企業インタビュー

マーサー ジャパン株式会社 企業インタビュー

御社が掲げられている人事分野での"フルラインのコンサルティング・サービス"の概要について判り易く教えて下さい。


マーサー ジャパン(株)
代表取締役社長 古森 剛氏

当社が日本において展開している「コンサルティング」と「インベストメント」の2つのビジネスに即して説明させて頂きます。

人が会社に入社して退職するまでの間、配属、育成、評価、報酬、異動、退職、年金(運用・支払)等に関わることになります。この入社から退職までの一連の全てを人事分野におけるフルラインだと定義するならば、我々はそれら全てに対して柔軟にサポートできる存在でなければならないと考えています。

経営者の方々がマーサーの「コンサルティング」に期待するものは、究極のところ、それが会社の活力を高め、業績に繋がっていくということだと思います。M&Aの場面では、ずばり、それがシナジーを実現するものである、ということに尽きます。ご想像の通り、事業と一体の非常に大胆かつダイナミックな発想と、組織と人という最もデリケートな対象を扱う細心の神経と知見が求められるのです。

サポートする範疇は、例えば等級、評価、報酬等のいわゆる人事制度は当然含まれていますし、その他にもキャリアパスの描き方、ジョブローテーションの考え方、会社として求める人材像の定義等、人事制度以外にも"人"に関する考え方や仕組みについてもサポートします。

また、M&Aの場合であれば、ディールあるいはその前の段階から、シナジー実現の観点で専門的な助言を行いますし、ディール成立後は新社の立ち上げをいかに納得感を出しながらスムーズに行い、シナジーの早期実現に繋げるかという観点から、様々な旗振り役・行事役も果たします。

制度や仕組みは本来、経営の方向性や経営者の考えとリンクしますから、ビジネスと人事の方向性を合わせるための議論の場を設けます。この「経営者」の考えと「人事」の動き・方向性を揃えることを我々は「戦略人事」と呼んでいます。この「戦略人事」についてクライアントとかなり細かく議論し、経営の重要機能として人事組織を設計して頂けるようにサポートします。この領域に関しては、もはや人事だけではなく、経営全体に関わる仕事ですが、経営の一重要機能である人事をフルラインでサポートするとなると、必然的に人事制度以外の領域もサポートしていくことになるのです。

次に「インベストメント」の観点から説明させて頂きます。退職金や年金の運用は人事部に限らず、財務部、あるいは基金としてファンドに運用が任せられている場合があります。しかし、いずれのファンクションが担当する場合でも、退職金・年金の問題は人々のモチベーション・ファクターの一つであることに変りありませんから、当然この分野もサポートしていかなければなりません。例えば、先述の「コンサルティング」の観点から、退職金・年金分野の専門家が高度な数理計算や運用プランの変更等をお手伝いし、並行して「インベストメント」分野の専門家が年金資産の運用のあり方についての様々なアドバイス等を行う、といったことが日常的に起きています。

我々が提供するサービスは、単純にコンサルティングという概念ではなく、経営の方向性と"人"を繋ぐ「戦略人事」の部分から始まり、その先にある"人"という重要な経営資産が入社から退職までに必要なサポート全てを含みます。そして、人の集合体である組織が、期待される高いパフォーマンスを上げるように進化する、あるいはM&Aのシナジーがきちんと実現する、というところがゴールなのです。

商品があるからそれを売るのではなく、まず組織の中にどのような人がいて、高いパフォーマンスを発揮するためはどのような仕組みや制度であるべきか、いうことをクライアントごとにサポートする、という考え方に基づいており、それを実行するためには必然的にフルラインでなければできません。
そしてフルラインの定義はお客様が決めるものだと考えていますから、今後もラインの中身は変わる可能性はありますが、それら全てに応えていかなければならないと思っています。

この数年の間に、御社に期待される役割はどのように 変わってきているのでしょうか?


昨今、日本経済の基調が、長かった我慢の時代から回復を経て、再び成長の時代へと変化しています。成長には答えや際限がなく、アプローチは無限にあります。そのためクライアントの経営課題はより不確定になり、当社を含めたコンサルティング・ビジネス全体に曖昧さとの戦いが強いられています。従って、ある一定の分野に絞ったサービスだけでは、今の時代は対応できなくなってきているのだと感じています。

我々は人事という切り口からサポートしますが、結局その先にあるのは経営コンサルティングです。医療の世界では、胃腸の専門医でも、人体全体のことが分からなければ治療できませんよね。コンサルティングの世界でも企業という生き物全体に関する洞察がなければ専門性が活かせません。

この数年で企業全体に対する理解がより求められるようになり、その一方でより高度な専門性も求められるようになりました。そのような状況下で、「戦略人事」という人と人を繋ぐ考え方とフルラインのサービスで培ってきたエクスパティーズにより、企業全体に対する理解と人という分野に対する専門性をカバーしている現在のマーサージャパンは、とてもユニークなポジションを築いていると感じています。

そのような状況の中、近年はどのようなテーマでのコンサルティングが求められているのでしょうか?

