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高専インタビュー

技術の最前線に有用な人材を送り込むために、仙台高専は学際的な施策に注力しています。

Interview

仙台高専の概要についてご紹介下さい。


仙台高等専門学校(広瀬キャンパス) 正門前にて

仙台高専は、宮城県名取市にあった旧宮城工業高等専門学校と、仙台市青葉区旧広瀬地区にあった旧仙台電波工業高等専門学校の2校を高度化再編し、2009年に開校しました。現在もそれぞれの校舎を名取キャンパス、広瀬キャンパスとして使用しています。
入学するすべての学生は総合工学科に属しますが、出願と入試はⅠ類、Ⅱ類、Ⅲ類に分けて行われます。Ⅰ類は広瀬キャンパスで学び、情報システムコース、情報通信コース、知能エレクトロニクスコースが設けられています。Ⅱ類とⅢ類は名取キャンパスで学び、Ⅱ類にはロボティクスコース、マテリアル環境コース、機械・エネルギーコースが、Ⅲ類には建築デザインコースが設けられています。また、Ⅰ類~Ⅲ類共通で4年次から応用科学コースに進むことができます。
また、専攻科としては広瀬キャンパスに情報電子システム工学専攻を、名取キャンパスに生産システムデザイン工学専攻をそれぞれ設置しています。

進学並びに就職に関しては、本科卒業生の約半数が専攻科に進学もしくは国公立大学等に編入学し、就職を選択した卒業生の大半が著名な企業に就職しています。平成28年度の就職先だけを見ても、出光興産(株)、セイコーエプソン(株)、ソフトバンク(株)、大成建設(株)、東海旅客鉄道(株)(JR東海)、日本放送協会(NHK)、本田技研工業(株)東日本旅客鉄道(株)(JR東日本)等、錚々たる顔ぶれです。こうした就職先のほとんどは卒業生本人や親御さんの希望に沿った結果であり、送り出す側としては満足すべきかもしれません。ただ、地域貢献を使命の一つに掲げる高専ですから、本校卒業生の採用意欲が極めて高い地元有力企業の期待に数の面で応え切れていない点を今後の検討課題として捉えています。

本校卒業生の就職後の活躍振りも、様々な方面から聞こえてきます。プラントエンジニアリング大手である日揮(株)の石塚忠代表取締役社長は旧宮城工業高専の卒業生ですし、酒類販売店チェーン最大手である(株)やまやの山内英房代表取締役会長は旧仙台電波工業高専の卒業生です。他にも宮城県の自治体の要職に本校卒業生が多く就いている一方、最近ではベンチャー企業を立ち上げたという話もよく耳にします。

仙台高専の特徴的な取り組みを教えて下さい。


「本校に在籍し、準学士課程において身に付けて欲しい能力・姿勢のことをディプロマポリシー(学位授与方針)と呼びます。本校全体のディプロマポリシーだけではなく、各コースにもそれぞれ4項目ずつのディプロマポリシーを定めています。」

産業界から引く手あまたとなっている本校卒業生ですが、その高い評価の源泉となっているのは、時代のニーズを捉えたディプロマポリシー(学位授与方針)の導入にあると自負しています。
かつて高専は産業界、特にエンジニアリングの現場で即戦力となる技術を習得した卒業生を送り出すことを使命としていました。そのため、電気や機械、通信、建築・土木等の各領域においてエキスパートを育み、一定の専門性を持たせることを優先してきました。
今世紀に入るまでそうした方針は産業界からの要請にマッチし、高専の卒業生たちが日本の高度な技術水準を牽引してきたことは間違い無いでしょう。そのため、現在もディプロマポリシーにある卒業認定のための項目の1番目は「工学分野についての幅広い知識と技術を活用できる実践的な能力」と記しています。しかし、近年は従来技術のコモディティ化とともに、単一の領域を極めるだけでは時代の要請にあったエンジニアリングを担うことが難しくなっています。

