジウムの分科会として、各校独自の事業や国立高等専門学校機構全体としての事業の事例として、以下の様なプレゼンテーションが行われました。
●「地域を学び舎とする分野横断型イノベーション人材の育成」と題した、地域の企業や大学と組んだ独自の取組み(長岡高専)
●「企業との共同教育とその評価」と題した、オムロン株式会社他の企業による技術教育支援とその成果
●「先導的教育改革(文科省採択6高専)の成果と他高専への展開」と題した、アクティブラーニングの根本的な指導をはじめとする先進的な教育プログラムの共有(仙台高専、明石高専、岐阜高専、徳山高専、宇部高専、阿南高専)
●「CBT結果を学生の学び・科目相当の教育課以前に繋げる取り組み」と題した、MCC導入に伴いその成果確認ツールであるCBT(コンピュータを使用した学習到達度試験)の活用事例の紹介(函館高専)
●「共同性を高める学内教員研修」と題した、教員一丸となった連携教育により学生を取りこぼすことなく、よりよく育むための教員研修モデルの紹介(阿南高専)
●「これからの学生情報可視化の取り組み」と題した、学習状況他の学生情報のデータベース化・見える化の重要性の解説
●「カリキュラムマネジメントのすすめ」と題した、MCCの効果を高めるカリキュラムマネジメント手法の紹介

シンポジウムで共有された、社会実装を前提とした実践教育、MCC導入をはじめとする教育改革等に関連して、日々現場で取り組まれている具体的な事例が熱い想いと共に報告されました。

あとがき

「高専教育の未来」をテーマに開催された今回のシンポジウム。
いずれの講演でも、国立高専が取り組んできた、実験、実習、各種コンテストを通じて育まれる実践力の高さや、地域連携の実績を背景に、日本社会、そして世界からの期待を背負う存在として、より価値を高めていくための改革がなされていることが共有されました。
世界中他のどの学校制度にも当てはまらない、日本独自かつ高度な教育機関として、高専(KOSEN)が普遍的な存在になる未来が見える様に感じるシンポジウムでした。