近年は、クライアントが困っているシチュエーションごとでの対処が求められています。その代表的なテーマとして、「M&A」 と「グローバリゼーション」の2つがあります。

「M&A」 により2社が合併する場合、限られた時間の中で、人と組織の課題を早急に解決し、シナジー実現に道筋をつけなければならないため、1社単独の課題解決の場合の何倍もの負荷が掛かります。今まで経験したことのない難しい局面での対応が、現在の人事コンサルタントには求められており、そのような状況下では相当な知見・ノウハウが必要とされます。当社では、6年前からM&A 専門の人事コンサルティングチームを設け、その組織を核にしながら他部門ともコラボレーションし、フルラインの総合力で応えています。

また、「M&A」 と並ぶ大きなテーマとして、「グローバリゼーション」も非常に注目されています。国情やマーケット、人のメンタリティーが異なる海外グループ企業や企業グループ内カンパニー同士のシナジー効果を最大化するためには、単に本社から駐在員を送るのではなく、現地の人材をどう活かすかが迫られています。また、どこまでを本社でコントロールし、どこから先をローカルに任せるか、というようにグローバルとローカルの線引きを変えることも迫られており、それは当然"人"という分野にも大きな影響を及ぼします。

今まで以上に現地に踏み込んだ経営を迫られ、当社を含めコンサルティング・ファーム全体にとって経験したことのない分野へのチャレンジとなりますが、当社では部門を越えてグローバル人材マネジメントに関する取り組みをサポートしようというイニシアティブのもと、M&A と同様にとても注力しています。

一般的にM&Aを成功させるためには組織・人事上どのような課題があり、またそのような課題に対してどのような解決策を提供しておられるのか、出来る限り具体的にお聞かせ下さい。


M&A には大きく分けて、買収、合併(統合)、投資の3つの型があります。しかし、いずれの場合でも共通して言えることは、日本企業のM&A は世界で最も難しいということです。それには日本独自の「資本」と「人」の論理が絡んでいます。

一般的に欧米では買収した側の企業のルールに買収された側の企業が従いますが、日本では資本関係の優劣が明確でも、企業として1つとなる以上は両社の社員が公平感を感じられないと、モチベーションを下げてしまう要因となりかねません。M&A の効果が今ひとつ、あるいは成功していない場合の多くは、資本の論理からすると間違っていないが、日本における人の気持ちの論理からすると間違っているという場合が多いのです。

当社では例えば人事制度設計等、人と組織に関する検討を始める前に、人と人を繋ぐということにかなりの時間とエネルギーを費やします。例えば経営会議で、A ・B 両社の出身者により、M&A のそもそもの目的、会社の方向性を確認し、それを踏まえた上で新社のあるべき人材のイメージを決めます。当初は両者とも旧会社の変わりたくない部分や守りたい部分を固持しようとしますが、それを新会社に向けた議論に変わるように我々がファシリテーションします。

M&A の成功、つまり期待シナジーが実現するかどうかは、ディール後のオペレーションがどれだけ良くなり、人々が高いモチベーションに満ちて働く事ができるかで大きく変ってしまいます。現在日本で年間3000件近い(2006 年度)M&A が起きていますが、その多くでシナジー効果が充分に発揮されず、1+1=2以下という事態が起きていたら日本の国力が下がってしまいかねません。そのようなことまで考え、クライアントが本当に困っている場面で、ミッション性を持ち、フルラインのサービスを提供することが、現在当社には求められています。

他の組織・人事コンサルティング会社との違いや御社の優位性についてお聞かせ下さい。また、御社の競合となる企業はあるのでしょうか?