例えば、1970年代までの自動車の開発と製造は、主に機械領域のエンジニアが活躍していましたが、80年代にはエンジンの電子制御が一般化し、90年代にはハイブリッド車等のモーター駆動の自動車開発が本格化。現在は、自動運転の高度化に向けてAI(人工知能)や車外とのデータリンクを活用するための研究開発や、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)といった先端素材の使用が進められる等、徐々に機械領域以外の技術を取り込んでいきました。
自動車領域のみならず、建築領域でも同じ現象が起きています。最新のビルや家屋は、難燃性や断熱性能を上げるために新素材を積極的に取り入れています。さらに、IoT(モノのインターネット)で家中の設備が任意にコントロールできるようになる等、もはや家そのものが情報機器と言っても過言ではありません。

上記の二例に限らず、今や学際を柔軟に乗り越える総合的な技術知識を持たないと、モノがつくれない時代になってきているのです。

そこで本校ではディプロマポリシーの2番目に、「異なる分野を融合させて新しい価値を創出できる創造的な能力」という項目を明記しました。複合的な知識を身につける機会を用意し、様々な技術領域に対して課題感を持って能動的に横断していくために、必要なコミュニケーション力やコラボレーション力を磨くカリキュラムをふんだんに用意しています。
そもそも、二つの高専を再編することになったのも、平成28年度まで複数の工学科に分けられていた準学士課程を総合工学科の一つに集約したのも、高度に複合化した産業界へ技術開発の中核となり得る技術者を輩出するのが目的です。本校の学生は自らの知的好奇心の赴くままに、コースの枠に捉われず、全校の教員や学年を超えた多くの学生と深く関わっていく学際的な取り組みが可能となっているのです。

地域社会との連携についてお聞かせ下さい。


2011年3月11日の東日本大震災で得た体験と反省を後世に伝えるために作成された記録誌。

本校は従前より、宮城県を中心とした地域社会との共同研究や技術支援といった連携活動を積極的に行ってきました。
幾つかの実績を申しますと、宮城県内のワイナリーと共同でブドウの生育状況をIoTでモニタリングする技術に取り組んでいます。また、液晶波長可変フィルタを用いて、衛星から農作物の成育状況を監視する技術にも取り組んでいます。別のチームでは、企業と共同で次世代モビリティへのワイヤレス充電を研究しています。それに伴い、2017年から「NPO法人 次世代モビリティエコラン協会」の事務局を広瀬キャンパス内に設置し、次世代モビリティの研究と開発を担う人材育成の協力を始めました。

地域貢献という意味では、2011年に発生した東日本大震災後の復興にも大きく関わっています。震災直後から2015年まで、東北の高専6校による「震災復興高専プロジェクト」の幹事校を務めました。現在も、レーダーを用いて地中に埋もれた犠牲者の遺骨や遺品を地上から探知する活動を行っています。また、茨城大学と共同で福島県の放射線量を測り続け、復興のための重要な役割を果たしています。
上記いずれのプロジェクトも、主導する各先生の研究テーマであると共に、参加する学生にとっては先端技術を実践的に学ぶ場となっています。

他にも、科学技術イノベーション人材の育成システムである「JST(科学技術振興機構)ジュニアドクター育成塾」では、主に宮城県内の小・中学生を対象として、ロボットやAI等の先端テクノロジーをテーマとした学習プログラムを提供しています。この「ジュニアドクター育成塾」は文部科学省が所管する科学者の早期育成を目的とした取り組みで、東京大学や筑波大学といった全国10校が選定されており、本校は全国高専の中で唯一の選定校になりました。

グローバルにはどのような取り組みをなさっていますか。


「高等教育機関のニーズが強いモンゴルには3つの高専があります。今まで本校で使用していた実験機材等を寄贈したことで、モンゴル高専から感謝状を頂きました。」

ディプロマポリシーの3番目に掲げているのが「国際的に通用する基礎的なコミュニケーション能力」を持った人材の育成です。本校ではこのポリシーに沿って、積極的な国際交流を推進しています。

