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転職カウンセラーは、転職してはいけない職業
 ―最高の“触媒”であり続ける為にも―

化学用語に、〝触媒〟という単語がある。自らは、化学変化を起こさず、まわりの物質の化学変化を促進する物質という定義になろう。普段から、転職カウンセラーは、転職希望者に対して、希望に沿った応募先企業を案内し、面接を設定し、A社からB社へ移るお手伝いを本業としている。まさに、我々転職カウンセラーは、転職希望者と企業を物理的に結び付ける転職と言う化学変化を促進する役目を担うが、転職カウンセラー自身は、決して、安易に化学反応は起こさない安定感が求められる。

人様から、転職のご相談をお受けする転職カウンセラー自身が、自らのキャリアプランや没頭したい業務が定まっていないようなフラフラした状態で、もしくは、内面浮ついた心理状態で転職希望者の重要なご相談に乗るなんてことは、二日酔いで体調の優れない医師が、何時間にも及ぶ大手術の執刀医を務める様なもので、職業倫理上も、好ましくない事は言う迄も無い。

そして、もうひとつ、転職カウンセラー自身が、短期間で転職してもらっては困る社会的な理由が明確にある。転職カウンセラーという職に就いたとしても、即、転職希望者に満足をして頂けるレベルの転職カウンセリングや具体的アドバイスが出来る様になる訳ではない。その道のりは、かなり険しい。まず、色々な企業の採用基準の実態や採用手法の各論を修得しないと始まらない。その為には、筆者の見解では、最低でも、約300社以上の企業に出向き、きちんとした取材やインタビューに応じて頂くプロセスが必須である。この際、各企業概要のデータをデジタルに刻明に記録して来る事に加え、各企業の社風や組織風土、企業の雰囲気といったアナログの情報も、体感・体得して持ち帰り、転職希望者にいつでもお伝え出来る様に頭と心の中に整理して、保存しておく事が求められる。このプロセスに膨大な時間と努力を要する事は明白である。

そして、実務に習熟し切れていない慣れない駆け出しの頃の転職カウンセラーは、実際の転職希望者に、お手合わせ頂き、ある面では練習台になって頂き、育てて頂くプロセスを必ず経ないことには、一人前と評されるレベルに至らないのである。多少なりとも他人の犠牲?の上に育てて頂いた事を強く謙虚に認識すべきなのである。見習いの板前なら、お客様に料理を出せる様になる迄は、店内の従業員に対しての賄い料理で腕を磨くことが出来る。ところが、転職カウンセラーは、賄い料理を作って訓練を積むというプロセスが採り辛い。勿論、当分の間は、先輩転職カウンセラーの補佐をしたり事務処理をして表に出ず丁稚奉公で修行することになる。しかしながら、ひとり立ちをした当初は、言うなれば、インターンを終えたばかりの医師の卵が、指導医無しで、生身の患者の主治医を務めることに近いものがある。

この様に、何百社のお取引先企業の人事部の方々や経営者の方々との貴重なインタビューの時間と説明というアシスト並びにヒヨッ子の時期にもある面では片目を瞑って耐えて下さった転職希望者の温かいご理解とご支援があってこそ、転職カウンセラーは、曲がりなりにも、一人前に成長させて頂いたのだというご恩に、感謝を忘れてはなるまい。そのご恩返しは、一生、この転職カウンセラーという職業にまじめに〝奉職〟する事によってのみ、ぎりぎり帳尻を合わせる事が出来るか出来ないかの域に到達すると考えても、決してバチは当るまい。

仮に一年間に約百社ずつの取材をこなし、三年間で三百社のインタビューを終えた丁稚君がいたと仮定しよう。その本人が、その後一年間で実務から離れることになった場合、半人前で、不充分な転職カウンセリングしか出来なかった期間が三年、それなりに格好が付いたカウンセリングを行えるようになったのがたった一年という事では、結果として、マイナス二年である。世の中にお世話になって作った借りが三年で、その借金を返済する途中の一年で、尻を割ってしまったのであれば、マイナス二年分の負債を抱えたまま退場するということになる。つまり、社会に対して、負の遺産を残したまま去るのは、許し難いと解釈しても、誰からも文句は出まい。

更に加えるならば、転職カウンセラーという職業は、まっとうに精進を重ねるならば、就業して、3年目より5年目、5年目より10年目、10年目より20年目の方が、より習熟度が高まり、より世の中の為にValueを発揮し易くなる。その価値は、経験年数と正比例すると思われる為、途中で別の職業に宗旨変えしてしまう事は、社会的損失とも捉えられる。だから、(株)エリートネットワークでは、一旦、転職カウンセラーという職業に就いたからには、一生〝奉職〟したいと自分自身と血判状を交わした人物しか迎え入れたくないと考えるのは、この様な理由からである。転職カウンセラーという職業に就くということは、僧籍に入る為に、出家する位の覚悟が無ければ、止めておいた方がよいのである。決して、還俗は、許されない。自らの一生を懸けて、転職カウンセラーに“奉職”したいと心の中で強固な誓いを立てた人物のみ、真の触媒たり得る。

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