近年劇的に変化を遂げている事業環境にも的確に対応できているという点が強みであり、M&A にこれだけコミットしてきた企業は他に例を見ません。またグローバリゼーションの分野では、世界各拠点の1万7000 人の社員と協業し、日本のクライアントが海外の拠点と同時に進めるプロジェクトにも対応しています。クライアントの海外拠点とは英語で対応し、各地からプロトコルで反応を受け、スキームを組成して、納期を管理し、更に本社とは日本語でコーディネーションする。このように世界規模で行われるプロジェクトにも対応できるのは、柔軟性に富んだ組織能力や組織内の繋がりの強さの賜物です。この点に関しても他の人事・組織コンサルティング会社にはない強みだと思います。

当社と競合となる企業はありますが、組織・人事、投資、報酬のデータサービス等、事業やクライアントをサポートする場面ごとで競合関係は異なります。ただし我々は他社のベンチマークはせず、クライアントの場面や状況をどこまで深く理解し、柔軟なフルラインのサービスをできるかが鍵だと考えています。着眼する点はクライアント、ピープル、ナレッジの3つのみで、コンペティターは意識しないというのが当社の哲学です。

経営全体に対する理解と高度な専門性が同時に必要とされる現在、どのような人材が求められているのでしょうか?


技術的なスキル以前に、まずは「企業のために働くことが好きか」ということをとても重視しています。コンサルティング業界は、いい仕事をすればするほど、世の中にナレッジを吐き出しますし、またコンサルタント卒業生はクライアントである産業界へと移っていきます。そのためクライアントのレベルは上がり、仕事が難しくなり続ける業界なのです。

そのようなプレッシャーもストレスもある中で、常に良い仕事をし続けるためには、仕事に"コミットメントする"ということが非常に重要です。ここで言うコミットメントとは単純に長時間働くということではなく、クライアントの役に立ちたい、ひいてはクライアント企業の向こう側にある経済に対して良いことをアウトプットしたいという思いを持って働いているかということです。お金の為に働くのではなく、人や企業の為になりたい、または「ありがとう」と言われることが心から嬉しいと思えるかが非常に大切だと考えています。そのような感性を持っている人間が圧倒的に多いということもまた、当社の誇れる部分です。

前述した人間的側面を前提にした上で個別の専門性が求められます。当社では全方位的に即戦力であることは求められません。何か一つでも戦力となる部分があればその他の部分を少しずつ増やすことができますし、また現在当社にない分野に強みを持つ方であれば、その方が入社した事により新たな戦力が増えるという事があっても良いと思います。強みや弱みはあって構いませんが、その代わりに強みは更に強く、弱みは改善しようとする成長意欲の高い方にとって、当社は何歳でも、入社何年生でも、常に新しいことを見つけていくことができる刺激的な環境です。

入社後は人材を育成するために、どのようなトレーニングを施されているのでしょうか?

全社共通で行うトレーニングは2つあります。1つ目はグローバル単位で行っている研修で、一定のレイヤーの社員が1ヵ所の拠点に集い、英語による共通の研修を受けます。
2つ目は日本のマーサージャパンの中で、コンサルティングのベイシックスを私が自ら直接教えるという研修で、1ヶ月に1回開催しています。毎回あるテーマの宿題を出して、研修当日に全員で解くことから始めます。テーマの内容は雑誌の記事や世の中の事実等、部門特殊性のないものを私が選び、教材もオリジナルなものを作成しています。これらの資料を使い、各自自分なりの考えをめぐらし、どこまで論理的に考えたかを共有化して学んでいきます。ここでは、企業が進んでいる方向と人を繋ぐために必要な基礎スキルとして、論理的思考力、仮説検証、課題の体系、ピラミッド・ストラクチャーでの志向等を全員共通で身に付けて頂きます。

最後に、このインタビュー記事を読んで下さった方に対するメッセージをお願いします。

私自身にとってキャリアチェンジとは、改めて自分の人生観や価値観を認識する貴重な機会でした。理屈で左脳的に考えるのではなく、最後は右脳で「自分はこういうことがやりたい」と思える仕事に出会えたらいいだろうなと思います。その過程の中でマーサージャパンが登場してくれれば、とても嬉しいことです。

本日はお忙しい中、長時間に亘りご協力頂き、ありがとうございました。

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マーサー ジャパン株式会社
設立
1978年2月
資本金
4億8,800万円
従業員数
180名
※この記事の内容は取材当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、役職名等は現在と異なる場合があります。
職業紹介優良事業者認定マーク
当社は、全国に約20,000事業所ある人材紹介会社の中で、厚生労働省が審査し、 わずか39社しか選ばれない「職業紹介優良事業者」に認定されています。
※平成26年(第一回認定):全国で27社のみ、平成30年:全国で43社のみ(第二回認定)、令和2年:全国で39社のみ(第三回認定)
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