アプローチ方法は大きく分けて2つあります。
1つ目は、海外に高専という教育システムを紹介・移設していく中での、学生・教職員を含めた人材交流です。発展途上国の多くは、近年の中間層の増加によって高等教育ニーズが増加しつつあります。そこに、日本で成功を収めたスクールモデルとして高専のシステムを各国向けにカスタマイズして提供しようという活動を、国立高専機構が先頭に立って行っています。その流れで、本校でもモンゴルやカザフスタンの高等教育機関と関わりを持ち、代表団の視察受け入れや、本校学生の留学先としての提携を進めています。特にモンゴルに関しては、モンゴル教育科学省の元大臣であるL・ガントゥムル氏が本校の卒業生という経緯もあり、現地に3校の高専を設置するための協力を行ってきました。もちろん、教職員と学生ともに活発な人材交流が行われています。

2つ目は、海外の高等教育機関との学術交流が挙げられます。広い視野を持ったイノベーティブな人材を輩出するという目的に沿って、世界的に進んでいるフィンランドの高等教育機関と数々の学術交流協定を締結しました。それ以降、メトロポリア応用科学大学やトゥルク応用科学大学、オウル応用科学大学等と留学生受け入れや留学派遣等の相互交流が続いています。この他にも、ドイツ、フランス、タイ、韓国といった国の大学との学術交流協定も締結しています。他にも本校は米国マサチューセッツ工科大学が主導する国際的なエンジニア育成ネットワークであるCDIOへの参加検討や、スイスにR&Dセンターを持つ国内企業とバイオメトリクス領域のIoTデバイスに関する研究で交流協定を結び、実際にジュネーブに3名の学生の派遣が決まりました。

私が本校の校長に赴任して驚いたのは、本校の学生たちの渡航意欲の高さです。自らの知見を広め、将来に役立つグローバルな人脈づくりをしようと、積極的に留学や海外交流を図りたいという学生が実に多いことに、頼もしさと嬉しさを感じています。

福村先生のご経歴を簡単に振り返って頂けますか。

私は東北大学の理学部並びに理学研究科で、当時は黎明期にあったレーザーの研究に取り組みました。当時、私の研究はまだ新しい分野だったため、実験に使用するレーザー装置は、市販品では見合うものがなく、すべて手作りでした。新しい分析機器もすべてそうです。まさか、化学の道に進んで電子回路を自作するとは思いませんでしたが、私としては楽しいと感じていました。
博士号を取得した後、通産省工業技術院の技官研究員となり、大阪工業技術研究所で人工臓器やバイオセンサーの研究に携わりました。その後、京都工芸繊維大学で高分子を、大阪大学で応用物理を研究し、本校の校長となる前の10数年間を東北大学教授として、再びレーザーの研究に勤しみました。

高専の在学生および卒業生へのメッセージをお願いします。


「本校は最先端の理工学分野で活躍する現役の研究者である先生方からの少人数の実験・実習に重きをおいた教育や、最新の装置・技術に触れることができるなど、恵まれた教育環境であると言えます。」

高専卒業生の中には自身が高専出身であることを公表しない方がいまだに多いようです。高専卒業時点での学位が大学卒業生の「学士」ではなく、「準学士」であることも影響しているのかもしれません。しかしながら、社会に出て活躍されている高専卒業生、並びに、高専卒業後に有名大学等に編入学した高専卒業生には、高専出身であることをもっと公言して欲しいと考えています。それだけの経験と、貴重かつ価値のある技術を、十分に習得しているからです。

本校では、ほとんどの理系の教員が博士の学位を持っており、今も研究論文を執筆している現役の研究者です。中には米国の著名な物理学会の雑誌に何本も論文が採択された先生も在籍しています。一方で、文系の教員も修士以上の学位を持っており、書籍や教科書を執筆している先生もいます。本校の先生方はそれぞれの専攻領域の最先端分野を理解していて、その知見を授業に活かしているのです。
このように、一般の高校では考えられないような水準の教員から指導を受けられる仙台高専の学生諸君ならびに卒業生の皆さんには、今学んでいる内容、あるいは獲得したスキルと経験にもっと自信を持って欲しいと考えています。もちろん、本校以外の高専在校生、高専卒業生にも同様のことが言えるでしょう。

全ての高専生達が、今まで培ってきたスキル・知識を基に、国際社会に貢献できる人材として活躍していくことを願っています。

本日はお忙しい中、長時間に亘りご協力いただき、ありがとうございました。